薬剤師の今後の需要はどうなるのか、将来的にも理想のキャリアを実現するために大事なことを解説した記事です。
薬剤師の飽和や薬剤師需要の減少が懸念されるなか、自身の将来のキャリアを不安に感じる薬剤師さんも多くいます。
今後働き方が大きく変わる薬剤師の業界で、知っておかないと損をしてしまうことは7つです。
この記事を読むことで、薬剤師の今後の動向や、自分が何をしていく必要があるのかが明確になりますので、ぜひ最後まで読んで、今後の薬剤師キャリアに活かしていってください。
薬剤師として今後知っておくべき7つの大事なこと
薬剤師として今後知っておくべきことは以下の7つです。
- 薬剤師の現況
- 薬剤師の今後の予想
- 薬剤師に今後求められること
- 薬剤師として自分ができていること
- 薬剤師として自分ができていないこと
- 薬剤師として今後生き残るために必要なこと
- 薬剤師としての今後のキャリアの選択肢
これらを知っておくことで、今後も薬剤師として多くの選択肢を持てるようになります。
ぜひ参考にしてみてください。
薬剤師の現況
薬剤師の現況は多角的に把握しておくことが必要です。
まず、薬剤師数はマクロな視点としては増えすぎています。
しかし、都道府県ごと、職場ごとといった、ミクロな視点では薬剤師が不足している実態もあります。
また、有効求人倍率の低下のほか、職場や都道府県ごとに薬剤師の年収は大きな差があることも特徴です。
まずは、現在の自分の置かれている状況を把握していくことが重要でしょう。
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薬剤師の今後の予想
薬剤師は今後働き方が大きく変わっていくと見られています。
その理由は、人口の減少と薬剤師数の増加、高齢化社会と地域包括ケアシステムの推進などが関連しているからです。
例えば、これまでは調剤業務といった対物業務が主な薬剤師の業務であったところ、かかりつけ薬剤師の業務や非薬剤師(登録販売者やファーマシーテクニシャン)との連携・マネジメントなど、対人業務が重要になります。
薬剤師としてキャリアを積みたいと考えている方は、薬剤師の今後の働き方の動向は把握しておきましょう。
薬剤師に今後求められること
薬剤師には今後、対人業務が強く求められるようになります。
その理由は、上記の通り薬剤師の働き方が大きく変化してきているからです。
かかりつけ薬剤師のほか、在宅医療やセルフメディケーションにも対応をしていく必要があるでしょう。
社会構造が大きく変化していく中で、薬剤師に今後求められることも変化していくことを理解しておきましょう。
薬剤師として自分ができていること
薬剤師として自分の能力を客観的に把握することは、今後の薬剤師キャリアにおいて非常に重要です。
今できること、今後必要なこと、それぞれを理解して、キャリアを積むためにこれからの行動方針を決めていく必要があるからです。
例えば、専門性であれば認定薬剤師の取得、対人スキルであれば患者や社内のコミュニケーションを増やすなど、意識的な行動でキャリアを変えることができます。
転職や就職においても、薬剤師としてできることを把握しておくことは重要です。
薬剤師として自分ができていないこと
薬剤師としてできることに加え、できていないことを知ることも重要です。
なぜなら、自分ができないないことを理解することで、今後の行動方針を決めていく際の取捨選択がしやすくなるからです。
例えば、できないことを、①苦手だけどやればできること、②苦手でどうしてもやりたくないこと、に分けることで優先順位をつけられるようになります。
また、できていないことを把握することで、今後の薬剤師として自分に必要なことも見えてきます。
そのため、薬剤師として自分ができていないことも、再度見直しておくと良いでしょう。
薬剤師として今後生き残るために必要なこと
これは働き方が変わる薬剤師にとっては、知らないと致命的です。
今後生き残るために必要なことを積み上げていった薬剤師と、これを知らずに今まで通りの働き方をしていた薬剤師とでは、将来に大きな差がでます。
今後の薬剤師には、専門性・マネジメント能力・コミュニケーション能力、これらを活かした経験も必要になります。
具体的にどのように身に着けていくかは、この記事の後半で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
薬剤師としての今後のキャリアの選択肢
薬剤師の今後のキャリアの選択肢は豊富です。
これは薬剤師の役割が大きく拡大していく中で、薬剤師の需要も幅広くなっていきていることが要因としてあげられます。
