薬剤師は長時間労働や職場の人間関係に悩む場合があります。将来のキャリアに不安を感じる場合も珍しくありません。女性薬剤師の場合、ライフステージの変化に合わせた働き方をしたい人も多くいます。この記事では、薬剤師がハローワークで転職活動をするときのメリットやデメリット、利用方法を解説します。
記事を読めば、効果的なハローワークの活用が可能です。ライフスタイルに合った求人を探すポイントを把握しましょう。
転職時にハローワークを利用するメリット

転職時にハローワークを利用するメリットは、以下のとおりです。
- 無料で求人検索や職業相談ができる
- 地元密着の求人が豊富にある
- 職業訓練や資格取得支援制度を活用できる
無料で求人検索や職業相談ができる
ハローワークでは、求人検索や職業相談が無料で使えます。ハローワークで無料になるサービスは、以下のとおりです。
- ハローワークインターネットサービス
- 薬剤師向け専門求人
- 個別キャリアカウンセリング
- 求人紹介状の発行
- 異業種への転職相談
- 企業との給与交渉などのアドバイス
ハローワークは、年収や残業、休日、子育てサポートなど、求職者の悩みや希望に合わせた求人探しを助けてくれます。転職回数や年齢に関係なく、何度でも利用可能です。ハローワークは、気軽に相談できるため、転職の心理的な負担も減らせます。
地元密着の求人が豊富にある

ハローワークでは、大手転職サイトにはない地元の中小企業の求人が見つかります。地域に根ざした求人は、通勤時間の短縮につながります。地域の特性を活かした働き方も可能です。薬剤師の場合、地域の調剤薬局やドラッグストアなどを探すうえでハローワークが便利です。
ハローワークは、短時間勤務や特定曜日のみ、地域の医療連携に特化した業務など、特殊な求人も見つかります。地域の雇用ニーズに合わせた求人や、地域特有の働き方や条件の求人も集まっています。UIターン就職を考えている場合も、移住先のハローワークで求人検索が可能です。
職業訓練や資格取得支援制度を活用できる
ハローワークでは、薬剤師のキャリアアップやスキル拡大を支援する、さまざまな公的制度を利用できます。ハローワークでは、以下の職業訓練や資格取得支援制度が用意されています。
- 無料の職業訓練プログラム
- 公共職業訓練(ハロートレーニング)
- 教育訓練給付金制度
- 薬剤師関連の資格取得サポート
- 職業訓練受講給付金制度
- キャリアコンサルタントによる個別相談
- 在宅で学べる訓練コース(eラーニングなど)
- 教育訓練終了後の就職支援
薬剤師の知識や経験を活かせる分野への転職を考えている場合、関連する資格を取得すると、キャリアの幅が広がります。ハローワークの教育訓練給付金制度を使えば、費用を抑えて新たな資格の取得が可能です。資格取得費用の最大70%が支給される制度もあります。
地域特化の職業訓練プログラムが提供されている場合もあるため、近くのハローワークで確認してください。
転職時にハローワークを利用するデメリット

転職時にハローワークを利用するデメリットは、以下のとおりです。
- 賃金や労働条件が不透明な求人もある
- 情報の更新が遅い場合がある
- 人気職種や業種の求人が限られる
賃金や労働条件が不透明な求人もある
ハローワークの求人には、実際の労働条件と異なる内容が記載されている場合があります。ハローワークで求人を探すときは、以下のケースに注意しましょう。
- 求人票の賃金が実際より低い
- 残業代が含まれる
- 基本給と他の手当の内訳が明確でない
- 手取り額がわかりにくい
- 繁忙期には土日の出勤がある
- 業務内容や責任が明確でない
- 試用期間中は条件が異なる
- 福利厚生や育児支援制度が利用しにくい
- 職場の雰囲気や人間関係がわからない
情報の更新が遅い場合がある

ハローワークの求人は、民間の転職サイトと比べて更新が遅れがちです。求人の更新が遅いと、採用が終わっている求人が掲載されていたり、勤務条件や給与の変更が反映されていなかったりします。ハローワークのシステムの関係で、情報更新に時間がかかる場合もあります。
最新の求人を見つけるには、定期的にハローワークの求人を検索するか、窓口で相談員に最新情報を尋ねてください。子育てサポートなどの重要な条件は、掲載されている情報だけでなく、実態も確認しましょう。
人気職種や業種の求人が限られる
薬剤師として、専門性の高いポジションや好条件の求人をハローワークで見つけるのは困難です。ハローワークでは以下の求人が不足しがちです。
- 調剤薬局チェーンの管理薬剤師
- 製薬会社のMR職やDI職
- 研究職や開発職
- 短時間・時短勤務
- 病院薬剤師
- 子育て支援が充実した職場
- 企業の学術職・PV職
- 在宅医療に特化した薬局
- 年収600万円以上
人気職種や専門性の高い求人は、ハローワークよりも薬剤師専門の転職サイトや転職エージェントの方が豊富です。子育てと両立できる環境や、キャリアアップにつながる専門職の求人は、専門のエージェントの方が効率的に探せます。自分の希望に合った職場を見つけるには、複数のサービスを併用しましょう。
» 転職エージェントとは?仕組み・転職サイトとの違い・活用法を薬剤師向けに解説
ハローワークで転職を進める流れ

