薬剤師の需要は今後どうなるのか?を解説した記事です。
結論としては、直近10年は需要は増加していく傾向ですが、10年後頃からは供給が需要を上回り、需要は減少していくと見られています。
この記事を読むことで、薬剤師としてのキャリアを継続するために何をすべきかがわかるようになります。
ぜひ最後まで読んでみてください。
薬剤師の需要と供給の現状
薬剤師の需要と供給の現状では、厚生労働省の調査によると、薬剤師数は1970年から一貫して増加傾向にあり、2018年時点で31万1,289人に達し、前回調査から3.3%増加しています。
しかし、将来的には需要を超えた供給過多になる可能性が指摘されており、現在の需要の増加傾向が長期的に続くかどうかは不安要素も含まれています。
今後の動向に注目が集まり、薬剤師の現状と求人状況について状況把握が必要となります。
薬剤師は本当に増えすぎ?職場・地域の違いと将来の転職先候補を解説
薬剤師は本当に増えすぎ?職場・地域の違いと将来の転職先候補を解説薬剤師一人当たりの処方箋枚数は減少傾向
薬剤師一人当たりの処方箋枚数は年々減少しており、2018年度は4,675.9枚となっています。これは処方箋の総数が年々増加している一方で、薬剤師数も増加しており、結果として一人当たりの処方箋枚数が減少していることを意味しています。
この傾向は、薬剤師の需要が徐々に充足されつつあることを示しています。
有効求人倍率は減少
薬剤師の有効求人倍率は、2018年3月には5.35であったものが、2024年3月には2.41まで減少しています。これは、薬剤師の募集が減少し、雇用状況に変化が起きていることを示しています。
すでに薬剤師は飽和しているのか、その実態について以下の記事に詳しくまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
薬剤師は飽和している?実態とこれからの職場別需給状況人口10万人当たり薬剤師数
全国平均での人口10万人当たりの薬剤師数は190.1人です。
しかし、地域によって偏りがあり、薬剤師が不足している地域も存在しています。
全体的には平均以上の薬剤師数を持つ県が11県程度に留まり、残る36県では薬剤師が不足している状態です。
地域偏在の問題は、市町村レベルでも深刻であり、地方部の薬剤師不足が患者支援に影響を与えています。
薬剤師の需要が減少するといわれる3つの理由
薬剤師の需要が減少するといわれる理由は以下の3つです。
1つ目は、現在は薬剤師の需要に対して供給が上回っていることから、将来的に薬剤師は供給過剰になると見られていること。
2つ目は、AI導入による業務の機械化が進むことで、薬剤師の雇用が削減される可能性があること。
3つ目は、医療費の効率化により、医療費が削減されており、薬剤師の需要も減少傾向にあること。
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
薬剤師の供給過多
現在の薬剤師の状態は供給過多に向かっています。
これは、今後の薬剤師の求人が減少し、薬剤師の倍率が低下する傾向にあることを意味します。
しかし、事実として、現在の職場では薬剤師の需要はまだ高いままであり、薬剤師の求人数は年々増加しています。
だからといって、薬剤師の供給過多が解消されるわけではありません。
将来的には、薬剤師の供給と需要のバランスが崩れる可能性があるため、薬剤師として働く上で、いかに自分のスキルを磨き、他の薬剤師と差別化できるかが重要となります。
薬剤師の将来性は未来がない?職場ごと需給予測と業務の変化から徹底解説!