調剤薬局やドラッグストアのほか、薬事職やメディカルライター、品質管理、診療所、介護保険施設、学校職員など、多くのキャリアの選択肢があります。
これらの選択肢を持てるよう行動することで、自分にあった薬剤師キャリアを積めるようになっていきます。
ぜひ、興味のある職種について理解を深めていきましょう。
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薬剤師の今後の需要と飽和すると言われる理由
現在、日本の薬剤師数は世界的にも高い水準を誇っています。
2020年時点で薬剤師数は321,982人で、人口10万人当たりの平均薬剤師数は269.2人です。
これは、WHOの統計と比較しても高い水準です。
しかし、求人倍率は減少傾向にあることが懸念されています。
2020年3月の有効求人倍率は4.40倍でしたが、2021年2月には2.90倍まで下がりました。
これは、薬剤師市場における飽和の一因とされています。
薬剤師は飽和している?実態とこれからの職場別需給状況薬剤師の現況
薬剤師市場は年々変化しており、求人倍率の低下やAI技術の進化、非薬剤師の就業などが影響しています。
これらが薬剤師の業務範囲の縮小や待遇低下につながっていると言われています。
有効求人倍率の低下
薬剤師の有効求人倍率は過去数年で低下しています。
2018年3月には5.35倍だったものの、2022年3月には2.03倍にまで減少しました。
この低下には地域や年齢によるばらつきも見られますが、売り手市場から買い手市場に変化しているという指摘もあります。
AIによる薬剤師業務の減少
近年、AIやICT技術の発達により、薬剤師業務の一部が自動化されることが増えています。
オンライン調剤やロボットによる調剤など、デジタルトランスフォーメーションが薬剤師業界にも浸透しているため、需要が飽和し、仕事の減少が懸念されています。
薬剤師の仕事はAIでなくなる|知っておきたいやるべきこと4選と有利な職場
薬剤師の仕事はAIでなくなる|知っておきたいやるべきこと4選と有利な職場ファーマシーテクニシャンによる薬剤師業務の代替
ファーマシーテクニシャンが薬剤師の業務を代替することが可能です。
コロナ禍において、ドラッグストアや一般企業では、薬剤師の配置が求められる場所が増加しています。
これに伴い、ファーマシーテクニシャン制度の導入も検討されており、現在の登録制度や職種にも変化が見られます。
また、ファーマシーテクニシャンは薬剤師と比例して倍率や資格取得の際の受験が楽になり、業務量も半分程度となっています。これにより、求人や薬剤師との連携が一層重要となります。
薬剤師数は都道府県別に状況が異なる
薬剤師数は都道府県別によって状況が異なります。
東京・神奈川・兵庫・大阪・広島・福岡といった一部の都市部では薬剤師の需要が飽和状態にある一方で、地方やその他の地域では薬剤師不足が深刻な課題となっています。
厚生省のデータでも人口10万人あたりの薬剤師数は全国平均を下回る道府県は35に上ります。
この人材偏在の現状を解消するために、地方の病院や地域医療において薬剤師の確保が課題となっており、早急な対応が求められています。
セルフメディケーションによる薬剤師の需要
セルフメディケーションが広まることにより、薬剤師の需要は高まっています。
健康に対する意識が高まる中で、軽度の風邪やケガなどの自己治療に対し、薬剤師は適切な薬の提案や副作用の対処方法をアドバイスする重要な役割を担っています。
ドラッグストア等で働く薬剤師は、患者の体調や体質に合わせた薬の選択や服用方法を提供し、患者の健康管理をサポートすることが求められています。
【職場別】薬剤師の今後
薬剤師が増加し続ける一方で、今後の薬剤師の需要はどのような状況になるのか。
厚生省の調査では、全体としては2045年には最大12.6万人の薬剤師が供給過剰になると推計されています。
ただし、薬剤師の今後の需給関係は業種別に違いがあるため、今後の薬剤師のキャリアを検討するには、各業種の状況を知ることも重要です。
専門性が求められる分野や新たな業務領域へのシフトが進展し、更に薬剤師の仕事の幅が広がることが予想されるため、確認しておきましょう。
参考:薬剤師の需給推計(案)
薬局に従事する薬剤師数
薬局に従事する全国の薬剤師数は、厚生省のデータを見ると2030年(令和12年)までは増加し、その後は徐々に減少していきます。
これは、全国で薬剤師の需要が2030年以降は減少していくということであり、今後も薬局で働く薬剤師数が増加していけば供給過剰となります。
