薬剤師が在宅をやりたくない7つの理由!大変できついときはどうする?

「在宅薬剤師はやりたくない」そう感じる薬剤師さんは多くいます。

その理由は、在宅業務は薬剤師さんにかかる精神的・肉体的な負担が大きいからです。

しかし、在宅医療の必要性が高まる現代の日本で、在宅医療をやりたくないと避けていくのは、薬剤師としてのキャリアの幅を狭めてしまいかねません。

薬剤師としてキャリアを積んでいくには、在宅医療は避けて通れないでしょう。ただ、中には在宅医療薬剤師を避けつつ、キャリアを積み上げられる職種もあります。

この記事では、薬剤師が在宅をやりたくない理由から、在宅医療薬剤師のこれから、在宅医療薬剤師をやりたくない時のキャリアの選択肢などを解説します。

この記事を読むことで、在宅医療薬剤師も含めて、薬剤師としてのキャリア選択ができるようになりますので、ぜひ参考にしてみてください。

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薬剤師が在宅医療で行う業務

在宅医療において、薬剤師の主な業務は以下のとおりです。

  1. 患者さんの個人宅や入居先に薬を届ける
  2. 患者さんの薬の飲み合わせを確認し、安全性を確保する
  3. 訪問先で患者さんの残薬を管理し、適切な使い方を指導する
  4. 訪問先で患者さんに服薬指導を行い、正しい服薬習慣を促す
  5. 医療・福祉関係者との連携や情報共有を行い、患者さんの総合的なケアをサポートする

これらの業務は、患者さんの健康状態を維持・向上させる目的で行われています。

特に在宅医療における重要な業務は、患者さんやご家族とのコミュニケーションです。

正しく・わかりやすく・円滑に情報をお伝えし、患者さんの相談にも乗ることが求められます。

在宅薬剤師の詳しい仕事内容はこちらの記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。

在宅医療薬剤師の仕事内容と役割は?薬局の現状の大変さも詳しく解説!

薬剤師が在宅医療をやりたくない7つの理由

薬剤師が在宅医療をやりたくないのには、以下の7つの理由が挙げられます。

  1. 開局時間外(早朝や夜間、休憩や休日)に訪問せざるを得ない
  2. 医師への報告書の作成等の負担が大きい
  3. 患者さんや医療従事者とのコミュニケーションが大変
  4. 患者さん宅の衛生環境が良いとは限らない
  5. 患者さん負担の問題で訪問を拒否されることがある
  6. 患者さん宅への訪問に時間を取られて負担が増える
  7. そもそも薬剤師が在宅医療を提供するための環境整備ができていない

いずれの理由も薬剤師に大きな負担がかかり、大変であることが特徴です。

以下で詳しく解説します。

①開局時間外(早朝や夜間、休憩や休日)に訪問せざるを得ない

在宅医療では、患者さんの体調や生活状況に応じた柔軟な対応が求められます。

そのため、早朝や夜間、休憩中や休日にも訪問することがあります。

患者さんの地域や個人的な事情等によって、通常の営業時間外に訪問が必要な場合があります。

その際は、患者さんの急変に対応できるよう、医師や看護師との連携も重要です。

このため、自由な時間が少なくなり、プライベートや家族との時間が犠牲になることもあるでしょう。そのプレッシャーに耐えられるかどうかは、薬剤師自身が覚悟しなければなりません。

