「薬剤師は本当に多すぎ?将来的に薬剤師として働けるのか不安」そんな疑問に答える記事です。
薬剤師数は年々増加しており、多すぎと言われることも増えました。
しかし、こういった不正確な情報だけで、自身のキャリア選択をしてしまうのは大きなリスクです。
実は、薬剤師が増えて今後はどうなっていくのか、薬剤師のキャリアを選択をするためには多角的な視点での判断が必要になります。
この記事では、薬剤師は多すぎるのか、マクロ的な視点とミクロ的な視点、そして職場別の将来性まで解説していきます。
この記事を読むことで、自身の薬剤師としてのキャリアを選択できるようになりますので、ぜひ最後まで読んでみてください、
薬剤師は本当に多すぎ?
過剰と言われる薬剤師の数ですが、実際のところはマクロ視点で見るか、ミクロしてで見るかで答えは異なります。
薬剤師を取り巻く状況は地域によって異なり、全体としては多すぎと言えるかもしれませんが、逆に不足している地域も存在します。
薬剤師の需給バランスを見る上で重要なポイントは、薬学部の増設が続いており、毎年平均8000~9000人くらいの薬剤師が増えていることと、都市部への薬剤師の集中です。
過剰薬剤師の問題を解決するためには、将来の薬剤師の需要や労働環境の変化を考慮し、適切な施策が求められます。
薬剤師として今後キャリアを積んでいく予定の人は、薬剤師の受給状況は知っておいた方が良いでしょう。
以下で詳しく解説していきますので、ぜひ確認してみてください。
薬剤師の有効求人倍率は年々低下
薬剤師の有効求人倍率は近年低下の傾向にあり、2023年11月時点では薬剤師の有効求人倍率は2.26倍となっています。
これは、薬剤師の求人数が求職者数を上回っていることを示していますが、2015年では薬剤師の有効求人倍率は6.33倍であったことを鑑みると、8年で約1/3にまで薬剤師の需要が減少しています。
つまり有効求人倍率から見れば、全体感としては薬剤師は多すぎと言えます。
ただし、求人倍率はあくまで指標であり、具体的な転職や就職の状況に影響を与える要因はさまざまです。
そのため、薬剤師の現状を正確に把握するためには、有効求人倍率だけではなく、個別の要因も考慮する必要があります。
薬剤師不足の地域もある
全国的に薬剤師が過剰と言われているものの、一部の地域では薬剤師の不足が深刻化しています。
病院における薬剤師の充足率は平均80.0%(最大98.3%、最小54.0%)、薬局における薬剤師の充足率は平均86.6%(最大112.4%、最小58.3%)と、地域によって偏りが見られます。
つまり、全国の薬剤師資格者数は多いものの、地域によっては勤め先では薬剤師不足の状態です。
高齢化による薬剤師の業務増加
高齢化に伴い、薬剤師としての業務が年々増加しています。
さらに、調剤報酬改訂で在宅訪問業務へ注力していく病院・薬局も増え、薬剤師業務はさらに増えていくと見られています。
その結果、薬剤師の需要は2035年まで伸びると言われており、病院も薬局も今後しばらくは薬剤師が多すぎるという状況にはならないでしょう。
ドラッグストアで高まる薬剤師の需要
病院や調剤薬局で薬剤師不足が続く中、ドラッグストアでの薬剤師の需要は年々増加しており、今後もその傾向が続くと予想されます。
その理由は、調剤薬局とドラッグストアの分業化が進んでいることや、ドラッグストアが地域密着型のサービスを提供していることが、薬剤師の需要を高める要因です。
ドラッグストアで活躍する薬剤師は、地域の健康を支える重要なポジションを担っており、今後ますますその需要が高まることが予想されています。
薬剤師が多すぎでない3つの理由
薬剤師が多すぎではない理由として、以下の3つが挙げられます。
- 薬剤師数はまだ飽和状態ではない
- ライフイベントでの退職も多い
- 薬剤師として勤務していない薬剤師資格保有者も多い
これらの理由から、一概に薬剤師が多すぎるとは言い切れません。
薬剤師数は飽和していない
薬剤師数は飽和していないとされています。
