退職後も安心!薬剤師の失業保険のもらい方と給付開始までのステップを徹底解説!

  • 今の職場を辞めたいけれど、転職活動中の生活費が不安
  • 失業保険がもらえる条件がよくわからない
  • 失業保険の手続きが複雑そうで、何から始めたら良いか困っている

キャリアチェンジを考えても、退職後の生活が不安で一歩を踏み出せない薬剤師は多いのではないでしょうか。公的な支援制度「失業保険」を正しく理解することは、安心して転職活動を始めるうえで欠かせません。

この記事では失業保険のもらい方や条件、受け取れる金額の計算方法を詳しく解説します。記事を読めば失業保険のもらい方が正しく理解でき、安心して次のキャリアに進む準備ができます。

失業保険は雇用保険の加入期間などの条件を満たせば、失業中に経済的な支援を受けられる制度です。退職後に必要書類をそろえてハローワークで失業保険の手続きをすれば、経済的な不安なく求職活動に専念できます。

失業保険とは失業期間中に経済的な支援をしてくれる制度

失業保険は退職後から再就職までの期間の生活を経済的に支援する公的制度です。失業保険の正式名称は「雇用保険の基本手当」で、在職中に納めた雇用保険料を財源としています。

転職活動中の収入不安を軽減し、求職活動やキャリアプランの検討に集中するために役立つ制度が失業保険です。失業保険は労働者のための重要な権利ですが、受給には一定の要件を満たす必要があります。

薬剤師が失業保険を受け取る条件

薬剤師が失業保険を受け取る条件は以下のとおりです。

  • 失業状態にある
  • 雇用保険に12か月以上加入している
  • 求職活動をしている

失業状態にある

失業保険を受け取るにはハローワークに失業状態を認めてもらう必要があります。失業状態と認められるためには以下の条件をすべて満たしていなければいけません。

  • 働く意思と能力がある
  • 積極的に求職活動を行っている
  • すぐに働ける健康状態にある
  • 学業や家事に専念していない
  • 転職先が未定である

病気や出産ですぐに働けない場合や、しばらく休養するつもりの場合は失業保険の対象外となるため注意しましょう。

雇用保険に12か月以上加入している

退職する日までの2年間に雇用保険に入っていた期間が合計で12か月以上あることも、失業保険の受給条件の一つです。失業保険は一定期間働いて保険料を納めてきた人を支えるための仕組みだからです。

雇用保険の加入期間を計算する際は、給料の支払対象となった日数が11日以上ある月を「1か月」と数えます。今の職場で12か月に満たなくても前職から1年以内に転職していれば、前職での加入期間と合算が可能です。雇用保険の加入期間には、週20時間以上勤務などの条件を満たしたパートやアルバイトも含まれます。

会社の倒産や解雇、パワハラのような理由で退職する場合は、雇用保険の加入期間の条件が短縮されます。労働者側に責任がない退職理由の場合、退職する日までの1年間に合計6か月以上加入していれば失業保険の受給が可能です。

求職活動をしている

失業保険を受け取るには積極的に仕事を探しているという「求職活動の実績」も求められます。求職活動として認められる活動は以下のとおりです。

  • 求人への応募
  • 職業相談・紹介の利用
  • 説明会への参加
  • セミナー・講習への参加
  • 資格試験の受験

失業認定日に求職活動をハローワークに報告することが、仕事を探している意思の証明となります。

「求職活動の実績」は、ハローワークでの相談や求人応募に限定されません。転職エージェントのカウンセリングや求人紹介も含まれるため、まずは転職エージェントに相談しましょう。
» 転職エージェントとは?仕組み・転職サイトとの違い・活用法を薬剤師向けに解説

薬剤師の失業保険のもらい方

薬剤師の失業保険のもらい方を以下の4つのステップに分けて解説します。

  1. 必要書類を用意する
  2. ハローワークで給付の申し込みをする
  3. 雇用保険説明会に参加する
  4. 失業認定申告書を提出する

必要書類を用意する

失業保険の給付を申し込む前にまずは書類をそろえる必要があります。必要書類には勤めていた会社から退職後に郵送される書類もあるため、すべて手元にあるか確認しましょう。失業保険の給付申し込み手続きで必要となる書類は以下のとおりです。

  • マイナンバーカード、通知カード、個人番号が書かれた住民票のいずれか1点
  • 運転免許証などの顔写真付き本人確認書類1点(ない場合は保険証や住民票の写しなど2点)
  • 最近撮影した証明写真2枚(縦3.0cm×横2.5cm)
  • 印鑑
  • 本人名義の普通預金通帳またはキャッシュカード

必要書類が1つでも足りないと、失業保険の給付申し込みの手続きが進められないため注意が必要です。

ハローワークで給付の申し込みをする

必要書類がそろったら、自分の住所を管轄するハローワークで失業保険の給付申し込み手続きを行います。ハローワークでは提出書類と職員との面談内容をもとに、失業保険受給の可否が決定されます。ハローワークでの申し込み手続きの具体的な流れは以下のとおりです。

