薬剤師は飽和している?実態とこれからの職場別需給状況

薬剤師は本当に飽和している?

実は、薬剤師はまだ飽和していません。

しかし将来的には薬剤師の数は需要に対して過多になると見られています。

薬剤師としてキャリアアップや年収アップを目指したい場合には、薬剤師の需給状況を理解することは重要です。

この記事では、職場別の需給状況やこれからのキャリアの積み方などを解説します。

この記事を読むことで、自身のキャリアの方針が定まっていきますので、ぜひ参考にしてみてください。

薬剤師は本当に飽和している?

薬剤師は飽和しているという意見がありますが、実際の状況は「飽和」はしていません。

ここで言う「飽和」とは、薬剤師の需要に対して供給が満たされていることを指します。

厚生労働省の令和6年2月分一般職業紹介状況(パート含む)によると、医師・薬剤師等の有効求人倍率は2.34倍となっており、これは求人が求職者よりも多い状況です。

もちろん、この数字は全体の傾向を示すもので、地域や職種によっては飽和に近い状態へ進むこともあります。

以下では、薬剤師が飽和していない現状について詳しく解説します。

薬剤師の数は多すぎではない

薬剤師の数は現在でも多すぎではありません。

なぜならば、厚生労働省発表の雄渾求人倍率では2.34倍と未だ売り手市場だからです。

有効求人倍率の2.34倍は市場としては売り手市場であり、薬剤師の数は多くない状況を示しています。

もちろん10年前の「5倍」「6倍」といった倍率に比べれば、薬剤師数は充足されてきていると言えますが、決して多すぎではありません。

結婚・出産・育児による退職が多い

薬剤師は結婚や出産、育児による退職が多い職種です。

それは、薬剤師の約61.4%が女性という背景によるもので、他職種に比べてライフイベントによる退職が多い職種と言われています。

当然、結婚や出産後にも薬剤師としてキャリアを継続する方もいますが、退職するケースは多くあります。

薬剤師不足の地域も多い

全国の各地域を見ると、薬剤師不足の地域も数多くあります。

薬剤師が飽和しているか不足しているかを計る指標に”充足率”という数値があります。

2022年の 第12回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会議事録によれば、薬剤師の充足率は以下の通りです。

  • 病院平均 80.0% (最大 98.3%最小 54.0%)
  • 薬局平均 86.6%最大 112.4%最小 58.3%

全体としては、約83%程度でまだ飽和した状態ではありません。

また、注目すべきは最大値と最小値に大きな差があることです。

これは、病院・薬局によって薬剤師の人数に大きな偏りがあるということを示します。

そのため、地域によっては薬剤師不足が深刻なケースもあります。

潜在薬剤師の数が多い

潜在薬剤師の数が多いとされていますが、これには資格を持っているが薬剤師として働いていない人が含まれます。

適性やスキルなどの問題で薬剤師として働くことができない人もおり、こうした状況が薬剤師免許登録者数に対して職場の薬剤師が不足しているように感じる一因でもあります。

将来は薬剤師は飽和すると見られている

薬剤師は将来飽和すると見られています。

その理由は、人口の減少と薬剤師数の増加、加えてAIと非薬剤師の活用です。

また、薬剤師の飽和が予想される今後の現状では、職場ではあらゆる専門知識やスキルの向上が必要とされています。

これにより、薬剤師が求められる場合も増え、容易に薬局や病院で働ける状況ではなくなっていく可能性があります

薬剤師は2045年に最大12.6万人も過剰になる可能性がある

厚生労働省が公表した薬剤師の需給調査の推計によると、2045年には薬剤師が最大12.6万人も過剰となる可能性があります。

このデータは、薬剤師の供給と需要を最大・最小・最低で予想したものですが、少なくとも今後20年前後では薬剤師数が過剰な状況となることが予想されています。

薬剤師はオワコンなのか?