医療の発展や高齢化社会の進行に伴い、薬剤師の需要は増加傾向にあります。
また、地域による薬剤師の不足も問題視されており、特に地方では薬剤師数の不足が顕著です。
近年では、在宅医療や健康対策のための薬剤師の役割も拡大しています。
このような状況を鑑みると、薬剤師数は未だ飽和していないと言えるでしょう。
ライフイベントでの退職が多い
薬剤師の女性比率が高く、ライフイベントで退職する人が多いです。
厚生労働省の統計によると、薬剤師の資格保有者のうち62%が女性です。
この割合は医師や歯科医師と比較しても高く、女性が多い職種であることがわかります。
ライフイベント(結婚、出産、育児など)に伴い、一時的に働かなくなる薬剤師が多く、これが薬剤師不足に影響しています。
このため、現状では働いている薬剤師数は多すぎではないと言えるでしょう。
薬剤師資格保有者でも薬剤師をしていない人もいる
薬剤師資格を持っていても、現場で薬剤師として働いていない人が一定数存在します。
職場の環境や給与面、適性や適正などの理由で、他の仕事に転職したり、薬剤師として働かない選択をする人もいます。
厚生労働省の統計データによると、薬剤師資格保有者のうち約15%が現場で働いていない状態です。
そのため、働いている薬剤師数は多すぎではないでしょう。
薬剤師が多すぎと言われる2つの理由
実態として多すぎではない薬剤師数ですが、薬剤師が多すぎると言われる理由は主に2つあります。
- 薬剤師の総数が増加していること
- 薬剤師の求職者数が増加していること
このほか、AIや機械による調剤業務が進化しつつあるため、将来的に薬剤師の需要が低下するという予測があることや、大都市部を中心に薬学部の新設が相次いでいるため、薬剤師の過剰供給が懸念されていることもあげられます。
ただし、地方では依然として薬剤師不足が問題となっているため、過剰供給という状況は一概には言えません。
今後の傾向を把握するためにも、総数と求人数の動向は押さえておくと良いでしょう。
薬剤師の総数は増加している
需要と供給のバランスは地域や職場によって大きく異なりますが、厚生労働省が公表するデータを引用すると、薬剤師の総数は増加傾向にあります。
2045年の薬剤師供給数の最大値は45万8000人と推計されており、これを考慮すれば現状はまだ薬剤師数が過剰ではないと言えるでしょう。
薬剤師数の増加については、長くなるので以下の記事で詳しく解説しています。
今後の薬剤師数と求人の状況について知りたい方はぜひ読んでみてください。
薬剤師の求職者数が増加している
現在、薬剤師の求職者数が増加しています。
医療の需要の高まりや、薬局数の増加、ドラッグストアの店舗数拡大に伴い、薬剤師需要が伸びていることがその理由です。
また、薬剤師のキャリアにおいて、転職を検討する人が多くなっていることも影響しています。
今後もこの傾向は続くと考えられるため、求職者には適切なサポートが必要になります。
薬剤師は本当に増えすぎ?職場・地域の違いと将来の転職先候補を解説
職場別の薬剤師の将来性
薬剤師の将来性は実は職場別に異なります。
薬剤師として働こうと考えている人にとっては、「何をするか」に加えて「どこで」働くかも重要な選択となります。
各職場の今後の動向と将来性について、確認していきましょう。
調剤薬局
調剤薬局薬剤師は、地域の医療ニーズが拡大することに伴い、地方の薬剤師は今後も需要が増加すると予想されます。
厚生労働省の調査によると、全国総数では令和12年までは需要の増加が見込まれ、令和12年以降は徐々に低下していきます。
また、AIやITツールの導入により効率化が進む一方、ファーマシーテクニシャン制度の導入より競争が激化する可能性があります。
ドラッグストア
近年、ドラッグストアやスーパー併設の薬局が増加し、OTC医薬品の販売や調剤業務が拡大しています。
セルフメディケーションでの需要の高まりもあり、今後も地域に密着したサービスが重要視されるため、ドラッグストア薬剤師の需要は年々増えると予想されます。
