「薬剤師から製薬会社へ転職したいけど、できるのか不安…。」
実は、薬剤師が転職しやすい製薬会社の職種もあります。
この記事は、病院薬剤師から製薬会社の企業薬剤師へ転職したnik1さんのインタビュー(実体験)情報も含めて、製薬会社へのリアルな転職方法を解説します。
ぜひ参考にしてみてください。


nik1さん
元病院薬剤師・元製薬会社_品質保証・医療機器メーカー_安全管理
病院薬剤師5年、製薬会社5年を経て、現在医療機器メーカーにて勤務。
転職時:28歳・未婚・男性
5年の臨床経験を経て、臨床以外の薬剤師キャリアに興味を持ったのが、転職活動を始めたのがきっかけとのこと。
薬剤師から製薬会社への転職は可能?

薬剤師が製薬会社へ転職することは十分可能です。nik1さんの体感では書類通過率は80~90%と言います。
薬剤師資格を持っている人材は専門知識が豊富で、薬学的な視点が評価されるためです。特に開発職・研究職・DI職といった医薬品の専門性が求められる職種では、薬剤師のニーズが高く求人も出ています。
ただし、面接から先は調剤薬局・ドラッグストアなどと比較して製薬会社への選考難易度は上がります。製薬会社の採用枠は少なく、企業も面接で人材を選ぶためです。

私も内定獲得まで10社ほど面接をしました。
つまり、薬剤師から製薬会社への転職は、応募書類対策よりも面接対策を万全にすることが成功のコツと言えます。
製薬会社で薬剤師が活躍できる職種は?
製薬会社で薬剤師が活躍できる職種は主に品質保証(QA)、薬事(RA)、開発(R&D)、医薬品情報(DI)などです。
品質保証は製品の品質管理や規制対応、薬事職は医薬品の承認申請などを担当します。
開発職では新薬の研究や臨床試験に携わり、医薬品情報職では医薬品の問合せへの対応を行うため、薬学の専門知識が求められます。
これらの職種は、薬剤師がこれまで培った薬学知識を企業で最大限活かせるため、企業転職後もキャリアを広げることが可能になります。

特に医薬品情報職(DI職)は、医薬品に関する質疑応答が仕事なので、薬剤師の知識経験がそのまま活かせます。
実際の転職成功事例|病院薬剤師から企業へ
nik1さんは、実際に病院薬剤師から製薬会社の品質保証職への転職に成功しました。転職時は28歳。病院薬剤師に勤めて5年目での決断です。

転職理由は、病院薬剤師への不満よりも、臨床以外の知識経験を得たいという思いが大きかったです。
求人の探し方はネット検索。応募方法は直接応募、転職サイト経由、転職エージェント経由で、様々な方法で応募していました。応募先は、臨床以外の薬剤師職に絞っていたので、CRC、CRA、DI、品質保証あたりです。今思えば多いですね。
転職活動を始める時点では迷いはあまりありませんでしたが、転職活動中は面接が通過しないことで、「やはり病院薬剤師しかできないのか…。」と不安にはなりました。
自分の場合は、自分で主体的に活動を進めていたので少し苦戦しましたが、転職エージェントをもっと利用した方が面接対策もできて、うまく行っていたかもしれませんね。苦笑
20代からでも薬剤師から製薬会社(メーカー)への転職は可能ですし、主体的に動いて面接対策をしていくことで、薬剤師から製薬会社への転職は現実的なものになりそうです。
製薬会社への転職に向いている人の特徴は?
製薬会社への転職に向いている薬剤師は、課題解決などビジネス思考に抵抗のない人です。
製薬業界では常に最新の情報をキャッチアップする必要があり、課題解決力が高い人が歓迎されます。
また、社内外のコミュニケーションが多いため、柔軟な対人能力やチームで働く協調性も求められます。
現職でチーム医療に積極的に関わっている人や、薬局で地域連携を経験した薬剤師は製薬会社でも活躍しやすい傾向があります。

逆に、患者さんとのやりとりにやりがいを感じている人は向いていないかもしれません。現場からオフィスに入るので、現場で感じていたやりがいを感じにくい側面はあります。
製薬会社の仕事内容とやりがい