②医師への報告書の作成等の負担が大きい

在宅医療の薬剤師は、訪問先で得た情報や状況を医師に報告することが求められます。

これには、報告書の作成や、医師との打ち合わせなどが含まれます。

報告書は、患者さんの状況を的確に伝えるために、詳細で正確な内容が求められます。

さらに、医師との連絡や打ち合わせも、関係者のスケジュール調整やタイミングが大変なこともあります。

そのため、報告書作成や連絡事項のコミュニケーションに時間や労力がかかり、負担が大きく感じられることがあります。

③患者さんや医療従事者とのコミュニケーションが大変

患者さんや医療従事者とのコミュニケーションは、薬剤師にとって非常に重要な要素です。

しかし、このようなコミュニケーションが大変なケースも少なくありません。

患者さんとの会話では、処方箋に関する説明はもちろん、様々な話題にも対応する必要があります。また、コミュニケーション能力に不安のある患者さんもいます。

さらに、医師や看護師との連携も欠かせないため、医療に関連する情報収集や提案が求められます。

在宅訪問においては、患者さんの生活や病状に密着したケアが必要であり、ヘルパーやケアマネージャーとも連携する機会が増えます。そのため、現場でのコミュニケーションは雑談から重要な情報交換まで幅広く、負担が増えることがあります。