ただし、接客スキルや総合的な知識が求められるため、経験やスキルを身につけることが重要です。
病院
病院薬剤師は、高齢化社会や在宅医療の拡大に伴い、令和13年に向けて需要は低下していくと予想されています。
令和13年以降は需要は横ばい。安定した需要がある職種と言えるでしょう。
特にがんや感染症対策、精神疾患などの分野では、専門的な知識やスキルが不可欠です。
また、患者に対する服薬指導や医師との連携が強化されることから、病院薬剤師の役割はますます重要になると考えられます。
製薬企業
製薬会社薬剤師の需要は今後も横ばいと見られています。
製薬業界はジェネリック医薬品のシェア拡大や薬価制度の改定により、製薬業界全体の利益率は低下傾向です。
しかし、製薬業界の利益率は依然として非常に高く、製薬会社薬剤師は、新薬開発や営業活動のスペシャリストとして活躍しているため、人材価値が高く、将来的にも高年収の職種であることは変わりないでしょう。
製薬会社薬剤師は営業や新薬開発など製薬業界における様々な業務に従事することで、独自のキャリアを築くことが可能です。
転職やキャリアを考える際には、今後の業界動向を研究し、自分に合った選択肢を慎重に検討してください。
製薬会社で働く薬剤師の年収と9つ仕事内容|働きやすさと口コミを徹底解説!
薬剤師として将来性のあるキャリア選択は?
薬剤師として将来性の高いキャリアは製薬会社やメーカーと言われます。
なぜなら、年収アップにつながりやすく、将来的にも薬剤師の需要は高い状況を維持する見込みだからです。
このほか、”薬剤師以外”の職種も視野に入れることで、キャリアの幅は広がります。
薬剤師として将来性の高いスキルや、キャリアアップルートについては、以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
薬剤師の将来性は未来がない?職場ごと需給予測と業務の変化から徹底解説!
変化している薬剤師の働く環境
厚生労働省による報酬改定や機械の導入、薬剤師の仕事内容の変化など、薬剤師の働く環境は変化しています。
調剤薬局業界では、診療報酬の改定や調剤ミス防止のための自動監査機の導入が進んでおり、今後もこの先の環境変化が予測されます。
登録販売者の需要増加
登録販売者の需要が増加することで、薬剤師の仕事にも変化が起こります。
特に、ドラッグストアでの調剤と販売業務がニーズが高まる地域が増えています。一般用医薬品(一類医薬品)の取り扱いが可能な登録販売者が増えることで、薬局や調剤薬局の併設店舗数が増加し、今後も需要が続くでしょう。
しかし一部では、登録販売者の増加が薬剤師の雇用や年収に悪影響を与えるという懸念もあります。
今後の薬剤師の難易度や需要の変化がどのように進むかを、これからも注視する必要があります。
ファーマシーテクニシャン制度
厚生労働省が導入を検討しているファーマシーテクニシャン制度による変化も見逃せません。
この制度は、調剤補助や医薬品管理などの業務を行うファーマシーテクニシャンが登録されることで、薬剤師の業務負担が軽減されることが期待されています。
しかし一部では、ファーマシーテクニシャンが一般医薬品や一類医薬品の取り扱いをすることで、薬剤師の仕事の幅が狭まり、薬剤師需要の低下につながるという懸念も指摘されています。
そのため、今後の制度導入や労働省の方針変更による影響は、将来的にも中止しておくと良いでしょう。
6年制薬学教育施行による変化
薬剤師の教育制度が6年制に変更され、より専門性の高い人材の育成が行われるようになりました。
その結果、薬剤師に求められるスキルや知識も変化し、より高度な業務が可能になっています。
育休や時短勤務など
働く環境が改善され、育休や時短勤務などの制度が整備されています。
これにより、薬剤師として働く女性のキャリアも支援されており、ワークライフバランスが重視されるようになりました。
薬剤師として働く上での選択肢が広がってきていますので、今後のキャリアについて検討してみることをおすすめします。
薬剤師の”仕事がなくなる”は本当?
