薬剤師って本当に増えすぎてるの?
薬剤師としての需要って減っちゃうんじゃないの?
そんな疑問を持つ薬剤師の方向けの記事です。
この記事では、厚生労働省のデータを元に、薬剤師数の推移や職場ごとの将来予測、薬剤師が増えすぎた場合のキャリア対策まで解説します。
この記事を読むことで、薬剤師として何をしていけば良いのかわかりますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
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薬剤師は増えすぎなのか
薬剤師の人数が増加していることは事実ですが、果たして増えすぎなのでしょうか。
結論としては、薬剤師は増えすぎと言えます。
厚生省のデータによると、1976年から2018年までの42年間で薬局の薬剤師数は31,323人から180,415人と約6倍にまで増加しています。
また、OECDの報告によれば、人口10万人あたりの薬剤師数はOECD加盟国の中で日本が突出して多く、2位のベルギーと比較しても49.6%以上、平均と比較すると121%も薬剤師数が多いです。
また後述する薬剤師の需給関係についても、今後は薬剤師あまりが懸念されています。
このように、マクロな視点では一般的に言われる「薬剤師は増えすぎ」という認識は正しいと言えます。
増えすぎた薬剤師の将来予測
薬剤師が増加し続ける一方で、将来の薬剤師の需要はどのような状況になるのか。
厚生省の調査では、全体としては2045年には最大12.6万人の薬剤師が供給過剰になると推計されています。
ただし、薬剤師の今後の需給関係は業種別に違いがあるため、今後の薬剤師のキャリアを検討するには、各業種の状況を知ることも重要です。
専門性が求められる分野や新たな業務領域へのシフトが進展し、更に薬剤師の仕事の幅が広がることが予想されるため、確認しておきましょう。
参考:薬剤師の需給推計(案)
薬局に従事する薬剤師数
薬局に従事する全国の薬剤師数は、厚生省のデータを見ると2030年(令和12年)までは増加し、その後は徐々に減少していきます。
これは、全国で薬剤師の需要が2030年以降は減少していくということであり、今後も薬局で働く薬剤師数が増加していけば供給過剰となります。
また、最近ではAIやITツールの導入により、業務効率が向上し薬剤師の需要が減少する可能性もあります。
参考:薬剤師の需給推計(案)
病院に従事する薬剤師数
病院に従事する薬剤師数は、地域医療構想の2025年度見込みに基づく病床数の減少に伴い、減少していくと推計されています。
厚生省のデータでは、2031年(令和13年)までは急激な減少を見せ、その後の需要は一定。
2045年時点で現在より6,000人少ない、約4.7万人の薬剤師数になると見込まれています。
ただし、がん治療や感染症対策など多様な分野での専門スキルが求められる薬剤師の役割が重要視されているため、規模や診療科目が多様な病院では雇用機会が増える可能性もあります。
参考:薬剤師の需給推計(案)
診療所に従事する薬剤師数
診療所の薬剤師数は、今後も一定で大きな増加も減少もないと予想されています。
それは、過去2014年~2018年までの5年間で、診療所に従事する薬剤師数は一定であったためです。
また、地域医療においても診療所の薬剤師は重要なポジションを担っており、需要は一定数あると見られています。
ただし、診療所の求人数は多くなく、それに応じて薬剤師数も比較的少ないです。
診療所で働く薬剤師は、全国的にみても全体の人数に占める割合は比較的少ないと言えます。
製薬会社に従事する薬剤師数
製薬会社の薬剤師数は今後も一定であると予想されています。
これは、過去2000年~2018年までで製薬会社の薬剤師人数推移が28,584人→29,009人と、ほぼ一定であったため、今後も同程度で推移すると考えられるためです。
また、製薬会社においても、薬剤師は重要な役割を担っており、製品の品質管理や安全性評価、情報提供などの幅広いスキルが求められています。
製薬会社の薬剤師は年収も高くキャリアも継続しやすいため、人気の職種ですが、製薬会社で働く薬剤師数も全体に対する割合としては少なく、限定的な求人数となることが多いです。
薬剤師は飽和しているのか?需給の実態について詳しく解説した記事も参考にしてみてください。
薬剤師は飽和している?実態とこれからの職場別需給状況薬剤師が増えすぎていない都道府県もある
全国的には増えすぎている薬剤師ですが、実際には薬剤師が不足している地域も存在します。