ハローワークでの転職活動を進める流れは、以下のとおりです。
- 求職申込み手続きをする
- 職業相談を受ける
- 求人を検索する
- 窓口で求人に応募する
» 薬剤師が就職先を選ぶときのポイントを解説!職場別の平均年収とは?
求職申込み手続きをする
求職申込み手続きの方法は、以下の2種類です。
- 「ハローワークインターネットサービス」に登録する
- オンラインで手続きできるため、忙しい薬剤師でも時間を気にせずに申し込めます。
- 最寄りのハローワークに直接訪問する
- 個人情報や本人確認書類、雇用保険被保険者証を持参しましょう。
手続きが完了すると「ハローワークカード」が発行されます。ハローワークカードは、次回以降のハローワーク利用時も使うため、大切に保管してください。求人に申し込むときは、薬剤師資格を活かせる職種や希望する労働条件を具体的に伝えましょう。
薬剤師としての経験やスキル、資格情報をしっかり伝えると、希望に合った求人を効率よく探せます。
職業相談を受ける

ハローワークの職業相談では、専門の相談員が、求職者の状況や希望に合わせたアドバイスを無料でします。職業相談では、現在の職場での悩みや薬剤師としての経験やスキル、重視したい条件、他職種への興味の有無を伝えましょう。相談員は求職者の話を聞き、労働市場の現状や求人の客観的なアドバイスをします。
定期的に職業相談を受けると、継続的なサポートを受けられる点もメリットです。面接後のフィードバックや次の行動を相談できるため、転職活動の不安を減らせます。興味がある求人が見つかった場合は、紹介状を発行してもらえるため、スムーズに応募できます。
ハローワークの職業相談は予約制の場合もあるため、事前に利用方法を確認してください。
求人を検索する
ハローワークでは、パソコンやスマートフォンアプリを利用して、希望条件に合った求人を効率よく探せます。以下の条件を設定して、絞り込みが可能です。
- 「薬剤師」などの職種キーワード
- 希望する勤務地
- 給与条件
- 勤務時間や休日数
- 子育て支援制度の有無
「ハローワークインターネットサービス」を使えば、自宅でも求人検索ができます。忙しい人や子育て中の人でも、空き時間に効率よく求人を探せます。気になる求人は、お気に入り登録やメモ機能で保存しましょう。検索結果は印刷して持ち帰ることも可能です。
「マイページ」機能を使うと、検索条件の保存や履歴確認ができて、継続的に効率よく求人を確認できます。求人票ではわからない情報は、相談員に教えてもらえる場合があります。複数の求人を比較し、自分に合った職場を見つけましょう。検索方法がわからない場合は、ハローワークの相談員に質問してください。
窓口で求人に応募する
ハローワークで気になる求人を見つけたら、窓口で応募手続きをしましょう。応募手続きの流れは以下のとおりです。
- 応募したい求人票の番号を控えておく
- 相談窓口に行き、求人番号を伝える
- 担当者が企業に連絡する
- 紹介状が発行される
- 履歴書や職務経歴書を送る
応募書類は、自分で送る場合とハローワークが代行する場合があるため、窓口で確認してください。紹介状が発行された後は、企業から面接日程の連絡が来るのを待ちます。面接結果は企業から直接連絡がある場合と、ハローワーク経由で知らされる場合があります。
応募状況は、ハローワークのマイページで確認が可能です。複数の求人に応募している場合でも、進捗状況を簡単に把握できます。
ハローワークで受けられる転職支援サービス

ハローワークの転職支援サービスは、以下のとおりです。
- 履歴書・職務経歴書の作成サポート
- 職業訓練
- 面接練習
履歴書・職務経歴書の作成サポート
ハローワークでは、履歴書と職務経歴書の作成を無料でサポートします。効果的なアピールポイントの整理方法など、専門スタッフからのアドバイスを無料で受けられます。書類作成用の機器も無料で使え、記入例や見本の閲覧も可能です。履歴書と職務経歴書の作成後は、添削サービスを受けましょう。
薬剤師から他業種への転職を考えている場合、スキルの伝え方のアドバイスが受けられます。子育てとの両立希望など、条件面の希望の書き方も相談可能です。転職回数が多い場合や、職歴の空白期間がある場合の書き方も、専門的なアドバイスを受けられます。
志望動機や自己PRは重要なため、ハローワークで効果的な書き方を教わりましょう。強みを最大限に活かした魅力的な書き方がわかります。
職業訓練
ハローワークでは、新しいスキルを身に付けたい薬剤師向けに、公共職業訓練(ハロートレーニング)を行っています。ハロートレーニングは無料か低額で受講が可能です。公共職業訓練は、医療事務や医薬品開発関連など、薬剤師の知識を活かせる専門分野のコースが用意されています。
働きながらスキルアップを目指す人は、夜間・休日コースやeラーニングでも受講できます。職業訓練の期間も短期から長期までさまざまです。訓練期間中、雇用保険の基本手当は継続して受給できます。受給していない人も、職業訓練受講給付金制度の利用が可能です。
子育て中の女性薬剤師には、求職者支援訓練に託児サービス付きコースもあるため、育児と両立できます。最近ではIT・デジタルスキル習得コースも増えており、将来性のあるスキルも身に付けられます。訓練コース選びに迷う場合、キャリアコンサルタントのコース選択サポートを受けましょう。
» 退職後も安心!薬剤師の失業保険のもらい方と給付開始までのステップを徹底解説!
面接練習

