薬剤師の退職で必要となる手続き一覧|提出・返却・受け取り書類を解説

勤務先への不満から転職を決意しても、何から始めれば良いのかわからず、不安になる人も多いのではないでしょうか。退職後に必要な社会保険や税金の手続きを忘れると、後でトラブルに発展することもあります。

この記事では薬剤師が退職する際の一連の手続きを、退職の意思表示から退職後の公的手続きまでわかりやすく解説します。記事を読めば退職に必要な手続きの流れを把握でき、安心して新しい環境へ進む準備を整えることが可能です。

円満退職のポイントは計画的な引き継ぎと、必要書類の準備・提出を丁寧に行うことです。退職後も安心して次のステップへ進むために、社会保険や税金などの公的手続きをもれなく済ませましょう。

薬剤師の退職手続きの流れ

薬剤師が退職する際は手続きの流れを事前に把握しておくことで、トラブルを未然に防いで円満に退職できます。薬剤師の退職手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 退職の意思表示
  2. 退職願の提出
  3. 業務の引き継ぎ
  4. 取引先への挨拶
  5. 有給の消化と整理・整頓
  6. 最終出社日

退職の意思表示

薬剤師が退職手続きを進める際は、退職希望日の1〜3か月前に直属の上司へ意思表示することが一般的です。職場によって退職手続きの規定が異なるため、就業規則を確認しておきましょう。

退職理由は不満などを避けて「一身上の都合で」と伝えることが適切です。引き止められた場合は感謝の気持ちを添え、退職の意思が変わらないことを冷静に伝えます。退職日が決まるまではトラブルを避けるためにも、同僚など周囲に話すことは控えておくと安心です。
» 退職の意思の効果的な伝え方は?例文やトラブル対策を解説

退職願の提出

退職の意思を伝えた後は、記録として残すために退職願を提出します。薬剤師は就業規則で定められた期日までに、退職願を直属の上司へ提出しましょう。白無地の便箋(B5またはA4)と封筒を用意し、封筒の表に「退職願」裏に所属部署と氏名を記入します。退職願に記載する内容は以下のとおりです。

  • 提出日
  • 退職希望日
  • 所属部署
  • 氏名
  • 退職理由

退職願を作成したら捺印し、コピーを取って保管しておくと後で確認ができるため安心です。

業務の引き継ぎ

薬剤師が退職手続きを進める際、退職願の提出後は後任者や同僚が困らないように計画的な引き継ぎが必要です。引き継ぎが不十分なまま退職すると、患者対応や業務に支障が出て、残されたスタッフの負担が増えてしまいます。スムーズに引き継ぎを進めるためにも、早めに準備を始めましょう。

退職する際は後任者が決まる前から引き継ぎ内容を整理し、上司と共有しておくと安心です。薬剤師は職場によって引き継ぐ内容は異なります。担当業務や注意点を文書にまとめ、必要に応じて口頭でも補足しておくことがおすすめです。

取引先への挨拶

取引先がある場合は退職の際に業務の引き継ぎと並行して、お世話になった取引先への挨拶も行いましょう。薬剤師が退職する際は状況に応じて以下の方法で取引先へ挨拶します。

  • 訪問
  • 電話
  • メール

取引先への挨拶は上司の許可を得てから、退職日の1〜2週間前に行います。

有給の消化と整理・整頓

円満退職のためには有給休暇を計画的に消化し、身の回りを整えておく必要があります。薬剤師が退職する際は引き継ぎと並行して、以下の準備を進めておくと安心です。

  • 有給休暇の日数を確認する
  • 有給休暇の消化を計画する
  • 私物を整理する
  • データや書類の整理整頓をする
  • 貸与品を返却する

有給休暇がある場合は、退職日までに取得できるよう早めに調整しておきましょう。

最終出社日

最終出社日はお世話になった方々へ感謝を伝え、気持ちよく締めくくるための大切な1日です。最終日に慌てないためにやるべきことをリストアップしておきましょう。薬剤師が退職する際、最終日にやることは以下のとおりです。

  • 社内の挨拶回り
  • 菓子折りの準備
  • 私物の整理・持ち帰り
  • 貸与物の返却
  • 必要書類の確認
  • 挨拶メールの送信

離職票などの必要書類がいつ送付されるかも事前に確認しておくと安心です。

薬剤師が退職時に会社に提出・返却するもの

薬剤師が退職する際は円満退職とスムーズな手続きのために、会社への提出書類と返却物を整理しておきましょう。薬剤師が退職時に会社に提出・返却するものは以下のとおりです。