また、最近ではAIやITツールの導入により、業務効率が向上し薬剤師の需要が減少する可能性もあります。
参考:薬剤師の需給推計(案)
病院に従事する薬剤師数
病院に従事する薬剤師数は、地域医療構想の2025年度見込みに基づく病床数の減少に伴い、減少していくと推計されています。
厚生省のデータでは、2031年(令和13年)までは急激な減少を見せ、その後の需要は一定。
2045年時点で現在より6,000人少ない、約4.7万人の薬剤師数になると見込まれています。
ただし、がん治療や感染症対策など多様な分野での専門スキルが求められる薬剤師の役割が重要視されているため、規模や診療科目が多様な病院では雇用機会が増える可能性もあります。
参考:薬剤師の需給推計(案)
診療所に従事する薬剤師数
診療所の薬剤師数は、今後も一定で大きな増加も減少もないと予想されています。
それは、過去2014年~2018年までの5年間で、診療所に従事する薬剤師数は一定であったためです。
また、地域医療においても診療所の薬剤師は重要なポジションを担っており、需要は一定数あると見られています。
ただし、診療所の求人数は多くなく、それに応じて薬剤師数も比較的少ないです。
診療所で働く薬剤師は、全国的にみても全体の人数に占める割合は比較的少ないと言えます。
製薬会社に従事する薬剤師数
製薬会社の薬剤師数は今後も一定であると予想されています。
これは、過去2000年~2018年までで製薬会社の薬剤師人数推移が28,584人→29,009人と、ほぼ一定であったため、今後も同程度で推移すると考えられるためです。
また、製薬会社においても、薬剤師は重要な役割を担っており、製品の品質管理や安全性評価、情報提供などの幅広いスキルが求められています。
製薬会社の薬剤師は年収も高くキャリアも継続しやすいため、人気の職種ですが、製薬会社で働く薬剤師数も全体に対する割合としては少なく、限定的な求人数となることが多いです。
薬剤師は飽和しているのか?需給の実態について詳しく解説した記事も参考にしてみてください。
薬剤師は飽和している?実態とこれからの職場別需給状況薬剤師の今後の環境
薬剤師の今後のキャリアは多種多様です。
正社員やパート、派遣、フリーランスといった柔軟な雇用形態が増えており、病院や調剤薬局、ドラッグストア、製薬業界など、より幅広い選択肢が用意されています。
最近ではキャリアチェンジや薬剤師自身の意識が大切で、経験や知識を活かし末永く希望に合った形で業種や職種を選択することが重要です。
登録販売者の需要は増加する
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ドラッグストアやスーパーなどでの一般医薬品(OTC)販売をサポートする登録販売者の需要が増加しています。
最近では受験者数が前年比で大幅に増加し、合格者数も多くなっていますが、一部自治体では試験が延期や県内集中開催となり、本来の目的である薬剤師の負担軽減にはまだ課題が残っています。
6年制薬学教育施行による変化
6年制薬学教育の実施により、薬剤師の専門知識や技術が向上し、コミュニケーション能力や人間性も育成された個人が誕生しています。
今後の医療環境に適応するため、厚生労働省や文部科学省では実務経験の必要性を検討し、修業年限の延長や専門教育の概要などが提案されています。
健康サポート薬局制度のスタート
健康サポート薬局制度がスタートし、かかりつけ薬剤師の役割が重視されるようになりました。
薬剤師は患者の服薬管理や健康状況のサポートを行い、地域の健康を支える重要な存在となっています。
地域密着型、高度医学管理型へと機能分化
今後の薬剤師業界では地域密着型や高度医学管理型など、さまざまな機能分化が進むことが予想されています。
それぞれの職場で独自の強みや役割を持ち、地域に密着した対応や高度な医薬品管理が求められるようになります。
薬剤師に今後期待されること
今後薬剤師には、医療の発展や高齢化社会などの状況を受け、専門知識や技術を活かした患者へのサポートがますます重要となります。
具体的な期待される役割は、かかりつけ薬剤師としての対応、在宅医療に対応できる薬剤師、セルフメディケーション推進をサポートできる薬剤師などが挙げられます。
これらの役割を果たすことで、薬剤師は地域医療や患者の健康管理に貢献し、その需要が高まることが予測されます。
かかりつけ薬剤師
かかりつけ薬剤師は、患者に対してコミュニケーションを重視し、医師と連携して服薬指導や相談対応を行います。
専門知識を活かし、患者の症状や薬物療法への理解を深め、適切なアドバイスを提供することが求められます。