ハローワークで面接練習をすれば、以下の点がわかります。
- 自分の話し方や姿勢の課題
- 転職理由や志望動機の伝え方
- 専門性のアピール方法
- 想定外の質問への対応
- 第一印象向上のポイント
ハローワークでは、実際の面接に近い環境で練習が可能です。専門の相談員からのフィードバックを受けると、自分では気づけない強みや改善点がわかります。面接練習では個別面接だけでなく、グループ面接などさまざまな形式の対策が可能です。面接後のお礼状の書き方も教えてくれます。
» 【薬剤師の転職活動】長所が思いつかない理由と探し方
ハローワークでブラック求人を避けるためのポイント

ハローワークでブラック求人を避けるためのポイントは、以下のとおりです。
- 募集が頻繁に長く出ている求人は避ける
- 条件は相談員や面接時に再度確認する
- 企業の情報をしっかり調べる
募集が頻繁に長く出ている求人は避ける
同じ求人が長期間掲載されていたり、頻繁に再掲載されていたりする場合は注意しましょう。離職率が高く、労働環境に問題がある可能性が考えられます。「急募」や「即日勤務可」などの表記が繰り返し出ている企業は、人手不足が続いている可能性が高くなります。
長期間掲載されている求人を見つけたら、ハローワークの相談員に応募状況や掲載履歴を質問しましょう。多くの場合、相談員は過去の掲載履歴や応募状況を把握しています。面接では、募集ポジションが空いた理由や、前任者の退職理由を率直に質問してください。
回答が曖昧だったり、質問をはぐらかされたりする場合は注意しましょう。職場環境は薬剤師としてのキャリアや生活に影響します。長期的な視点で自分に合った職場を選ぶためには、募集状況の確認は欠かせません。
条件は相談員や面接時に再度確認する

求人票に記載されている条件と、実際の労働環境が異なる場合があります。条件や求人企業の定着率、評判はハローワークの相談員に聞きましょう。企業の面接では、以下の点を質問してください。
- 残業時間の実態
- 休日出勤の頻度や代休取得
- 給与体系や昇給制度
- 子育て支援制度
- 業務範囲と責任
- 研修制度
- 配属先や勤務地
- 契約形態
- 前任者の退職理由
ブラック求人は、求人票だけでは判断できません。面接で企業の実態を見極めてください。
企業の情報をしっかり調べる
転職先の企業の表面的な求人だけでなく、実態を把握すると、転職失敗のリスクを減らせます。以下の方法で企業の情報を調べましょう。
- 公式サイトを確認する
- 企業理念や事業内容を確認し、求人票の情報と矛盾がないか調べてください。理念と実際の行動にギャップがある場合は、注意が必要です。
- 第三者からの評価を調べる
- 転職会議やOpenWorkなどの口コミサイト、SNSでの企業評判や投稿内容が役立ちます。過去の労働問題や訴訟のニュース記事も確認しましょう。口コミサイトでは、残業実態や休日取得状況、退職理由などのネガティブな情報も確認します。
- 企業の財務状況や業績を確認する
- 経営が安定していなければ、良い労働条件も長続きしません。
- 転職先企業で働いていた人の話を聞く
- 薬剤師のコミュニティや知人から、リアルな職場環境が聞ければ参考になります。
- 同業他社の労働条件と比較する
- 同業他社と比べて条件が極端に良い場合は、注意が必要です。「高待遇」「残業なし」「完全週休二日」などの好条件が並びすぎている求人の場合、実態が伴っていない可能性があります。
まとめ

薬剤師として転職を考える際、ハローワークは無料で多くのサポートが受けられます。ハローワークは地元密着の求人が豊富で、職業相談から応募までワンストップで進められる点がメリットです。情報更新の遅れや条件が不透明な求人があるデメリットも、理解しましょう。
ハローワークを上手に活用するには、求職申込みから応募までの流れの把握が大切です。履歴書・職務経歴書作成サポートや面接練習などの支援サービスは、積極的に利用しましょう。ハローワークで頻繁に募集がある求人には注意し、条件をしっかり確認してください。
薬剤師資格を持つ人は、ハローワークの相談員に伝えると、効率的に転職活動を進められます。年収や残業、休日、子育てサポートなど、優先事項を明確にしてハローワークで相談すると、満足度の高い転職ができます。
» 薬剤師がキャリアチェンジを成功させるコツを紹介!