将来的に飽和すると見られているため、薬剤師はもうオワコンだという声も聞こえます。

しかし、実際には薬剤師は将来的にも需要はあり、正しくキャリアを積むことで年収アップや長期で働くことも可能です。

なぜ、薬剤師がオワコンと言われるのか、今後の薬剤師としてやるべきことは何か、薬剤師はオワコンか|5つの理由と生き残る3つのポイントで詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

薬剤師はオワコンか|5つの理由と生き残る3つのポイント

薬剤師が飽和すると言われる具体的な理由

過剰な薬剤師の供給が飽和状態を引き起こす具体的な理由としては、薬剤師の需給の関係と処方箋枚数、AIや非薬剤師との協業が挙げられます。

薬剤師が飽和した状況下では、薬剤師として求められる専門性が高まっていくことが予想されます。

薬剤師の供給が過剰になる

薬剤師の人数は、2020年時点では約32万5000人でした。

厚生労働省の予測では、薬剤師資格取得者が今後も同数程度とした場合に、2045年には薬剤師の人数は現在の1.4倍にまで増加。

一方で、日本では高齢化と人口減少により、薬剤師業務の需要は現状維持される可能性も示唆されています。

そのため、需要に対して薬剤師の供給が過剰となり、将来的に薬剤師数は飽和すると言われています。

人口減少の影響で処方箋枚数が減少する

少子高齢化が進む日本では、人口減少に伴い、処方箋枚数も減少することが予想されています。

これにより、薬剤師の業務が減少し、薬局や病院での活躍の場が狭まることが考えられます。

しかし、地域や個人の健康管理に関する取り組みを積極的に行うことで、薬剤師の需要を維持することが可能です。

AIや非薬剤師が業務を負担

近年、AIや非薬剤師のスタッフが薬剤師の業務を支援する動きが広がっています。これにより、薬剤師の今後の業務量や必要性が変化することが予想されます。

例えば、調剤作業の一部が機械によって効率化されることで、薬剤師は従来よりも対人業務や指導に重点を置くことができるようになります。また、AIが処方箋の内容をチェックし、薬剤師が検討すべき問題をまとめて提示することで、薬剤師の業務の質が向上し、患者への安全性も担保されるでしょう。

ただし、これにより薬剤師の役割や立場も変化し、新たな資質やスキルが求められる時代が到来することを念頭に置く必要があります。将来的には、薬剤師養成のカリキュラムも現状に合わせて見直されることが予想されます。

AI時代に必要な薬剤師のスキルは、薬剤師の仕事はAIでなくなる|知っておきたいやるべきこと4選と有利な職場で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

薬剤師の仕事はAIでなくなる|知っておきたいやるべきこと4選と有利な職場

職場別に見る薬剤師の飽和予測について

ここでは職場別に見た薬剤師の飽和予測について解説します。それぞれの職種でどのような状況が予想されるのか、細かく見ていきましょう。

調剤薬局薬剤師の飽和予測

調剤薬局においては、近年の医療政策により地域医療への需要が高まり、引き続き薬剤師不足の傾向が続くと予想されます。

しかし、AI技術の導入によって調剤業務の効率化が進むことから、将来的には薬剤師の需要が緩やかに飽和する可能性もあります。

ドラッグストア薬剤師の飽和予測

ドラッグストアにおいても、調剤業務以外の業務が多様化しており、薬剤師のスキルや知識を活かす機会が増えることから、しばらくは需要が続くと考えられます。

ただし、こちらもAI技術の導入が進む中で、将来的には業務内容の変化に柔軟に対応できる薬剤師が求められるでしょう。

病院薬剤師の飽和予測

病院薬剤師に関しては、入院患者の増加や高齢化に伴う薬物療法の複雑化から、引き続き需要が高まることが予想されます。

しかしこの分野でも、AI技術の導入や業務効率化が進むため、適応力が求められる薬剤師が重要になるでしょう。

企業薬剤師の飽和予測

企業薬剤師においては、製薬業界や研究開発分野での専門性が求められるため、引き続き需要が見込まれます

ただし、競争が激化する中で、スキルの習得やキャリアアップが重要になるでしょう。

また、企業薬剤師は他の業界と比較して待遇が非常に良い職種です。

転職希望者も今後は増えていくと見られており、飽和する前にキャリアチェンジした薬剤師が有利とも言われています。

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薬剤師に過不足が生じる原因は?