製薬会社で働く薬剤師の仕事は多岐にわたり、やりがいも大きいです。
薬局や病院で直接患者と接する機会は減りますが、広範囲にわたる医療への影響力が強くなります。
自身が関わった医薬品が市場に出て多くの患者を救う可能性があるため、社会貢献度も非常に高いです。
また、キャリアパスが多様で、海外勤務やマネジメントへの道も開けます。薬剤師として新たなステージを目指すなら、製薬会社は有力な選択肢です。
品質保証や薬事職の役割とは?
品質保証職(QA)は製品の安全性と有効性を保証し、市場に流通する医薬品が規制基準を満たしていることを確認します。
薬事職(RA)は医薬品の承認申請を担当し、規制当局との交渉や申請書類作成を行います。
どちらも規制知識や緻密な作業が求められ、薬剤師の専門知識が不可欠な職種です。患者に安心安全な医薬品を届けるという社会的責任があるため、業務には高い正確性と責任感が必要になります。
開発・研究職と薬剤師の関係
開発・研究職(R&D)は、新薬の研究や開発を行います。
薬剤師資格を持つ人は薬物動態や安全性評価など専門的な研究に関わりやすくなります。特に病院勤務経験(臨床経験)がある薬剤師は仕事はやりやすいでしょう。臨床的な視点を活かして開発プロセスの改善や製品開発に貢献できるためです。
研究職は直接医薬品の誕生に関わることができ、薬剤師としてのキャリアの幅を大きく広げることが可能です。
実際の業務内容(インタビュー体験談)

品質保証職の薬剤師の1日は、メール確認から始まり、書類審査や試験結果の確認、他部署とのミーティングを経て午後は規制対応や品質監査の準備をします。
日々緊張感はあるものの、自分の知識が品質向上に直結することはやりがいを感じます。
定時退社が基本ですが、規制対応が重なる時期は残業が増えることもあります。しかし全体として働きやすい環境です。
製薬会社で働く薬剤師の年収・待遇

製薬会社で働く薬剤師の年収は、他の職場と比較して高水準です。また、福利厚生や働き方の面でも魅力的な点が多くあります。
ここでは、年収の相場や年齢別の比較、病院や薬局との年収差、働き方や福利厚生の違いについて詳しく解説します。
年収相場と年齢別の比較
製薬会社で働く薬剤師の年収は、職種や経験年数によって異なりますが、一般的には以下のような相場となっています。
- 20代:400万円~650万円
- 30代:550万円~800万円
- 40代以上:700万円~1,000万円以上
特に、大手製薬会社やMR(医薬情報担当者)といった職種では、高年収を目指すことが可能です。また、外資系企業では、年収1,000万円を超えるケースも珍しくありません。
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病院・薬局との年収比較
薬剤師の勤務先別の平均年収は以下の通りです。
- 病院薬剤師:400万円~500万円
- 調剤薬局:450万円~550万円
- ドラッグストア:500万円~600万円
- 製薬会社:550万円~700万円以上
このように、製薬会社で働く薬剤師は、他の職場と比較して高い年収が期待できます。特に、成果主義の企業では、実績に応じて報酬が増えるため、やりがいを感じながら働くことができます。
働き方・残業・福利厚生の違い
製薬会社では、一般的に以下のような働き方や福利厚生が整備されています。
- 勤務時間:9時~18時の固定時間制
- 休日:土日祝日、年末年始、夏季休暇など
- 福利厚生:住宅手当、家族手当、退職金制度、社員食堂、レジャー施設の割引制度など
また、有給休暇や産休・育休の取得率も高く、ワークライフバランスを重視した働き方が可能です。特に、子育て中の方やプライベートの時間を大切にしたい方にとって、魅力的な職場環境と言えるでしょう。
ただし、職種によっては出張や残業が多くなる場合もあるため、事前に仕事内容や勤務条件を確認することが重要です。

働きやすい職種はDI職です。仕事柄リモートしやすいですし、他の職種と比較して忙しくない職種と言えます。
転職活動の進め方と注意点

製薬会社への転職を成功させるためには、計画的な転職活動と注意点の把握が必要です。ここでは、求人の探し方や面接対策、未経験者が転職を成功させるためのコツについて、製薬会社への転職を成功させたnik1さんの例も含めて解説します。
求人の探し方
製薬会社の求人は、転職エージェントを通じて探紹介してもらうのがおすすめです。特に、製薬業界に特化した転職エージェントを活用することで、非公開求人や自分の希望に合った求人を紹介してもらえる可能性が高まります。
エージェントを利用する際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 製薬業界に精通したエージェントを選ぶ
- 自分の希望を明確に伝える
- 複数のエージェントを比較検討する
これらのポイントを押さえることで、よりスムーズな転職活動が可能になります。