  • 退職届
  • 会社から支給された備品や資料
  • 健康保険証の返却

退職届

退職届は退職することが正式に決まった後に会社へ提出する書類です。退職を「お願い」する退職願とは異なり、退職届は一度提出すると原則として取り消せません。退職届を提出するタイミングは、上司に退職の意思を伝えて退職日が確定した後です。

書き方については会社指定の退職届の書式があれば従い、ない場合は白い紙に手書きかパソコンで作成します。自己都合で辞める場合は退職届の退職理由を「一身上の都合により」と記載しましょう。退職届の渡し方は、会社の代表者(社長など)を宛名にして直属の上司に直接手渡します。

会社から支給された備品や資料

薬剤師は会社から借りていた備品や資料を退職時にすべて返す必要があります。薬剤師が退職する際に返却するものは以下のとおりです。

種類返却が必要なもの
身分証類社員証、入館証、セキュリティカード
制服など白衣、ユニフォーム
事務用品名刺、社員バッジ、印鑑
電子機器パソコン、スマートフォン、USBメモリ
資料・備品文房具、専門書籍、業務資料
その他ロッカーの鍵、通勤定期券

会社から支給された備品や資料は退職日が決まったら早めに整理をし、最終出社日までに返却しましょう。

健康保険証の返却

薬剤師が退職手続きする際、会社の健康保険に加入している場合は退職時に健康保険証を返却します。退職日の翌日から健康保険証は無効になります。健康保険証の返却は最終出社日に、人事・総務担当者または直属の上司へ手渡しすることが基本です。

扶養家族がいる場合は家族分の健康保険証も忘れずに返却しましょう。健康保険証を紛失したときはすぐに会社へ報告し、手続きが必要です。郵送で健康保険証を返却する場合は、個人情報保護のため簡易書留など追跡できる方法を選ぶと安心です。

薬剤師が退職時に会社から受け取るもの

薬剤師の退職時には、会社から退職後の各種手続きに必要な書類を受け取ります。受け取り忘れると退職後の手続きが複雑になる可能性があるため、注意が必要です。薬剤師が退職時に会社から受け取るものは以下のとおりです。

  • 雇用保険被保険者証
  • 年金手帳
  • 源泉徴収票
  • 離職票

雇用保険被保険者証

雇用保険被保険者証は雇用保険に加入していたことを証明する公的書類で、退職手続きの際に必ず受け取ります。転職先での雇用保険の加入手続きや、ハローワークで失業保険を申請する際に雇用保険被保険者証は必要です。

雇用保険被保険者証は会社が保管している場合が多く、退職日または後日郵送で返却されます。雇用保険被保険者証を受け取ったら、氏名や被保険者番号を確認しましょう。紛失時はハローワークで雇用保険被保険者証の再発行が可能です。

年金手帳

年金手帳は公的年金に加入していることを証明する書類です。退職時に会社から確実に年金手帳を受け取り、大切に保管しましょう。年金手帳には基礎年金番号が記載されており、転職先での手続きや国民年金への切り替えに必要になります。

年金手帳を会社が保管している場合は、最終出社日までに返却されることが一般的です。紛失した場合は年金事務所で年金手帳を再発行できます。2022年4月以降は「基礎年金番号通知書」に切り替わっていますが、従来の年金手帳も引き続き有効です。

源泉徴収票

源泉徴収票は1年間の給与総額と所得税の控除額が記載された公的書類です。給与が支払われている薬剤師の場合、転職先での年末調整や確定申告に源泉徴収票が必要となるため、必ず受け取りましょう。通常は退職後1か月以内に源泉徴収票が発行されます。

源泉徴収票を受け取っていない場合や紛失した場合は会社へ再発行を依頼し、受け取った後は大切に保管しましょう。

離職票

離職票は薬剤師の退職手続きで失業保険を受け取る際に必要な書類です。離職票の正式名称は「雇用保険被保険者離職票」で「離職票-1」と「離職票-2」の2枚1組で発行されます。会社に依頼すると退職後10日〜2週間ほどで自宅に離職票が郵送されます。

「離職票-2」に記載された離職理由は失業保険の受給期間に関わるため、内容が正しいか必ず確認しましょう。もし事実と違う離職理由が書かれていた場合は、ハローワークで異議申し立てができます。