  1. 持参した必要書類を提出し、給付の申し込みをする
  2. 職員と面談をする
  3. 書類と面談内容から受給資格が決定する
  4. 受給資格が決まると「雇用保険受給資格者証」が渡される
  5. 雇用保険説明会の日時が案内される

雇用保険説明会に参加する

ハローワークで失業保険の給付申し込みをすると、1〜3週間後に雇用保険説明会の日時が指定されます。失業保険を受け取るために雇用保険説明会は必ず出席しなければなりません。

雇用保険説明会では今後の手続きや求職活動に関する説明を聞き「失業認定申告書」や「失業認定日のお知らせ」を受け取ります。所要時間は1時間半~2時間程度で、服装は普段着で問題ありません。雇用保険説明会では給付申し込みの際に受け取った「雇用保険受給資格者のしおり」をもとに説明が進むため、忘れずに持参しましょう。

失業認定申告書を提出する

雇用保険説明会で受け取る「失業認定申告書」は現在失業状態にあり、求職の意思があることを証明するための書類です。失業認定申告書は4週間に1度、指定された「失業認定日」にハローワークへ提出しなければいけません。

失業認定申告書を提出する際は、前回の認定日から今回の認定日前日までの期間に行った求職活動の実績を記入します。認定日前日までの期間にアルバイトやパートで収入を得た場合は、働いた日数や収入額を正直に申告する義務があります。

失業認定日には失業認定申告書と一緒に「雇用保険受給資格者証」も提出するため、忘れずに持参してください。提出した申告書の内容により失業状態が認定され、後日失業保険の基本手当が振り込まれます。

薬剤師が失業保険で受け取れる金額の計算方法

薬剤師が失業保険で受け取れる金額の計算方法について、以下に分けて解説します。

  • 失業保険の金額の計算方法
  • 失業保険の受給金額のシミュレーション例

失業保険の金額の計算方法

失業保険で受け取れる金額は退職する直前の給料をもとに計算します。初めに、受け取れる失業保険の1日当たりの額として「基本手当日額」を算出する必要があります。

基本手当日額の基準は1日当たりの平均給料の「賃金日額」です。賃金日額は退職する直前6か月間の給料の合計を180で割って求めます。給料には基本給や残業代、各種手当が含まれますが、ボーナスは含まれません。賃金日額が算出できたら、決められた給付率(50〜80%)をかけて、1日当たりに受給できる失業保険の「基本手当日額」を求めます。

最後に基本手当日額に失業保険が給付される日数(所定給付日数)をかけると、受け取れる失業保険の総額がわかります。失業保険の給付率は年齢や賃金日額によって変わり、賃金が低い人ほど高い率が適用される仕組みです。労働者が安心して再就職活動ができるよう、支援が必要な人ほど失業保険が手厚く支給されます。

失業保険の受給金額のシミュレーション例

自己都合で退職した薬剤師をモデルケースにして、受け取れる失業保険の金額をシミュレーションしてみましょう。

28歳・勤続5年・年収450万円(月収30万円)の場合は、以下の計算が適用されます。

  • 1日当たりの支給額(基本手当日額):約5,800円
  • 給付日数:90日
  • 受給総額の目安:約52万円

35歳・勤続12年・年収600万円(月収40万円)の場合は以下のとおりです。

  • 1日当たりの支給額(基本手当日額):約6,667円
  • 給付日数:120日
  • 受給総額の目安:約80万円

退職前の給与や勤続年数によって受給できる失業保険の金額や期間は変わります。自分の状況に近い薬剤師の例を参考に、転職活動中の生活費の計画を立てることがおすすめです。

薬剤師の失業保険の給付期間と開始時期

薬剤師の失業保険の給付期間と開始時期を以下のケースに分けて解説します。

  • 自己都合退職の場合
  • 会社都合退職の場合

自己都合退職の場合

自己都合で退職した場合は失業保険が振り込まれるまでに少し時間がかかります。ハローワークで失業保険の給付申し込み手続きを終えると、まず7日間の待期期間があります。自己都合退職では待期期間が終わった後に原則2か月間の給付制限期間が設けられることが一般的です。

失業保険が給付される日数も、雇用保険に加入していた期間によって以下のような違いがあります。

  • 加入期間10年未満:90日
  • 加入期間10年以上20年未満:120日
  • 加入期間20年以上:150日

会社都合退職の場合

会社都合で退職した場合は「特定受給資格者」に認定され、自己都合退職に比べて失業保険を早く、長く受け取れます。失業保険は自分の意思に反して職を失った人の生活をより手厚くサポートする仕組みとなっているためです。会社都合とみなされるケースは以下のとおりです。

  • 会社の倒産や解雇
  • 給与の未払い
  • ハラスメント
  • 心身に影響が出るほどの長時間労働

自己都合による退職の場合は失業保険に2か月の給付制限がありますが、特定受給資格者にはありません。年齢や雇用保険の加入期間に応じた給付期間も、特定受給資格者は自己都合の退職よりも長くなります。例えば、30代で5年以上10年未満の勤務なら通常の給付期間は120日ですが、特定受給資格者には180日支給される場合があります。