経験上、求人を探す窓口は多い方が良いです。
面接でよく聞かれる質問と対策

製薬会社の面接では、以下のような質問がよく聞かれました。
- なぜ製薬会社への転職を希望するのか
- これまでの経験をどのように活かせるか
- 将来のキャリアプランについて
これらの質問に対しては、事前に自分の考えを整理し、具体的なエピソードを交えて答えることが重要です。また、企業研究を行い、その企業の特徴や求める人物像を理解しておくことで、より効果的なアピールが可能になります。

企業ごとに求める人物像が違うので、募集背景など含めて対策が必要です。その点はエージェント使うといいと思います。
未経験でも転職成功するためのコツ
未経験から製薬会社への転職を目指す場合、以下のポイントを意識しましょう。
- 面接対策は万全の準備をしておく
- これまでの経験から、製薬会社で活かせるスキルを見つける
- 若手の場合は意欲を伝えることで、ポテンシャルをアピールする

未経験だとしても、「薬剤師」という資格は十分に評価されているので、専門性をきちんと企業の業務に活かせることをアピールすると良いです。
製薬会社での薬剤師キャリアパスと転職難易度

薬剤師が製薬会社に転職した場合、さまざまな職種へのキャリアパスが存在します。品質保証や薬事、DI、開発など多様な分野で専門性を活かしながら活躍でき、スキルに応じた昇進や異動も可能です。
また、現場で経験を積んだ後はマネジメント職や企画部門へのキャリアアップも見込めます。
ここでは薬剤師が目指せる主な職種と、成長戦略についてご紹介します。
管理薬剤師
企業の製造所や研究所において、医薬品の品質と保管の適正管理を行います。GMP(適正製造基準)に則った管理が求められ、薬剤師資格が必須となる役割です。
管理薬剤師は、製薬企業内でも薬剤師資格がダイレクトに活かせる職種の一つであり、調剤薬局や病院での勤務経験しかない薬剤師でも比較的転職しやすい傾向にあります。
特にGMPに関する基本的な知識や、製造所勤務の経験がある場合は優遇されます。企業によっては新卒や未経験でも受け入れているため、難易度は全体的に低~中程度といえます。
DI(医薬品情報)職
医薬品に関する問い合わせ対応や情報提供を行う職種です。医療従事者や社内部署からの質問に対して、適切かつ最新の情報を提供し、安全な医薬品使用を支援します。また、副作用情報の収集・評価や添付文書作成に関わるケースもあります。
DI職は薬剤師としての専門知識を直接活かせる領域であり、調剤や病院薬剤師としての経験がある人材が歓迎されやすい傾向にあります。
特に医薬品の作用機序や副作用、相互作用に関する深い理解が求められるため、日常的に服薬指導を行ってきた薬剤師には親和性が高い職種です。
一方で、英語文献の読解力や情報整理力、PCスキルも必要であり、薬剤師経験に加えて文献検索や資料作成に慣れているかどうかが評価のポイントとなります。
品質管理職(QC)
品質管理職は、医薬品の原材料や中間体、最終製品に対し、化学分析・微生物試験・安定性試験などを行い、安全性と品質の一貫性を担保する役割です。
調剤経験のみでは直接的な実務スキルが不足することもあり、分析機器(HPLC・GCなど)の操作経験がある薬剤師が評価されやすい傾向にあります。
未経験可の求人もありますが、学生時代の研究経験やラボ実習の内容が重視されるケースが多いです。

品質管理の仕事内容は、製薬会社品質管理はきつい?やめとけ?薬剤師が知るべき7つのことで詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