薬剤師の将来性は未来がない?職場ごと需給予測と業務の変化から徹底解説!対物業務のAIによる代替
近年のAI技術の発展により、対物業務の一部がAIによって代替される可能性があります。
現在の薬剤師の仕事において、調剤や在庫管理など地道で機械的な作業が多く存在しますが、こういった作業はAIやITツールによって効率化が期待されています。
ただし、薬剤師のメインの業務である患者さんとの接客や服薬指導などのコミュニケーションは、AIでは代用できません。
そのため、薬剤師が今後はより専門的な知識やスキルを身につけて、人間だけができる業務に重点を置くことが求められるでしょう。
薬剤師の仕事はAIでなくなる|知っておきたいやるべきこと4選と有利な職場
薬剤師の仕事はAIでなくなる|知っておきたいやるべきこと4選と有利な職場医療費削減
日本の医療費は近年増大の一途をたどっており、政府は医療費削減のためにさまざまな対策を講じています。
薬局においても、調剤報酬の改定が頻繁に行われ、薬剤師の収入が減少する可能性があります。
今後は、医療費削減の流れに柔軟に対応できるよう、経営や勤務スタイルの変更が求められるでしょう。
薬剤師自身も、自分のスキルやキャリアを磨くことによって、厳しい経済状況にも立ち向かっていく必要があります。
薬剤師の需要と供給の予測
薬剤師の需要と供給についての予測では、今後数年間は需要と供給が均衡している状況が続くことになりますが、長期的に見ると、供給が需要を上回ることが見込まれます。
厚生労働省の推計によれば、薬剤師の需要は高齢化社会に伴い増加するものの、専門的な業務の拡大や新たな専門分野の創出が求められるでしょう。
薬剤師として、これからの医療や薬局の状況に柔軟に対応し、専門知識を磨くことがますます重要となってくるでしょう。
現在はまだ需要が高い
現在の日本では、高齢化が進み、健康寿命も女性が75.38歳、男性は72.68歳と伸びています。
これに伴い、薬剤師の需要も高い状態が続いています。特に団塊の世代が今後75歳を迎える2025年には「超高齢化社会」となり、薬剤師の需要がさらに高まることが予想されます。
しかし、長期的な視点で見ると、供給が需要を上回る可能性があるため、薬剤師にとって今後のキャリアの見直しやスキルの強化が必要となります。
長期的には供給が需要を上回る見込み
長期的に見ると、薬剤師の供給が需要を上回ると予測されています。
この予測は労働省の調査に基づいており、現在の状況から将来的な動向を考慮した結果です。
しかし、総数だけでなく地域や専門分野によっては薬剤師の不足が懸念される状況もあります。
今後の需給バランスは、さまざまな要因から不安定な水準になる可能性が指摘されています。
調剤報酬改定で薬剤師業務も変化
調剤報酬改定により、薬剤師の業務も変化しています。
改定後の調剤料(内服薬)は、14日投薬分は最大55点に低下しましたが、かかりつけ薬剤師指導料は76点となりました。
地域支援体制加算の要件も、4要件が必須とされています(38点)。
これらの変更により、薬剤師は将来的に、在宅や地域のサポートなど患者中心の業務へとシフトすることが予想されます。
また、AIやIT技術の導入による業務効率化が求められる傾向にもあります。
職場別に見る薬剤師の需要
薬剤師の需要は、職場別にも様々な状況があります。
調剤薬局や病院、ドラッグストア、製薬企業など、それぞれの業種で求められるスキルや貢献が異なります。
以下では、調剤薬局と病院での薬剤師の需要について解説します。
調剤薬局の薬剤師需要
調剤薬局では、薬剤師の人数が増加する傾向にありますが、AIやITツールの導入による効率化も期待されています。
そのため、薬剤師の業務は変化し、服薬指導や健康支援など患者との対人スキルやマネジメントが重要視されるようになっています。
また、それぞれの地域で薬剤師がより必要とされる職場も増えており、選択肢が広がっていると言えます。
ただし、人材の求人倍率は減少傾向にあるため、薬剤師の競争力を維持するために継続的なスキルアップが求められます。
病院薬剤師の需要
病院薬剤師の需要は、高齢化やがん患者の増加などにより健康の維持や治療支援が重要となるため、今後も増加が見込まれます。
その一方で、病院薬剤師は専門的な知識やスキルが不可欠であり、システムや患者とのコミュニケーションにも熟練が求められます。
包括的な医療サポートや在宅ケアの充実、地域支援など、対応範囲が広がる中で病院薬剤師は今後も社会において重要な役割を担い続けることが予想されます。
ドラッグストア薬剤師の需要
近年、ドラッグストア薬剤師の需要は年々増加しています。
この背景には地域密着型の店舗が増え、利便性の高い店舗が多くなっているからです。
また、ドラッグストアではOTC医薬品の販売や調剤業務が拡大し、薬剤師のスキルと知識が十分に活かされる職場となっています。
さらに、地域のかかりつけ薬剤師の役割を果たすことも可能で、将来的にも長く求人が増える傾向が予想されます。