薬剤師の”仕事がなくなる”という声がありますが、これは一概には言えません。
理由としては、AIやIT技術の発展が薬剤師の仕事にも影響を与えており、効率化や自動化が進んでいるからです。
しかし、薬剤師が主体となる業務はまだ多く存在しており、完全に仕事がなくなることは考えにくいです。
薬剤師の仕事がなくなると言われる理由
薬剤師の仕事がなくなると言われる理由は、AIやIT技術の発展により、処方箋の調剤や薬剤管理などが効率化されているためです。
また、リフィル処方箋の導入により、薬剤師の仕事が簡易化される傾向があります。
しかし、薬剤師の専門知識やスキルは今後も必要とされるでしょう。
特に、薬剤師業務の一部は今後AIに代替されていきます。
AIに取って代わられないための行動を以下の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
薬剤師の仕事はAIでなくなる|知っておきたいやるべきこと4選と有利な職場
薬剤師が多くなりすぎた時のための備え
現在はまだ薬剤師は多すぎではありませんが、将来的には薬剤師数は飽和すると見られています。
薬剤師が多くなりすぎた時に、薬剤師としての市場価値を高く保つための戦略をご紹介します。
専門性をさらに磨いて「認定薬剤師」になる
専門性をさらに磨くことで「認定薬剤師」になることができます。
この資格を取得すると、薬剤師としてのスキルと知識が上位に位置し、ニーズも高まります。
認定薬剤師は、専門的な指導やアドバイスが求められる場面が多く、採用される可能性も高まります。
向上心を持ち、専門分野を深めることで、患者や医療チームからの信頼も向上し、働く場での質を高めることが可能になります。
マネジメント能力を磨いて「管理薬剤師」として働く
マネジメント能力を磨き、「管理薬剤師」として働くことができます。
管理薬剤師は、薬局や病院の運営や経営に携わる役割を担い、チームの統率や効率化を図ることが求められます。
リーダーシップを発揮し、業務を円滑に進める能力があれば、より多くの責任と報酬を得ることができます。
コミュニケーション能力を磨き「かかりつけ薬剤師」に
コミュニケーション能力を磨くことで、「かかりつけ薬剤師」になることができます。
かかりつけ薬剤師は、患者との信頼関係を築き、丁寧な対応と正確な情報提供が求められます。
患者一人ひとりに対する丁寧なコミュニケーションで、患者の満足度を高め、安心感を提供することが目的です。
患者のニーズを理解し、彼らに対応する能力を磨くことで、今後ますます重要性が増すであろうかかりつけ薬剤師として活躍できます。
「在宅医療」もできる薬剤師の需要も高まる
「在宅医療」もできる薬剤師の需要が高まっています。
政府の政策や高齢化社会の進行に伴い、在宅医療のニーズが増加しており、それに対応できる薬剤師が不足しています。
急性期や慢性期の患者に対応するためには、経験豊富な薬剤師が必要です。
在宅医療分野でスキルを磨くことで、確実に需要がある仕事に就くことができます。
グローバル化に備え「外国語」のスキルアップ
グローバル化に備えて、「外国語」のスキルアップが望まれます。
観光地や都市部の薬局で働く際、外国からの患者さんに対応できる薬剤師が重宝されます。
特に英語や中国語などのスキルがあれば、より多くの人に対応でき、価値が向上します。
外国語を身につけるチャレンジに取り組むことで、新たな市場にアプローチできる可能性が広がります。
まとめ|薬剤師は「まだ」多すぎではない
薬剤師の需要は、専門性やスキルによって異なります。
認定薬剤師や管理薬剤師、かかりつけ薬剤師、在宅医療を担える薬剤師、外国語が得意な薬剤師など、多様なニーズが存在しています。
自分のスキルや経験を磨き、市場ニーズに適応することが求められます。
今後のキャリアを考え、どの分野でスキルアップするか検討して、最適な道を選びましょう。