医薬品情報担当者(MR)
医師や薬剤師に対して医薬品の適正使用を促す情報提供を行います。営業職としての側面も強く、コミュニケーション力や交渉力が求められます。
MRは未経験からの採用も多く、文系出身者でもチャレンジできる門戸の広い職種ですが、その一方で営業職としての適性が強く求められます。
薬剤師資格を持っていることは有利ですが、それだけで採用されるとは限らず、営業ノルマや数字への意識、自己管理能力なども重視されます。医療業界に理解があり、対人折衝が得意な人にとっては現実的な選択肢です。
>MRの給料は高すぎ?30代製薬会社営業が年収1000万超えの裏側
品質保証職(QA)
品質保証職は、製造や試験の各工程がGMP(医薬品の製造管理及び品質管理の基準)や社内規定に適合しているかを確認・保証する業務です。逸脱処理、変更管理、自己点検、バリデーション、監査対応などを通じて、製品の品質と信頼性を支えます。
QA職は薬剤師のキャリアパスとして人気があり、特にGMPに関する実務経験や査察対応経験があると有利です。
薬剤師資格は評価されますが、文書作成能力や部門横断の調整力も重視されます。医療機関でのリスク管理や業務フロー構築経験がある場合は、アピール材料として有効です。
臨床開発モニター(CRA)
CRAは治験の進行状況やデータの正確性を監督する職種です。製薬会社側の視点から治験を管理し、GCP(治験実施の基準)に基づく監査も行います。
CRAは人気が高い一方で、即戦力を求める傾向が強いため、未経験者にとってはやや難易度が高い職種です。特に理系学部卒や看護師・臨床検査技師など、医療知識を持つ人材が優遇されます。
薬剤師資格も評価されますが、臨床試験に関する基礎知識やGCPの理解が求められるため、CROに勤めてからのステップアップが必要になるケースもあります。
> CRA(臨床開発モニター)の年収ランキングTOP15!知っておきたいCRA年収5つの特徴
研究開発
新薬の開発に向けた基礎研究や製剤設計、薬物動態の解析などを担います。大学や大学院での研究経験が評価されることが多いです。
研究開発職は、修士・博士課程修了者や、大学・企業での研究実績を持つ人材が中心となるため、薬剤師資格のみでは採用されにくい傾向にあります。
学会発表歴や専門領域での論文実績があると有利ですが、企業によってはポスドク経験者など即戦力を求めることも多く、転職難易度は全体的に高いです。未経験での応募は厳しく、しっかりとした専門性が求められます。
>製薬会社研究職の年収を徹底解説|創薬以外で給料の高い職種も紹介!
薬事職
医薬品の承認申請や厚生労働省とのやりとりを担当します。法規制への理解や申請書類作成スキルが必要で、グローバルな視点も求められます。
転職難易度:高
薬事職は法規制や申請プロセスへの専門知識が必要で、製薬会社での実務経験や英語による文書作成能力が必須とされることが多いです。
未経験からの転職は難易度が高く、特に外資系企業ではグローバル薬事の知識や海外当局対応の経験も求められます。薬剤師資格は有利ですが、それだけでは不十分で、実務経験や薬事法の理解が必須となります。
製薬会社に転職する薬剤師に求められるスキル