薬剤師が退職後に行う公的な手続き

薬剤師の退職手続き後は健康保険や年金などの公的手続きが必要です。公的手続きをしなければ医療費の負担が増えたり、将来の年金額が減少したりする可能性があります。薬剤師が退職後に行う公的な手続きは以下のとおりです。

  • 健康保険の切り替え
  • 雇用保険(失業保険)の手続き
  • 年金の手続き
  • 住民税の手続き
  • 所得税の手続き

健康保険の切り替え

薬剤師が退職した際は健康保険の切り替え手続きを行う必要があります。退職日の翌日から会社の健康保険は使えなくなるため、無保険期間が生じないよう早めに手続きをしましょう。健康保険の切り替え方法と詳細は以下のとおりです。

切り替え方法手続き先期限保険料
任意継続する退職前に加入していた健康保険組合退職日の翌日から20日以内全額自己負担
国民健康保険に加入する市区町村役場退職日の翌日から14日以内前年の所得に応じて決定
家族の保険の扶養に入る配偶者や親の勤務先できるだけ早く保険料の自己負担なし

事前に窓口で保険料を確認して、自分に合った健康保険の切り替え方法を選びましょう。

雇用保険(失業保険)の手続き

薬剤師が退職手続きする際はハローワークで雇用保険の申請も忘れずに行いましょう。雇用保険の手続きの際に必要な書類は以下のとおりです。

  • 離職票-1・離職票-2
  • マイナンバーカード
  • 証明写真
  • 印鑑
  • 本人名義の預金通帳

雇用保険の受給期間は退職日の翌日から1年間が上限となるため、早めに申請しておくと安心です。己都合退職の場合は7日間の待期期間に加えて、2〜3か月の給付制限期間がある点にも注意しましょう。
» 薬剤師の失業保険のもらい方やもらえる金額を詳しく解説!

年金の手続き

薬剤師が退職した後は、勤務形態や転職のタイミングによって年金の手続きが異なります。厚生年金に加入していた場合は退職によって資格を失うため、状況に応じた手続きが必要です。薬剤師が退職した後の状況に応じた年金の手続きは以下のとおりです。

状況手続き先期限
すぐ次の職場へ転職する場合転職先の会社入社時に提出
転職まで期間が空く場合市区町村役場退職日の翌日から14日以内
配偶者の扶養に入る場合配偶者の勤務先できるだけ早く

年金の手続きは状況によって異なるため、自分に当てはまる方法を確認して期限内に済ませましょう。

住民税の手続き

薬剤師が退職した後も住民税の支払いは必要です。住民税は前年の所得に対して課税されるため、退職した時期によって支払い方法が異なります。退職時期別の住民税の支払方法は以下のとおりです。

退職時期支払い方法
1〜5月に退職5月分までの住民税が最後の給与からまとめて天引きされる
6〜12月に退職退職月以降の住民税は市区町村から送付される納付書で支払うか、最後の給与や退職金から一括天引きする

転職先がすぐ決まっている場合は、新しい勤務先で住民税の特別徴収の継続手続きができます。

所得税の手続き

薬剤師が退職した後の所得税の手続きは、年内に再就職するか否かで異なります。年内に再就職した場合は前の勤務先から受け取った「源泉徴収票」を転職先へ提出し、年末調整を受けます。年内に再就職しなかった場合は前職での年末調整で精算が完了しているため、他に所得がない場合は原則として所得税の手続きは不要です。

ただし、副業などで給与以外の所得がある場合は、再就職の有無に関わらず確定申告が必要になることがあります。退職時に受け取る源泉徴収票は所得税の手続きに必要になるため、大切に保管しておきましょう。

退職手続きを正しく理解して薬剤師として新しい一歩を踏み出そう

退職は薬剤師としての理想の働き方を実現するための新しいスタートです。狭い薬剤師業界で将来のキャリアを良好に保つには、円満退職が欠かせません。薬剤師の退職時には多くの書類提出や公的手続きが必要となるため、計画的な準備を心がけましょう。

退職手続きで不安や判断に迷う場合は、専門家を活用することもおすすめです。転職エージェントなど専門家のサポートを活用すると、退職に必要な手続きを安心してもれなく進められます。退職をキャリアの終わりではなく新たな始まりととらえ、十分な準備と確かな知識で自信を持って次の一歩を踏み出しましょう。
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