薬剤師の失業保険のもらい方に関する3つの注意点

薬剤師の失業保険のもらい方に関する注意点として、以下の3点を解説します。

  • 雇用保険の加入期間がリセットされる
  • アルバイトやパートに制限がある
  • 空白期間が生まれる

雇用保険の加入期間がリセットされる

失業保険を受け取ると雇用保険の加入期間がゼロにリセットされる点に注意が必要です。失業保険の給付は給付申し込み時点での加入期間を根拠に行われるため、一度給付を受けると権利を使い切ったことになります。転職後に再び失業保険を受給するには、新たに12か月以上雇用保険に加入し直さなければなりません。

転職してすぐに辞めてしまった場合、加入期間の条件を満たせず、失業保険を受け取れない可能性があります。一方、失業保険を受け取らず退職後1年以内に再就職した場合は、雇用保険の加入期間はリセットされずに次の職場に引き継がれます。

短期的な離職を繰り返す可能性がある場合は将来のセーフティネットを失うリスクを検討し、失業保険のもらい方を慎重に判断しましょう。

アルバイトやパートに制限がある

失業保険を受け取りながらアルバイトやパートをすることは可能ですが、制限がある点には注意が必要です。制限を意識せずに働いてしまうと、失業保険の給付が停止されたり、減額されたりする可能性があります。

失業保険の給付申し込み後、待期期間の7日間は収入の有無に関係なくアルバイトはできません。待期期間終了後にアルバイトやパートをする場合でも、労働時間に注意が必要です。1週間の労働時間が20時間以上になると「就職した」と判断され、失業保険の給付が止まります。

失業保険の受給中にアルバイトやパートをする場合は、失業認定申告書での申告を忘れないようにしましょう。アルバイトやパートで得た収入の申告をしていないと失業保険の不正受給とみなされます。失業保険の不正受給には支給額の全額返還や最大2倍の金額のペナルティが課される場合があるため、正直な申告が大切です。

空白期間が生まれる

失業保険を受給すると、職務経歴に空白期間が生まれる点にも注意が必要です。空白期間が長引くと採用担当者から働く意欲やスキルの低下の懸念があるとみなされ、転職活動で不利になる可能性があります。

面接では空白期間について質問されたときに「何をしていたか」を具体的に説明できるよう準備しておく必要があります。資格取得の勉強や自己分析、キャリアプランの見直しなど、将来のキャリアのために時間を有効活用していたことを面接官に伝えましょう。

計画的に転職活動を進め、空白期間をなるべく短くすることも失業保険の受給をマイナス要素にしないためのポイントです。

薬剤師の失業保険のもらい方に関するよくある質問

薬剤師の失業保険のもらい方に関する質問として、以下の3点に回答します。

  • 失業保険の受給中に転職が決まったときはどうなる?
  • 失業保険はいつ振り込まれる?
  • 失業保険を不正に受給した場合のペナルティは?

失業保険の受給中に転職が決まったときはどうなる?

失業保険の受給中に転職が決まった場合、転職先から受け取った「採用証明書」をハローワークへ提出して報告する必要があります。ハローワークへの手続き後、失業保険の給付は転職先への入社日の前日で終了します。

失業保険の給付日数が3分の1以上残っているなどの条件を満たす場合は「再就職手当」というお祝い金の受け取りが可能です。再就職手当は早期に再就職が決まった人への特別手当であり、失業保険の残りの日数が多いほど高額が受け取れます。

失業保険はいつ振り込まれる?

失業保険の初回の振り込みは退職理由によってタイミングが変わります。会社都合の退職ならハローワークでの手続きから約1か月後に受け取れますが、自己都合の場合は3~4か月かかることが一般的です。

2回目以降は4週間に1度の認定日に失業が認められると、失業保険が振り込まれます。振込日が土日祝日など金融機関の休業日にあたる場合は、前後の営業日に失業保険が振り込まれます。

失業保険を不正に受給した場合のペナルティは?

制度の公平性を保つために、失業保険の不正受給に対しては厳しいペナルティが定められています。具体的なペナルティの例は以下のとおりです。

  • 不正に受け取った失業保険は全額返還が求められる
  • 不正が発覚した日以降、一切の失業保険が受け取れなくなる
  • 受け取った金額の最大2倍にあたる金額の納付が求められる
  • 期限までに返還しない場合は延滞金や財産の差し押さえが生じる
  • 悪質な場合は詐欺罪として刑事告発される

軽い気持ちで失業保険の不正受給をした結果、将来を大きく左右する事態に発展する可能性もあります。いかなる理由でも失業保険の不正受給はやめましょう。

薬剤師の失業保険のもらい方を理解して新しいキャリアの準備を始めよう

失業保険は退職後の経済的不安を軽減し、次のキャリアへ進むための準備期間を支える重要な制度です。失業保険のもらい方はハローワークで給付の申し込みをし、雇用保険説明会に参加してから失業認定申告書を提出します。給付される失業保険の1日当たりの額は平均給料の「賃金日額」に給付率をかけて計算します。

失業保険は支援が必要な人ほど、より手厚く支給される仕組みです。失業保険制度を賢く活用し、薬剤師としての新しいキャリアプランの実現に役立てましょう。