薬剤師が製薬会社に転職する場合、病院や薬局とは異なるスキルセットが求められます。
調剤や服薬指導に加えて、医薬品の開発・承認・品質管理といった業務に関わるため、より高度で制度的な知識や業務遂行力が不可欠です。また、社内外の多職種と連携する機会が多く、コミュニケーション能力や文書作成能力、英語力なども重要になります。
これらのスキルは職種によって求められる比重が異なりますが、共通して必要とされるのは「医薬品に関する法規制への理解」「チームで動く柔軟性」「実務スキル(PC・英語)」の3点です。以下で、それぞれのスキルについて詳しく解説していきます。
医薬品に関する知識と法規制の理解
製薬会社で働く薬剤師には、薬機法やGMP(適正製造基準)、ICHガイドラインなど、医薬品の製造・販売・承認に関する法規制の理解が欠かせません。
病院や薬局での経験を持つ薬剤師でも、企業で求められる知識は一段と広く、より制度的・文書的な側面が重視されます。特に品質保証(QA)や薬事(RA)職では、行政対応や文書作成において正確な知識が求められます。
また、新薬開発や治験に関わる場合は、GCP(治験実施の基準)やGLP(安全性試験の基準)への理解も必要です。こうした専門知識は、転職活動中にセミナー参加や書籍・eラーニングなどで補強しておくと安心です。
チームで成果を出すコミュニケーション能力
製薬会社の仕事はチームで進めるプロジェクトが中心です。そのため、社内外の関係者と円滑に連携できるコミュニケーション能力が非常に重要になります。
病院や薬局では患者や医師との1対1のやり取りが主ですが、企業では開発・生産・営業・法務などさまざまな部署と連携しながら仕事を進める必要があります。
例えば薬事職では、薬機法に基づく規制内容を開発チームに伝えたり、行政当局と折衝したりと、相手の立場を理解した説明力や調整力が求められます。会議や資料説明の場も多いため、日頃から論理的に話す訓練をしておくと役立ちます。
PCスキル・英語力も武器になる
製薬企業での業務では、PCスキルや英語力があると大きな武器になります。
まずPCスキルについては、Excelでのデータ集計やWordでの文書作成、PowerPointでの資料作成が基本となります。品質管理レポートや承認申請資料などはすべて電子データで管理されるため、これらの操作に慣れていることが前提です。
また、英語力も強みになります。外資系企業やグローバル開発を行っている国内企業では、英語論文の読解、メール・会議での英語対応が必要な場面も少なくありません。TOEICスコアを応募条件とする求人もあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
職種別|製薬会社で求められる薬剤師のスキルマトリクス
職種 | 必要なスキル | 備考 |
---|---|---|
品質保証(QA) | GMP知識/薬機法の理解/文書作成力/論理的思考力 | 製造管理者との連携、逸脱対応やバリデーション手順書作成など |
薬事(RA) | 薬機法・PMDA対応力/英語読解力/交渉力/行政文書作成スキル | 承認申請書類の作成、行政対応、グローバル規制の確認業務もあり |
研究開発(R&D) | 医薬品開発知識/実験スキル/統計解析の理解/英語論文読解力 | 創薬・薬物動態・製剤開発など領域によって要求スキルは異なる |
安全性情報(PV) | 医薬品安全性の知識/副作用報告管理スキル/データベース操作/注意力 | 海外症例対応などで英語力が必要になる場合も多い |
臨床開発(CRA) | GCP知識/モニタリングスキル/医療機関とのコミュニケーション力 | 医療機関との折衝・データ管理・報告業務が中心 |
医薬品情報(DI) | 薬学的知識/資料作成スキル/社内問い合わせ対応力/情報収集スキル | 営業部門や医師からの問い合わせ対応が主業務。正確な情報整理力が必須 |
MR(医薬情報担当者) | プレゼン力/営業スキル/医師・薬剤師との関係構築力 | 薬学的知識+営業能力を併せ持つ人材が重宝される |
管理薬剤師 | 薬機法/GMP・GDPの知識/在庫管理/衛生管理/行政対応スキル | 主に工場・物流センターなどでの薬事管理職。地方勤務もあり |
- RAやCRAは英語スキルを求められる傾向が強いため、日常会話レベル+文書読解力があると有利です。
- QAやDI職は正確性と丁寧な文書作成能力が重視されるので、病院での記録・報告業務経験が役立ちます。
- R&D職は高度な専門性が必要なため、修士号・博士号保持者が優遇されるケースもあります。
薬剤師が製薬会社に転職するメリット

薬剤師が製薬会社に転職することで、収入面や働き方、スキルアップの面で多くのメリットが得られます。
ここでは代表的な4つのメリットについて解説します。
メリット① 年収アップに期待できる
製薬会社の年収は薬局・病院勤務より高い傾向にあります。30代で600万円以上、40代では1,000万円を超えるケースもあります。
成果主義を導入している企業も多く、努力が報酬に反映されやすい環境です。

自分も転職で年収は50万円ほど上がりました。その後の昇給でも年収は病院薬剤師と比較して、ぐっと上がりました。
メリット② 調剤薬局やドラッグストアよりも待遇が良い
完全週休2日制・カレンダー通りの休暇制度を整えている企業が多く、土日休みを希望する人にとっては理想的な職場環境です。
また、時間外労働も少ない傾向にあり、生活リズムを整えやすくなります。