薬剤師に過不足が生じる原因は、現状では薬剤師の供給と需要のバランスが取れていないことが挙げられます。

今後もこの状況が続くと、過多や飽和といった過剰な状態や、逆に不足する可能性も考えられます。

ここでは、それぞれの原因を解説します。

薬剤師が不足する原因

薬剤師が不足する原因の一つは、マクロな視点で見ると、過去の薬局の急速な拡大と近年のドラッグストアの増加による薬剤師需要の増加です。

またミクロな視点では、都市への薬剤師の偏重と地方の高齢化が影響しています。

さらに、調剤分業推進やライフイベントなど、薬剤師に関する状況が相まって、薬剤師不足が発生する現場もあります。

薬剤師が過剰となる原因

一方で、薬剤師が過剰となる原因としては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による一時的な業務の低下がありましや。

また、薬剤師の業務の一部を今後AIや機械が担う可能性があります。

また、都心部で薬学部が新設されることによる人材供給の増加などから、過剰な状態に至ると考えられています。

これからの薬剤師に求められることとは?

これからの薬剤師に求められることは、専門的なスキルや地域医療に貢献する力だけでなく、患者とのコミュニケーションスキルや信頼関係の構築が重要になります。

また、認定薬剤師や専門医の資格取得を検討し、患者のニーズに応えられるような業務を展開することが求められるでしょう。

コミュニケーションスキルが重要になる

薬剤師には、将来的にはAIや機械によって代替される可能性があるため、コミュニケーションスキルがますます重要になります。

患者の悩みや服薬状況をヒアリングし、安全で適切な調剤を行うことが必須です。

これからの薬剤師には患者との信頼関係の構築を通じて、薬剤師としての役割や価値を高めていくことが求められます。

マネジメントスキルも必要になる

薬剤師としてのキャリアでは、今後も調剤や薬局での業務が基本となりますが、これに加えてマネジメントスキルの習得も重要となります。

なぜなら、登録販売者やファーマシーテクニシャンなどの非薬剤師との協業が今後必要となり、職場のマネジメントが求められるからです。

この状況はドラッグストアなどの業界でも同様の傾向が見られます。

薬剤師が今後も需要のある人材であり続けるためには、身につけるべきスキルが変わってくることを理解し、適切なスキル習得を心掛けましょう。

対物業務より対人業務が求められる

近年、薬剤師の業務に対人スキルがより重要視される傾向にあります。

例えば、在宅医療や地域でのかかりつけ薬局化に伴い、患者とのコミュニケーション能力が求められます。

対物業務から対人業務へのシフトが進み、従来の処方箋照会や服薬指導だけでなく、患者との丁寧なコミュニケーションや疑義照会、副作用のモニタリングも重要となります。

今後は、対人業務が求められる薬剤師が増えることが予想されるため、対応力を向上させるべく継続してスキルアップを目指しましょう。

薬剤師の飽和時代に向けたキャリアの積み方

飽和時代を見据えた薬剤師のキャリアの積み方としては、薬局・病院などでの調剤・対物・対人業務を経験した上で、製薬会社へ転職することが年収と可処分時間増加のポイントとなります。

製薬会社では、品質管理や薬事、MW、などの技術職がおすすめですが、他者と協業しつつ成果を出していくスキルが必要となります。

このようなキャリアの積み方を検討することで、飽和時代にも活躍できる薬剤師になれます。

まとめ|薬剤師が飽和する時代を見越してキャリアを考えよう

薬剤師の飽和時代を見越してキャリアを考えることが重要です。対物業務から対人業務へのシフトや、マネジメントスキルの習得が求められる今後の職業状況を理解し、適切なキャリアの積み方を行いましょう。

更なるスキルアップやキャリアチェンジに向けて、次のアクションを起こすことが大切です。将来の自分のために、今から準備を始めましょう。