④患者さん宅の衛生環境がひどい場合もある

在宅訪問では、患者さん宅の衛生環境が様々な状況にあり、不衛生なケースに出くわすこともあります。

ゴミや汚れが放置されていたり、虫が発生していたりすることも稀ではありません。

このような環境での訪問は、薬剤師にとってストレスとなることがあります。

ただし、患者さんの生活環境への対応が求められる場合もありますので、衛生面での問題解決も担当することがあります。

そのため、薬剤師は自分の衛生管理や感染対策にも注意しながら、認知症などの患者さんをサポートする必要があるのです。

⑤患者さん負担の問題で訪問を拒否されることがある

患者さんが自宅での訪問を受け入れるかどうかは、患者さんの事情や負担によって異なります。

自宅での訪問を受け入れることに抵抗感を持つ患者さんもおり、そのような場合には訪問を拒否されることがあります。

患者さんとのコミュニケーションや信頼関係が重要となるため、薬剤師は患者さんに対して柔軟な対応が求められます。

⑥患者さん宅への訪問に時間を取られて負担が増える

在宅訪問によって患者さん宅への移動時間が増え、その分仕事の負担が増加することがあります。

専門のドライバーさん付で車で移動することもありますが、中には徒歩や自転車というケースでは薬剤師にかかる肉体的な負担も大きいです。

また、訪問先が複数ある場合は、移動や訪問にかかる時間が大幅に増え、労働時間が長くなることもあります。

そのため、患者さん宅での在宅医療では時間が取られて負担が増えることもあり、在宅をやりたくないと考える薬剤師も少なくありません。

⑦そもそも薬剤師が在宅医療を提供するための環境整備ができていない

薬剤師が在宅医療を提供するための環境整備がまだ十分にできていないのは事実です。

これは、在宅医療に関する制度や支援体制が整っていないことや、必要なリソースが不足していることが原因となっています。

例えば、在宅医療に携わる薬剤師に対して十分な研修や教育が行われていないことや、在宅医療に取り組む薬局がまだ限られていることが挙げられます。

この状況を改善するためには、政府や関係機関が連携して、薬剤師や薬局への負担を増加させないための、在宅医療に対する支援策を充実させることが必要です。

在宅をやりたくない薬剤師におすすめの5つの職場

在宅医療薬剤師が合わないと感じたときの選択肢はいくつかあります。

例えば、単科医院に隣接した調剤薬局や安定期患者の病院薬剤師、製薬会社やドラッグストアなど、在宅医療を主軸としないキャリアを選ぶことも可能です。

いずれの職場も薬剤師としてのキャリアを築いていくことができるので、以下のおすすめの職場の中から、自分に合った働き方を見つけてみましょう。

おすすめ職場①:単科医院に近接した調剤薬局

単科医院に近接した調剤薬局では、比較的在宅医療が少ない薬局が多いです。

これらの薬局の特徴として、特定の疾患に対する専門知識やスキルが求められます。

例えば、眼科や皮膚科などの単科医院では、その診療科に特化した薬の取り扱いや、適切な服薬指導が必要です。

専門性を高めることで、薬剤師としてのスキルアップや市場価値を向上させることができます。

また、単科医院と密接な連携を取ることで、医療チームの一員として貢献し、患者さんにより良いサービスを提供できるでしょう。

おすすめ職場②:安定期の患者さんが利用する病院薬剤師

病院薬剤師は、安定期の患者さんが利用する病院で働く薬剤師のことです。

急性期病院と比較して落ち着いて仕事をすることができます

主に入院患者さんの薬の管理・調剤、院内での薬剤管理、医師との連携などが業務内容になります。

病院薬剤師は専門性が高く求められるため、スキルアップが図れる職場と言えます。

また、患者さんとの関わりも深く、薬剤師としての役割を十分に発揮できる環境が整っています。

おすすめ職場③:製薬会社や医薬品卸などの企業

製薬会社や医薬品卸などの企業に勤める薬剤師は、新薬開発や薬品の品質管理、情報提供など多岐にわたる業務に携わります。

企業薬剤師は安定した給与福利厚生が魅力であり、また働く範囲も広がるためキャリアアップのチャンスが多いと言われています。

年収は1000万円を超えるケースもあり、求人の競争率は高いです。

未経験から製薬会社に転職は難しいのでは?と感じる人も多いかと思いますが、実は未経験でも薬剤師が企業へ転職することは可能です。こちらの記事でも方法を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

未経験でも薬剤師が企業へ転職できる?おすすめ5つの職種

おすすめ職場④:調剤併設型のドラッグストア

調剤併設型のドラッグストアで働く薬剤師は、店舗での調剤や薬の販売に携わります。

地域密着型で働くことが多く、顧客とのコミュニケーションを大切にしながら仕事をすることが求められます。

また、勤務体系はシフト制が多く、長期の休暇は取りづらい職場が多いです。また、比較的残業も多くなる傾向にあります。

しかし年収は高く、年収600万円〜700万円ほどになるため、年収を上げたい方はドラッグストアへの転職も候補になるでしょう。

おすすめ職場⑤:パート薬剤師や派遣薬剤師

パート薬剤師や派遣薬剤師は、短期間の勤務や非常勤で働く薬剤師のことを指します。

働く時間や期間を選べるため、家族やプライベートとのバランスを考慮して働くことができます。

実はパート薬剤師や派遣薬剤師は時給も高く、賃金構造基本統計調査では平均時給2,845円で、中には3,500円以上の時給の求人もあります。フルで働けば正社員と同等以上の年収になる場合もあります。

パート薬剤師の平均時給を徹底解説!おすすめ職場はココ!ではパート薬剤師の時給を詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

パート薬剤師の平均時給を徹底解説!おすすめ職場はココ!

そもそも薬剤師の在宅医療って必要なの?

日本社会の高齢化が進む中、在宅医療の患者数は増加し続けており、在宅医療薬剤師の必要性が高まっています。高齢化に伴い、療養病床の再編や病床の削減が進み、在宅医療がますます重要な位置を占めるようになっています。

こうした状況下で、在宅医療薬剤師は患者のケアや地域医療において欠かせない役割を果たします。特に、在宅患者の薬の受け取りに関するニーズが増加しているため、薬剤師が患者の自宅や介護施設を訪問し、適切な服薬指導や副作用の対応を行うことが求められています。

また、地域医療の充実のために、薬剤師が医師や看護師、介護福祉士と連携したチーム医療を構築し、在宅医療サービスを提供することも不可欠です。

在宅医療にかかわる薬剤師のこれから

今後の在宅医療にかかわる薬剤師の役割はますます重要になっていきます。

厚生労働省は、在宅医療の充実を図るために平成29年から在宅医療を支援するための報酬加算を導入し、薬局における在宅医療業務の強化を図っています。

これを受けて、薬剤師は今後も在宅医療に関する知識やスキルを磨くことが求められ、患者のケアや地域医療に貢献していくことが期待されています。

在宅医療薬剤師は、病院や訪問看護ステーションと連携し、患者の健康維持に努めることが求められるでしょう。

薬剤師なのに在宅をやりたくないって甘い?