厚生労働省の調査では、人口10万人あたりの薬剤師数は全国平均で198.6人ですが、薬剤師数が平均以下の都道府県は35になります。
一方で、東京・神奈川・大阪・兵庫・広島・福岡といった大都市では薬剤師が飽和状態となっており、求人倍率や採用年収が低いケースもあるのが実情です。
これは、地方と都市部の薬剤師の需給バランスが取れていないことを示しており、今後の薬剤師業界の課題でもあります。
今後、高齢化が進む中で薬剤師不足の地域での薬剤師の価値はますます高まることが予想されるため、年収を上げたい薬剤師は、年収や待遇の良い地方での就職も視野に入れても良いでしょう。
参考:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/20/dl/R02_kekka-3.pdf
最新版の薬剤師の全国年収ランキングはこちらで掲載しています。
就職転職の際に、都道府県別の年収で損をしたくない薬剤師さんはぜひ参考にしてみてください。以外な事実がわかります。
増えすぎた薬剤師の転職先候補5選
転職を検討している薬剤師におすすめの3つの職場は以下の通りです。
1つ目はドラッグストアや調剤薬局、ここでは患者対応や薬の管理など多岐に渡る業務があります。
2つ目は病院や診療所、患者さまと直接接する機会が多く、専門的な知識を活かせる場です。
3つ目は製薬会社や企業、研究開発や品質管理など、幅広い分野で活躍できます。
薬剤師の将来性も参考にして選んでみてください。
調剤薬局
調剤薬局の薬剤師需要は充足しつつありますが、地域によってはまだ薬剤師不足が深刻です。
全国的にみると、薬剤師の調剤業務が増加し、年々必要な資格を取得している人も増えています。
また、厚生労働省は地域住民に対する健康状態の向上を目指して、かかりつけ薬局制度や地域に密着した薬剤師との相談体制を整備し、薬剤師の需要が増える一部としています。
福島や宮城など、一部の地域では自動調剤機の導入により薬剤師不足の解消が図られていますが、今後も業務の拡大や介護や医療の連携が進むことから需要は続く傾向が予想されます。
病院薬剤師
病院薬剤師の需要は今後減少していくと見られていますが、転職先としてはまだ魅力があります。
厚生労働省のデータによると、病院薬剤師の数も以前に比べて大きな変化は見られません。
病院内での積極的な薬剤師の活用が推奨されているため、臨床経験を積んで薬剤師としてのキャリアアップを目指したい方には向いている転職先でしょう。
ドラッグストア|薬剤師の需要は高い
ドラッグストアにおける薬剤師の需要は非常に高く、近年さらに増加しています。
地域に密着し、近隣の住民が利用しやすい場所に立ち位置することから、働き方にも幅があります。
パート薬剤師や派遣薬剤師も多く就業していることから需要の高さが伺えます。
また、OTC医薬品の販売や調剤業務を行なっており、経験豊富で質問にも的確に答えられる薬剤師が求められています。
さらに、スーパーや病院と併設された店舗も増えており、薬剤師の就職先としては今後も広がりを見せていくと見られています。
ただし、正社員として働く場合、忙しさは店舗により大きな差があるので転職の際には注意が必要です。
製薬会社やメーカー|薬剤師の需要は横ばい
製薬会社のほか、化粧品や食品メーカーの薬剤師需要は横ばいですが、年収や待遇が良いことを考えると転職先としても評価が高いです。
職種も豊富で、研究職や開発職、品質管理や薬事、メディカルライター職などもあります。
特に薬剤師からは品質管理が働きやすく求人を出している企業も多いです。
将来的にもキャリアアップにつながる転職となるため、製薬会社やメーカーへの転職は一つの候補となるでしょう。
製薬会社の品質管理はきついとの評判もありますが、薬剤師からの転職の場合の実態については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ
製薬会社の品質管理はきつい?薬剤師が知っておくべき7つのこと大学・介護保健施設|穴場で需要は高い
大学や介護保健施設は、年収も低くなく、落ち着いて仕事ができる環境が整っていくと見られており、薬剤師にとっては穴場の職場となっています。
大学では教育者として薬剤師の知識経験を活かすことが可能です。
また、介護保健施設では、高齢者の薬の管理や調剤業務が重要になるため、専門性が求められています。
厚生労働省は2045年(令和27年)までに介護保険施設の薬剤師需要は2倍になると推計しており、今後薬剤師がキャリアアップできる職場として期待できます。