自分は平日休みは比較的好きでしたが、夜勤や休日出勤がないので、そこはいいですね。安定した生活を送れます。
メリット③ 福利厚生や職場環境が充実している
大手企業では、住宅手当や家族手当、企業年金、保養所、資格支援制度などが整っており、社員の生活を幅広くサポートしています。
また、女性や育児中の社員を支援する制度も豊富です。
メリット④ スキルアップに期待できる
製薬業界では、高度な専門知識やマネジメントスキルが求められます。職種によっては、薬機法やGMP、GCPといった法規制への理解も不可欠です。
そのため、働きながらスキルを磨ける環境が整っており、キャリアアップにもつながります。

知識と経験の幅が広がったことは実感しています。
薬剤師が製薬会社に転職するデメリット

製薬会社への転職は、薬剤師にとってキャリアの幅を広げる魅力的な選択肢の一つです。しかし、医療現場とは異なる企業文化の中で働くことには、いくつかの注意点も存在します。
とくに「人間関係の難しさ」や「キャリアの専門化による将来の制約」などは、転職後にギャップを感じやすい部分です。
企業では、医療資格を持たない社員も多く、価値観やコミュニケーションのスタイルに違いがあります。また、一度専門職として企業内の特定ポジションに就くと、異業種にキャリアチェンジするのが難しくなることもあります。
ここでは、特に注意したい2つの観点を紹介します。
①多様なバックボーンの人間関係
製薬会社では、薬剤師だけでなく、文系出身の企画職、営業職、高卒の製造職など、多様な職種と価値観の人が同じチームで働いています。このため、病院や薬局と違い、「医療従事者としての共通認識」が通じない場面も多く、意思疎通に時間がかかることがあります。
たとえば、薬事部門で「法令遵守」を重視する薬剤師と、スピード感を求める営業職の意見が対立するなど、目的意識やリスクの捉え方に違いがあることで、摩擦が生じやすくなります。
このような環境では、異なる背景を理解し、調整力や柔軟性を持って人間関係を築くことが求められます。専門知識だけでなく、企業文化への順応力が活躍の鍵となるでしょう。

企業の中には文系・理系・大卒・院卒・高卒・医療系・非医療系と様々な人がいるので、病院や薬局勤務では経験しなかった高いコミュニケーションコストを感じることもあります。
デメリット② 異業種への転職が難しい
製薬会社では、薬事や品質保証などの専門職としてのキャリアを積み重ねることになります。その分野での専門性は高まりますが、他業種・他職種へ転職する際には、その専門性が逆に制約になるケースもあります。
たとえば、製薬会社で5年間薬事申請の業務に携わっていた場合、他業種ではそのスキルが直接的に評価されにくく、転職市場での選択肢が狭まる可能性があります。これは、製薬会社の職種が業界特有の法規制やプロセスに特化しているためです。
そのため、将来的な柔軟性よりも、特定分野のプロフェッショナルを目指したい方に向いているといえるでしょう。
製薬会社に転職する際は「今後もこの業界で長く働き続けたいか」を見据えてキャリア設計をすることが重要です。
キャリアチェンジの際の検討事項と対策

薬剤師が製薬会社に転職する際は、事前にいくつかの検討事項を明確にしておくことが重要です。特に、現在の職場から企業へ移る際の環境変化や求められるスキルの違いを理解しておく必要があります。
調剤薬局や病院からのキャリアチェンジの準備
まず、病院や薬局での経験が製薬会社でどのように活かせるかを整理しましょう。たとえば、調剤で培った薬の知識や、病棟での服薬指導の経験は、製薬会社での品質保証やDIの業務において、説得力ある強みになります。
企業ではレポート作成や英語での文書読解力、ITスキルなども求められるため、事前に研修や自己学習を進めておくと安心です。GMP(医薬品の製造管理・品質管理基準)や薬機法など、業界特有の知識も確認しておきましょう。
組織文化とワークライフバランスへの適応
企業に転職すると、組織文化や働き方に大きな変化がある点も見逃せません。病院では医療従事者としての役割意識が強く、現場対応に追われる場面が多い一方、企業ではチームでのプロジェクト運営や長期的な視点が求められます。
また、企業によってはフレックスタイムやリモートワークが導入されていることもあり、ワークライフバランスを重視した働き方が可能です。その反面、目標達成や納期管理への責任も明確に求められます。
転職前に企業の社風や制度、社員の声などを調査して、自分に合った環境かどうか見極めることが大切です。
薬剤師が製薬会社に転職成功するポイントは?

