「病院への転職は考えているけれど、公立の一般病院ってどうなの?」そんな悩みをお持ちではないですか?
この記事では、一般病院の薬剤師経験がある藤野紗衣様の転職経験インタビューを紹介しています。
実は、一般病院の薬剤師はキャリアとしては学びが多いです。ただし一般病院(公立病院)薬剤師にはメリット・デメリットもあります。
この記事を読むことで、公立の一般病院への転職を判断できるようになりますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

藤野 紗衣(FUJINO Sae)
医療ライター・薬剤師
東北大学薬学部を卒業後、ドラッグストアや精神科病院、一般病院に薬剤師として勤務。2022年よりフリーライターとして活動。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。福祉住環境コーディネーター1級。マクロビオティック料理とウォーキングを欠かさない生活を心がけている。
インタビュー|ドラッグストア薬剤師から精神科病院へ転職!おすすめの人や働き方のメリットも
精神科病院から公立一般病院への転職経験について

Q:まず初めに、藤野さんが精神科病院から公立一般病院へ転職された経緯を教えてください。
私の父親が持ち家のある地方へ戻ることになり、私も一緒に行くことにしました。両親が「子どもを見てあげるから、一緒に戻らない?」と言ってくれたので。

子どもの病気などで、精神科病院勤務は長く続けられなかったのです。とても助かりました。
Q:なぜ、精神科から一般病院にされたのでしょうか?
子どもの存在です。子どものことがあるので、何かあったら動けるように通勤時間は短く、長く勤務できるようなところ…と考えると、あまり科のことは考えられなかったですね。精神科病院や精神科の門前薬局もありましたが、通勤が不便でした。地方なので選択肢が多くないのです。

入職した一般病院に不採用だったら、通勤しやすい別の病院か調剤薬局に勤務していたと思います。
Q:実際に公立一般病院薬剤師に転職してみてどうですか?
久しぶりのフルタイムだったので、大変でした。入院調剤のみだった精神科病院より忙しく、入職1年目には疲労から入院もしました。それでも転職が失敗だと思ったことはありません。子どもと生活ができ働ける、これ以上のことはないと思っていました。

そんなに忙しかったんですね。つらくはなかったですか?

つらいとは思いませんでした。仕事を失うと、子どもとの生活がなくなります。私にはそれが何より辛いことでした。子どもの存在に助けられました。
Q:先に結論として、公立一般病院薬剤師への転職のメリット・デメリット、どんな人におすすめか教えて下さい。

薬剤師が公立一般病院へ転職するメリデメと、公立一般病院がおすすめの人は以下のような感じかと思います。
- 公立一般病院薬剤師のメリット:広く薬学・医学を学べる、規則正しい毎日が過ごせる
- 公立一般病院薬剤師のデメリット:調剤未経験だと大変かもしれない。収入がドラッグストアや調剤薬局の薬剤師より低いかも
- どんな人に公立一般病院薬剤師がおすすめか:広く薬学・医学を学びたい人
一般病院(公立病院)薬剤師はどんな仕事?

Q:公立一般病院の薬剤師ってズバリ何をする人ですか?
病院の中で使うあらゆる医薬品について、調達や情報を含め、すべてに責任を持つ人です。
Q:公立一般病院の薬剤師って忙しいイメージですが、規則正しい生活ができるのでしょうか?
忙しい時間が集中しているので、その時間帯を乗り越えれば、何とかなります。
Q:公立一般病院の薬剤師と他の薬剤師との大きな違いはなんでしょうか?
主役ではなく、あくまで「チーム医療」の一員ということだと思います。
調剤薬局でもドラッグストアでも、薬剤師はメイン職として扱われ、いないと支障が出てきてしまいます。しかし病院では医師・看護師など多くの職種がいます。薬剤師の存在は、調剤薬局やドラッグストアほど大きくありません。

病院によると思いますが、薬剤師の発言権は弱いと感じます。
ただ、医師を始めいろいろな職種がいるから、他職種の患者さんへのアプローチ方法を実際に見られる、カルテも見られるので疾患の勉強にはなる。医学・薬学全体の勉強にはとてもよい環境だと思います。
Q:勉強という側面を考えれば、若い薬剤師さん向きということでしょうか?
病院には入院患者さんがいます。入院するほど症状が重い人の対応=スキルアップを一番しやすいとも考えられます。常に最新の知識を身につけていたいと考える薬剤師は、年齢に関係ないような気がしますが…

仕事を「学び」よりも「豊かな生活のため」と位置づけている人にとっては、一般病院薬剤師は向いていないように思いますがどうでしょうか?