また、ITやAI技術の導入により、調剤や在庫管理などの業務効率化が進み、かかりつけ薬剤師の役割が今後ますます重要となるでしょう。
在宅医療に対応できる薬剤師
高齢化が進む現代では、在宅医療のニーズが増加しています。
在宅医療に対応できる薬剤師は、患者の自宅での服薬状況や身体機能の衰えを考慮し、適切な指導や提案を行うスキルが求められます。
また、患者や家族が置かれた困難な状況を想定し、サポートすることが大切です。薬剤師が在宅医療で活躍することで、患者の健康状態の維持や改善に貢献できます。
セルフメディケーション推進をサポートできる薬剤師
セルフメディケーション推進のために、薬剤師が市販薬の適切な使い方や副作用に関するアドバイスを提供する役割が重要です。
風邪や軽度の不調に対して、適切な薬を提案し、患者の健康維持や症状改善をサポートします。
薬剤師がセルフメディケーションの推進に取り組むことで、患者の生活の質の向上や健康寿命の延伸に貢献することが期待されます。
薬剤師として今後も生き残るための5つのポイント
今後も薬剤師として生き残るためには、以下の5つのポイントを意識することが重要です。
- 専門性を磨く
- マネジメント能力を磨く
- コミュニケーション能力を磨く
- 知識・経験を積み上げる
- グローバル化を見据える
これらを意識することで、今後も期待される薬剤師となれるため、ぜひ取り組んでみてください。
ポイントの具体的な方法については、以下にて解説します。
「認定薬剤師」の取得(専門性を磨く)
認定薬剤師とは、薬剤師としての専門性を磨いて、ニーズの高いスキルや知識を獲得するために取得する資格です。
この資格を持つことで、患者への質の高い指導やサポートが可能となり、需要がある専門分野でのニーズが期待できます。
認定薬剤師になることで、向上心を持った薬剤師として採用されやすくなりますし、さらに専門性の高い分野で活躍するチャンスも増えるでしょう。
「管理薬剤師」の取得(マネジメント能力を磨く)
管理薬剤師は、薬剤師としてのマネジメント能力を磨くために取得する資格です。
この資格を持つことで、薬剤師としての安全で適切な医薬品の使用や調剤業務を監督・指導し、患者の安全を確保する役割を担います。
取得には一定の経験が必要で、厚生労働省が定める要件を満たすことが求められます。
管理薬剤師になることで、医療機関や薬局における一部の業務が担当できるようになり、キャリアアップが期待できます。
「かかりつけ薬剤師」のスキル習得(コミュニケーション能力を磨く)
かかりつけ薬剤師とは、患者の服薬指導や健康相談を担当し、患者と信頼関係を築くためにコミュニケーション能力を磨いた薬剤師です。
このスキルを習得することで、患者のニーズに応じた調剤業務や対人対応ができるようになります。
かかりつけ薬剤師として活躍することで、転職市場においても評価されるほか、柔軟に業務をこなすことができるようになります。
「在宅医療」への対応(知識・経験を積み上げる)
今後の高齢化社会において、在宅医療への対応力が求められる薬剤師が増えることが予想されます。
在宅医療に対応できる薬剤師は、地域に密着したサポートができるため、患者および医療機関からの評価が高まります。
在宅医療に対応するためには、薬剤師としてのスキルや知識のほか、患者のケアや患者とのコミュニケーションが大切です。
そのため、経験を積み上げることで在宅医療分野で求人に応募する際のアピールポイントにもなります。
ただし、在宅薬剤師をやりたくないと考える薬剤師も多いことから、その業務内容も詳しく理解しておきましょう。
薬剤師が在宅をやりたくない7つの理由!大変できついときはどうする?「外国語」の習得(グローバル化を見据える)
グローバル化が進む中、外国語を習得した薬剤師は、観光地や都市部で働く際に重宝されます。
特に英語は、日本で働く薬剤師にとって必要なスキルの一つとなっています。
外国語を習得することで、多様な患者とコミュニケーションができるようになり、薬剤師としての価値が上がります。
また、製薬会社や治験業界などで働く薬剤師は、外国語の資料を読み込むケースもあるため、外国語の習得は転職にも有利になります。
今後のキャリアに活かすためにも、外国語を学ぶことをおすすめします。
まとめ|薬剤師は今後は業務の変化に対応していく必要がある
この記事で紹介したスキルや資格を身に着けることで、薬剤師としての価値を高め、変化する業務に対応できるようになります。
ぜひ、これらのスキルや資格を目指して、自分と向き合いながら成長していきましょう。次のアクションに移る前に、今一度自分のキャリアを見つめ直し、何を学ぶべきか考えてみてください。