薬剤師が製薬会社へ転職する際は、これまでの医療現場とは異なる“企業の論理”や“求められるスキルセット”に対応することが重要です。とくに面接では、薬局や病院での経験を、企業の立場や価値観に沿ってどう活かせるかを伝える必要があります。
実際に転職を成功させた薬剤師の声をもとにすると、「職務経歴書」よりも「面接でのやりとり」によって評価が大きく変わるという傾向が強く見られます。つまり、「質問への答え方」や「自分の経験の語り方」に工夫を加えることで、内定への可能性は大きく広がるのです。
ここでは、企業未経験の薬剤師でも実践できる、“面接時に特に意識したい3つのポイント”をご紹介します。
①「病院・薬局とは違う視点での質問」に備える
製薬会社の面接では、「チームでの課題をどう解決したか」「多職種と価値観がぶつかったときどうしたか」など、医療現場とは異なる“企業文化”を前提とした質問が多く出ます。
対策としては、「過去に感じた違和感」「人間関係での工夫」「失敗からの学び」などを事前に言語化しておくことが有効です。“正解”を探すのではなく、“どう考え、どう動いたか”のプロセスを話せるようにしておくと評価されます。
②「企業側の言葉」で質問に答える練習をする
面接では、自分の経験を**「患者中心」「安全性担保」「社内連携」など企業が重視する文脈で語ること**が大切です。
たとえば、ただ「忙しかった」と答えるのではなく、「限られた人員で薬歴入力や相互作用確認を効率化する工夫をした」といったように、“再現性”や“仕組み”として話すクセをつけることが効果的です。
経験者は、「答えの内容」より「伝え方(企業視点)」が通過率に差をつけると語ります。
③「なぜこの職種か?」に明確な意図を持たせる
「なぜ製薬会社か?」よりも、「なぜこの職種なのか?」が面接のカギです。
QAなら「間違いを防ぐ仕組みに関わりたい」、DIなら「正しい情報を届ける支援がしたい」など、役割への興味や過去の経験とつながる理由があれば、説得力が増します。
転職理由そのものに正解はなくても、「このポジションに対して理解しているか」はしっかり見られているため、その職種の役割や価値を一言で語れる準備が重要です。
よくある質問と製薬会社への転職前に知っておくべきこと

企業への転職を検討する薬剤師が抱きがちな疑問について、実際の転職経験や業界の実情をもとにお答えします。
製薬会社と医療機器メーカーの違いは?
製薬会社は医薬品の研究・開発・製造・販売を行う企業であり、薬剤師の知識が直接的に活かされる業務が多いです。一方、医療機器メーカーでは、デバイスの安全性管理や承認申請などが主な業務となり、薬剤師が担う役割は限定的ですが、安全管理部門では活躍の場もあります。
どちらも医療に貢献できる点は共通していますが、業務内容や求められる知識が異なるため、自分の志向に合わせて選びましょう。
キャリアアップの道筋はどうなる?
企業では明確な評価制度が設けられていることが多く、成果や能力に応じて昇進・昇格が期待できます。管理職や専門職としてのキャリアパスのほか、希望に応じて他部署への異動や海外勤務など、多様なキャリア形成も可能です。
一方で、実績主義の色が強い企業では、成果が求められるプレッシャーもあるため、主体的にスキルアップを続ける姿勢が求められます。
女性でも長く働き続けられる?
製薬業界は全体的に女性比率が高く、育休・産休制度の整備も進んでいます。時短勤務やフレックス制度を導入している企業も多く、ライフステージに応じた働き方が可能です。
ただし、部署によっては繁忙期や出張が多い場合もあるため、事前に職場の実態を確認しておくことが重要です。面接時に働き方や制度の利用実績を質問するのも一つの手です。
まとめ|薬剤師が企業に転職するメリットと準備の重要性
薬剤師が製薬会社へ転職することで、年収アップやスキルの幅を広げるチャンスが得られます。調剤や病院とは異なる環境で、新たなキャリアを築きたい方にとっては大きな一歩になるでしょう。
一方で、企業特有の文化や業務スタイルに適応するためには、意識のシフトが欠かせません。求められるスキルや業務内容を正しく把握し、理想の働き方ができるよう準備をしましょう。
転職エージェントを活用して、求人を見つけたり、面接対策を練ることが、企業転職成功への鍵になります。