何とも言えないですね。確かに、薬剤師の仕事の中では、病院薬剤師は稼げない方だと思います。
確かに、「薬剤師ならどの職場でもいいから、多く稼ぎたい」と考える人には、向いていないかもしれませんね。子どもが大きくなると教育費もかかりますし、ある程度、収入がないと生活も成り立ちません。
100%豊かな生活のために働いている薬剤師って、多くないような気がしています。お金もですが、どこかでやりがいを感じたくてしていると思うので、そう考えると、「若くなくても病院」というのは十分にあるのかなと思います。
Q:公立一般病院の薬剤師の具体的な仕事内容を教えてください。
病院にもよりますが、勤務していた病院では、調剤、払い出し、在庫管理・発注、DI業務、最近だと病棟業務です。
私はこの病院での病棟業務は未経験ですが、主に効果と副作用のモニタリングをします。患者さんの様子や検査結果から、薬が効いているか、副作用は起きていないかチェックする業務です。
一般病院(公立病院)薬剤師の労働条件は良い?

Q:公立一般病院での1日のスケジュールを教えてもらえますか?
病院によるとは思いますが、病棟業務をしていないころは以下のとおりです。
外来調剤(ハード)
外来調剤(やや少なめ)と並行して外来・病棟への注射薬払い出し、入院調剤(定期は週1、臨時は毎日)、薬品棚に補充および発注など
病棟業務は、外来調剤のところが効果と副作用モニタリングになっています。
Q:公立一般病院薬剤師の業務量は定時に上がれるくらいですか?
急性期の病院ではなかったので、ほぼ定時に帰れました。
1時間程度の残業が発生することもありましたが、月10時間には達していなかったと思います。
急性期、かつ大学病院のように大きな病院だと、薬剤師にも当直があります。
Q:疲労度はどのくらいだったでしょうか?

帰ってから家事とか普通にこなせる程度で余裕があったのか、疲労困憊で掃除や自炊もしたくないくらいなのか…。

帰宅すると、くたくたです。でも家事は普通にこなせていました。疲れて帰宅するのを見越して、出勤前にできることはほとんどしていました。
Q:公立一般病院でも有給休暇は取れましたか?
比較的取得しやすかったです。
Q:育児に対する協力体制はどうでしょうか?
非常に協力的でした。
一般病院も、みな積極的に子どもに関わる人たちだったので、私も子ども中心で動けました。
Q:ちなみに年収はどれくらいでしたか?目安で構わないので、教えてもらえますか?
薬剤師の中では多くない方だと思います。
病院・薬局・ドラッグストアなどの給与の差は、その組織で貢献度の高い人に多くの報酬が支払われるのだと思います。
調剤薬局やドラッグストアは、薬剤師がいないと収入にならない。病院は医師がいないと…です。病院薬剤師の収入は、調剤薬局やドラッグストアの薬剤師よりは低いと思います。
調剤薬局では年5万円ほどの研修費が支払われるケースがありますが、私の勤務先の病院では、業務に必要な研修会の時のみの支給です。自分で勉強する分は、全額自費でした。

誤解があると困るので説明しますが、公立病院なので、不当に低い報酬だったというわけではないです…
Q:公立一般病院で「これはちょっといまいち!」みたいなところはありますか?
所在地が田舎だったので、どうしても女性は低く見られているようでした。
私は平気でしたが、男性の方が優位に扱われている感じはありましたね。たとえば、女性だけが掃除をするといったことですが。
加えて、他職との付き合いも悩ましかったです。
女性職員ということで、看護師ともある程度うまくやらないといけないのですが、彼女たちにとって、女性であることは強みとなっているようです。女性であるがゆえに多少の理不尽感を味わっている身としては、発言などについていけないこともありました。
でも薬局にこもって仕事に集中してしまえば、基本、交流はあまりないので…

一般病院では違う職種の方々とも一緒なので人間関係も大変そうですね。
Q:一般病院では違う職種の方々とも一緒なので人間関係も大変そうですね。このような看護師や医師との人間関係の悩みの少ない病院はあるんでしょうか?