かかりつけ薬剤師や在宅医療薬剤師としてのキャリアも積める環境が整い始めているため、今後も薬剤師として働きたい、市場価値を高めておきたいという薬剤師の方にはおすすめの職場です。
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薬剤師が増えすぎとなる3つの要因
薬剤師が増えすぎる要因として、まずAIによる業務効率化による薬剤師需要の減少が挙げられます。
次にファーマシーテクニシャン制度の導入による薬剤師需要の減少があります。
そして、登録販売者による薬剤師需要の減少が考えられます。
AIの業務効率化による薬剤師需要の減少
近年のAIやIT技術の進化により、調剤業務においてコンピューターシステムが導入され、調剤エラーや棚卸管理などの業務が効率化されています。
これにより、薬剤師の介入が以前に比べて不要なケースが増え、薬剤師の需要が減少していると言われています。
薬剤師の仕事はAIでなくなるのか?AIの活用時代に薬剤師が知っておきたいことをこちらの記事で解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
薬剤師の仕事はAIでなくなる|知っておきたいやるべきこと4選と有利な職場ファーマシーテクニシャン制度の導入による薬剤師需要の減少
ファーマシーテクニシャンは、薬剤師の補助を行う資格を持つ者で、薬剤師に代わって一部の調剤業務や在庫管理などを行います。
この制度が導入されることで、薬剤師の労働負担が軽減される反面、薬剤師の需要が減少すると考えられます。
登録販売者による薬剤師需要の減少
登録販売者は一般用医薬品の販売業務を行う資格を持ち、特にドラッグストアなどで活躍しています。
登録販売者の増加により、薬剤師が行っていた一部の業務が代替されるため、薬剤師の需要が低下する可能性があります。
増えすぎた薬剤師の生存戦略
これらの状況に対処するため、薬剤師は専門性を高めることや、地域医療に密着した働き方への対応が求められます。
対人業務への注力や、認定薬剤師の資格取得、在宅医療の経験など、今後の社会の変化に対応できる準備は必要です。
また、薬局経営や他業種へのキャリアチェンジも生存戦略の一つとなるでしょう。
対人業務に注力する
2016年の診療報酬改定を受け、薬剤師の役割が拡大しています。
地域密着型の業務が求められ、患者のニーズに応えるために、対人業務に注力することが重要です。
患者との相談や処方箋の確認、在宅医療のサポート、かかりつけ薬剤師、介護職との連携など、日本薬剤師会が推進している対人業務は今後より必要になるでしょう。
研修や経験を積んで専門知識を高め、患者に対応できるスキルを持つことが、将来性のある薬剤師になるための鍵です。
認定薬剤師の資格を取り専門性を高める
認定薬剤師の資格を取得することで、専門性が高まり、医療チームの中で信頼される存在になります。
さまざまな症例に対応できる知識と経験を持つことが求められるため、資格を取得することや学会に参加して、最新の治療や薬に関する情報を学ぶことも重要です。
認定薬剤師になることで、医師や看護師と連携し、患者の治療やケアに大きく貢献することができます。
在宅医療の経験を積む
高齢化が進む現代において、在宅医療の需要はますます増加しています。
薬剤師が提供できる在宅医療サービスには、服薬指導や薬の管理などがあります。
今後は地域で活躍する薬剤師として、在宅医療の経験を積み、患者のケアやサポートに取り組むことが求められます。
この経験を積むことで、在宅医療の分野での職場の選択肢が広がり、キャリアアップが期待できます。
オワコンとも言われる薬剤師ですが、その理由は働き方が以前とは変化しているためです。薬剤師に求められる役割の変化とそれに対応するためのヒントを以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
薬剤師はオワコンか|5つの理由と生き残る3つのポイントまとめ|薬剤師が増えすぎても生き残るための行動を取ろう
薬剤師が増えすぎて自分の将来やキャリアに不安がある薬剤師さんは、ぜひ対人業務や認定薬剤師資格の取得、在宅医療の経験など、将来性のある薬剤師として生き残るための行動を取っていきましょう。
今後の医療やITの発展を見据え、これからの薬剤師としての役割や技術を習得していくことが重要です。
薬剤師として生き残るには何が必要か、理想の未来のため、ぜひ自分のキャリアを検討して次のアクションへつなげていってください。