おすすめのキャリアとしてドラッグストア薬剤師を選ぶ人が多く、接客経験や地域への貢献も身につけられます。
製薬会社薬剤師の需要
製薬会社の薬剤師は、研究開発や新薬開発、製造や販売など幅広い業務に携わることができます。
しかし、近年、国内の製薬会社における薬価改定やジェネリック医薬品の普及など、いくつかの要因が影響し、薬剤師の需要が減少傾向にあります。
2018年に29,009名だった薬剤師の数が、2022年には25,786名となっており、4年で3,223名減少しています。
しかし、製薬会社で培った経験やスキルは他の職場でも活かせるため、キャリアアップを目指す人にはおすすめです。
今後の薬剤師求人事情とキャリアの展望
今後の薬剤師求人事情は、様々な選択肢が用意されています。
正社員や派遣、業務委託など、働く形態が豊富で、経験やスキルに応じてあなたに合った職場が選べます。
また、ドラッグストアや病院、製薬会社など業界も多様で、キャリア形成しやすい状況です。
薬剤師不足も背景にあり、福利厚生や給料面でも安定しているため、薬剤師として長期的なキャリアを築くことができます。
効果的な研修やスキルアップの機会も増えており、今後も求人の増加が見込まれます。
厚生労働省の調査に見る薬剤師の将来需要
厚生労働省の調査によると、今後もしばらくは薬剤師の需要は高まりますが、長期的には需要は減少していくと予想されています。
高齢化が進む社会において、薬の専門的な知識と管理能力を持つ薬剤師はますます重要な役割を担うことになります。
また、在宅医療や調剤薬局の拡大に伴い、薬剤師の仕事が多様化し、キャリアの選択肢も広がっていくでしょう。
転職市場における薬剤師の人気職種
転職市場で人気の高い薬剤師の職種は、ドラッグストアや都市部の調剤薬局が挙げられます。
また、製薬会社の品質管理や研究開発の分野では、専門的な知識や技術を活かすことができるため、キャリアチェンジを考える薬剤師にも魅力的です。
製薬会社の品質管理はきつい?薬剤師からの転職で知っておくべき7つのこと
企業薬剤師の品質管理とは?仕事内容や年収・やりがいと転職方法を徹底解説職種別の薬剤師の年収
薬剤師の年収は職種によって異なります。
製薬会社やドラッグストアで働く薬剤師は、一般的に年収が高い傾向にあります。
大手製薬会社では平均年収1000万円を超え、ドラッグストアも管理職では年収800万円台も少なくありません。
しかし、調剤薬局で働く薬剤師も、地方薬局への転職や昇進により、十分な年収が得られます。
目安は600万円ほど。管理薬剤師の場合には700〜800万円の求人も存在します。
これらの年収は地域や勤務形態、経験年数などによって変化するため、転職やキャリアアップを考える際には、求人情報や業界動向を把握することが重要です。
薬剤師の年収の実態については、平均年収を見るのではなく、薬剤師の年収中央値を見ることが効果的です。以下の記事をぜひ参考にしてください。
薬剤師の年収中央値はいくら?30代の相場も職種別・地域別で徹底解説薬剤師の需要減少に備えるには
薬剤師の需要減少に備える方法の一つとして、今後需要が見込まれる在宅医療や介護分野に従事することを検討してみると良いでしょう。
また、各種専門分野の知識やスキルを習得し、将来的な業務変化に対応できるよう準備を整えることが重要です。
対人業務のスキルアップには転職も必要
対人業務のスキルアップには、転職を検討することも一つの手段です。
企業やドラッグストアでの薬剤師の仕事は、調剤だけでなく、接客や指導などの対人業務が求められるため、転職を通じて経験を積むことでスキルアップが期待できます。
また、転職先の企業や勤務地によっては、独自の教育制度や資格取得支援などのプログラムが用意されており、スキルアップに有益とされます。
かかりつけ薬剤師や在宅薬剤師としての経験
かかりつけ薬剤師や在宅薬剤師として活躍するためには、コミュニケーションやチームワークが求められます。
患者さんの服薬指導や提供する医療サービスに対する責任感も大切です。
また、適切な薬剤管理や調剤業務などの専門知識を維持・更新することが重要です。
在宅医療薬剤師の仕事内容と役割は?薬局の現状の大変さも詳しく解説!
在宅医療薬剤師の仕事内容と役割は?薬局の現状の大変さも詳しく解説!認定薬剤師などの資格取得
認定薬剤師や専門薬剤師などの資格取得を検討することで、キャリアアップが期待できます。
がん薬剤認定薬剤師や糖尿病認定薬剤師など、さまざまな専門分野の認定薬剤師が存在し、それぞれの分野で専門知識や技術を習得することが求められます。
資格取得には研修や試験が必要ですが、取得後はさらなるキャリアアップや転職活動に有利となります。
まとめ|薬剤師は将来の需要低下を見据えて準備を
薬剤師として将来の需要低下に備えるためには、専門分野や在宅医療など将来的に需要のある分野へのシフトを考慮し、スキルアップや資格取得に努めることが重要です。
転職も一つの選択肢として考えることで、新たなキャリア展開やスキルアップが期待できます。今後のキャリアプランを見直し、最適な選択を行っていきましょう。