どこの職場でも、人間関係は大変だと思います。
私の勤務していた病院は、公立だったので少ない方だと思いますが、私立病院だと人間関係はもっと難しいような気がします。同族経営・縁故採用などまた別の要素も入ってきますから。
一般病院(公立病院)薬剤師に転職するときに気になること

Q:一般病院でも公立と民間で違いはありますか?
民間は経営者からの束縛があって、窮屈な感じがします。公立もトップからのしばりはありますが、民間程ではないと思います。
Q:公立一般病院薬剤師への転職者はどんな経歴の人が多いですか?
薬剤師は3人でしたが、全員が転職組でした。
他の2人の前職は、病院薬剤師とMRです。確認していませんが、おそらく、30代前半までに転職してきたのだと思います。
私のように何らかの理由で地元に戻る必要があった人、他で働いていたが地元からお声が掛かった人というような状況でした。
Q:職場の年齢層や社風、公立一般病院の文化などを教えてください。
年齢層:一般病院の方は比較的高めでした。
社風・文化:一般病院は地域の人を支え、自分達も支えられながらの地域の病院という感じでしょうか。
Q:公立一般病院への転職直後、慣れない業務に対する周囲のフォローや雰囲気はどうでしょうか?
十分に気配りしてもらえたと思っています。
「(私に)一日でも早く業務をこなせるようになってもらって、忙しさを軽減したい」という感じでした。私が入職するまで一時的に2人薬剤師だったのですが、人手が足りず、臨時助手がいました。でも、薬の問い合わせが入っても十分な答えができないなど、薬剤師でないと不自由なことが多かったようです。
Q:公立一般病院薬剤師に転職したいとき、どんな能力が必要ですか?
薬剤師資格があれば問題ないと思います。
調剤未経験だと大変かもしれませんが、採用してくれれば教育はしてくれると思います。
私が勤務していたところのように、薬剤師資格を持っている人が貴重な地域もありますから、求人があれば、「調剤未経験ですが…」と問い合わせをしてみるのをおすすめします。

若くてやる気があれば未経験でも大丈夫だと思いますよ。
Q:どのような場面でスキルアップを実感できましたか?
患者さんの信頼を得て、病院で出しているお薬以外のサプリメントの相談や、授乳とお薬の飲み方の相談に適切に答えられたときにそう感じたと思います。
Q:昇給昇進する人の特徴があれば教えてください。
どちらも仕事をきっちりするという点を満たしていれば、よいと思います。
私が勤めた一般病院の方は、田舎だったので男性であることと地域出身の人間であることでした。少し前ですが、いまだにこのような地域もあります。
Q:公立一般病院の求人はどこで見つけましたか?
私は直接電話を掛け、採用予定の有無を尋ねました。
「1名退職し、募集しようと思っていた」と返事があり、幸運でした。今だと転職エージェントへの登録もおすすめです。
転職エージェントに登録しても、自力で情報収集することが大切です。私が勤務していた病院は、薬剤師だけでなく他の職種も求人はハローワークがメインのようでした。
病院から病院の薬剤師転職を全解説!失敗しないコツ・メリデメ・病院別の働き方

Q:働きながらの転職活動で気をつけたことやコツはありますか?
就職活動しているころは、ドラッグストアでパート薬剤師をしていました。
地方へ戻るということも、一般病院へ就職活動していることも内緒でした。店長を含め皆年下で、いろんな事情を話すのが嫌だったというのがあります。
幸い休みを使って就職試験なども受験でき、最後に「父が持ち家のある地方に戻るので、一緒について行く」と伝えただけで、就職については話さなかったと記憶しています。
Q:藤野さんから転職のアドバイスはありますか?
希望する職種を決めたら、ぶれずに自分で積極的に行動することが重要だと思います。
Q:公立一般病院へ転職を考えている薬剤師の方にメッセージをいただけますか?

病院薬剤師は、広く薬学と医学を学べる職業です。学ぶのが好きな薬剤師の方、ぜひ挑戦してみてください。努力次第でいろいろな道が開けます。

ありがとうございました!
病院転職に悩んでいる薬剤師さん、藤野さんのご経験を参考に、ぜひ一般病院への一歩を踏み出してみましょう。