「薬剤師として働きたいけど、在宅はやりたくない。」

本音ではそう感じている薬剤師さんも多くいます。

実際に在宅を経験して、もうしんどくてやりたくない!と考えている薬剤師さんもいれば、経験する前からやりたくないと考えている方もいるかもしれません。

在宅をやらない薬剤師キャリアはあります。しかしこれからの医療業界は在宅医療に舵を切っていくでしょう。

薬価の改定により薬局の経営は在宅医療に舵を切らなくてはならなくなっているためです。

薬剤師として在宅はやりたくないという希望を叶えることは可能ですが、業界の動向も理解したうえで、働き方を決めていくことが重要になります。

在宅医療薬剤師をやりたくないという気持ちの2つのデメリット

在宅医療薬剤師をやりたくないという気持ちが抱えるデメリットは主に2つあります。

一つは、キャリアにマイナス影響を与えることで、もう一つは在宅の仕事がつらくなることです。

以下で詳しく解説します。

在宅を避ける薬剤師はキャリアにマイナス

在宅業務を避ける薬剤師はキャリアにマイナスの影響を受けることがあります。

なぜなら、各薬局は今後も在宅医療に注力していくようになるからです。

厚生労働省は平成31年に発表した地域包括ケアシステムの中で、『在宅医療』と『24時間対応・在宅対応』を薬局に求めており、2年ごとの調剤報酬改定も在宅医療への加算が大きくなっています。

このような状況下で、多くの調剤薬局が在宅医療に力を入れているため、在宅医療を避けていく薬剤師は将来的なキャリアアップのチャンスを逃す可能性があります。

在宅の仕事がつらくなる

在宅医療薬剤師をやりたくない気持ちが強いと、仕事がつらく感じることが増えます。

在宅業務は患者さんの自宅を訪問し、薬の管理や服薬指導などを行うため、コミュニケーションが重要となります。

そのため、やりたくないという気持ちが強いと仕事に対するモチベーションが低下し、職場でのストレスが増大することにつながってしまいます。

在宅医療薬剤師をうまくやる2つのコツ

在宅医療薬剤師としてうまくやるためにはコツが2つあります。

  1. 患者さん宅には長いはしない
  2. 感情は棚上げして仕事と割り切ること

これらを意識して取り組むことで、在宅医療薬剤師として抱えやすいストレスの軽減に繋がります。

具体的には以下で解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

患者さん宅に長居はしない

在宅医療の薬剤師として働く際、患者さん宅への訪問が必要ですが、長居は避けるとストレスも軽減されます。

在宅医療薬剤師のストレスの多くは『時間の消費』とそれに伴う『負担の増加』が原因です。

訪問の目的は、患者さんの薬剤管理や服薬指導を行うことですが、ときには患者さんのおしゃべりに付き合うことになるときもあるでしょう。

その際には適切な時間を守り、他の患者さんへのサポートもあることを告げて切り上げてしまうのも大切です。

自分の感情は棚上げして割り切る

在宅医療薬剤師は、患者さんや家族との距離が近くなることがあります。

そのため、自分の感情をコントロールし、プロフェッショナルとして割り切ることが重要です。

時には患者さんや家族からの批判や難しい要求に直面することもありますが、冷静に対応し、仕事やキャリアのための経験と割り切りってしまいましょう

また患者さんの状況に感情移入しすぎてしまうと、自分の心身にも影響が出ることがあるため、仕事とプライベートの切り替えを意識することが大切です。

まとめ|在宅薬剤師をやりたくないときはキャリアを見直そう

在宅医療薬剤師は今後もニーズが増えて、薬剤師として働くには避けては通れないでしょう。

しかし、在宅薬剤師が合わない、やりたくないと感じた場合には、病院薬剤師や企業薬剤師、調剤併設型ドラッグストア、パート薬剤師なども検討してみましょう。

さまざまなキャリアが存在することを知り、自分に合ったキャリア選択をすることで、生活も仕事も豊かに暮らすことができます。

もし、自分にどんなキャリアが合っているかわからない方は、薬剤師専門の転職エージェントに相談してみるのも良いでしょう。

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