近年、薬剤師の役割は変化してきています。
そのため、薬剤師の将来性を危ぶむ声もあることは事実です。
しかし、実はこれからの薬剤師の役割、そして今後の薬剤師キャリアの描き方を知っておくことで、将来に渡り自身の希望を叶えるキャリア形成ができるようになります。
この記事では、これまでの薬剤師とこれからの薬剤師の役割の違いや今後の薬剤師キャリアの描き方について解説します。
ぜひ参考にしてみてください。
薬剤師の役割とは?
薬剤師の役割は、患者の健康をサポートするために、医師からの処方箋に基づいて調剤を行い、薬剤の管理や服薬指導を行うことです。
また、薬剤師の活躍の場も様々で、薬局や病院だけでなく、製薬会社や行政機関でも活動しています。
具体的には、薬事法や医薬品の管理、調剤や調合などの専門的な業務も薬剤師の責任範囲です。
そして、地域や公衆衛生に寄与する活動や、災害時の救援や被災者支援なども含まれます。
このような役割から、薬剤師は国民の命を守る重要な役割を担っており、国や地域の健康を向上させるために、常に専門知識や技術の向上が求められています。
これまでの薬剤師の主な役割
ただ、薬剤師の役割は近年変化してきています。
これまでの薬剤師の役割は、主に調剤業務でした。
調剤の役割は、医師への疑義照会等あるものの、基本的には調剤薬局や病院と言った職場内で完結することが多く、地域や他職種との外部連携はあまり重視されていません。
また、業務内容も対物業務が中心であり、調剤や薬剤管理などの専門知識が重要視されていたため、コミュニケーション力やマネジメントスキルはそれほど求められませんでした。
薬剤師の役割の変化
近年の薬剤師の役割は、地域や他職種との連携がより重要になっています。
また、対物業務から対人業務へと業務の主軸が移行し、介護職、登録販売者・ファーマシーテクニシャンなど非薬剤師との協業が求められるようになってきました。
そのため、これまでのように各職場完結型の業務だけでは、今後のニーズに応えることは難しいです。
将来的には、AI活用やチームワークによる患者の治療や健康維持に貢献することになるため、コミュニケーション力やマネジメントスキルも今後ますます求められることが予想されます。
こういった薬剤師の役割の変化から、薬剤師の将来性を危ぶむ意見も多くありますが、新たな役割に対応していくことでその不安や疑問が解消されていくでしょう。
薬剤師の将来性は未来がない?職場ごと需給予測と業務の変化から徹底解説!対物業務から対人業務への軸足の移行
薬剤師の役割において、対物業務から対人業務への軸足の移行が進んでいます。
これは、地域や他職種との連携が重要になる中で、患者や介護職とのコミュニケーションが求められるようになっているためです。
この変化に対応するため、薬剤師は対人業務にも力を入れる必要があります。
対人業務への適応が求められる現代の薬剤師にとって、柔軟な対応力やコミュニケーションスキルがますます重要となっています。
地域包括ケア・チーム医療の連携
地域包括ケア・チーム医療の連携は、今後ますます重要となるでしょう。
予想される高齢社会において、在宅医療の需要が増加しています。
そのため、医師、看護師、薬剤師、栄養士などが連携し、患者の服薬管理や退院後のケアを行うことが求められます。
また、地域密着型の薬局が増えることで、地域の患者や従事者との連携がさらに密になることが予想されます。
これからの薬剤師には、カンファレンスやスタッフ間での連携が不可欠であり、医療チームの一員として積極的に参画することが重要です。
AI活用と非薬剤師との協業・マネジメント
AI活用の進展により、薬剤師の業務効率化が期待されています。
また、登録販売者やファーマシーテクニシャンといった非薬剤師との協業も重要であり、マネジメントやスキルの向上が求められます。
登録販売者やファーマシーテクニシャンは、薬剤師の補助をすることで、スムーズな業務運営に貢献し、薬剤師の業務負担軽減に繋がります。
また、AIを活用すること、そして非薬剤師と協力し合うことで、より良いサービスの提供が可能となります。
AIによって薬剤師の仕事がなくなるという意見もありますが、実はそんなことはありません。
AIと薬剤師の関係について詳しく解説した記事もありますので、ぜひ参考にしてみてください。
薬剤師の仕事はAIでなくなる|知っておきたいやるべきこと4選と有利な職場調剤薬局や病院での薬剤師の仕事内容と役割
調剤薬局や病院での薬剤師は、医師からの処方せんに基づいて、適切な薬剤を調製し患者に提供します。
また、薬剤師は医療チームの一員として、患者の治療に関するアドバイスや副作用の対処なども担当します。
薬剤師の専門知識を活かし、患者の状況や治療に関する質問に対応することも重要な役割です。
さらに、様々な職種と連携し、患者の治療に最善の選択を提案することが求められます。
薬剤の情報提供
薬剤師は、医師が処方した薬剤の情報提供や、市販薬(Over the Counter/OTC薬)に関するアドバイスも行います。
患者が複数の薬剤を使用する場合は、薬剤師が薬物相互作用や副作用のチェックを行い、患者の安全を確保することも情報提供の役割の一つです。
また、薬剤師は患者の在宅療養や入院中の投薬管理など、患者の治療において重要な役割を担います。
医薬品に関する相談
薬剤師は、患者からの医薬品に関する相談に対応します。
患者が疑問や不安なく、薬を服用・使用できるよう、丁寧に説明し相談に乗ることが重要です。
薬剤師の専門知識を活かして、患者の疑問や不安を解消し、適切な治療をサポートします。
在宅療養における訪問サポート
在宅療養患者に対して、薬剤師は訪問サポートをすることも調剤薬局や病院の薬剤師の役割です。
患者の自宅での治療や薬の管理をサポートし、健康状態の維持・向上に努めます。
今後はさらに、在宅療養や家族の健康管理について、地域の薬剤師に相談されることになるでしょう。
患者がより安心して在宅療養ができるよう、訪問時には適切なアドバイスとコミュニケーションの時間を取ることが重要です。
ドラッグストアでの薬剤師の仕事内容と役割
ドラッグストアでの薬剤師は、主に調剤業務や服薬指導のほか、一般医薬品の販売や品出しなども行っています。
調剤併設型のドラッグストアでは、患者が医師から処方された処方箋に基づいて、正確で安全な調剤を実施し、適切な薬の使用方法や副作用に関する情報提供を行うのが主な役割です。
食品や衛生用品等の販売もあり、市民の生活の一部になっていることが多いドラッグストアでは、調剤薬局よりも患者の日常的な健康相談が増えていくと見られています。
ドラッグストアでの薬剤師の役割は、今後一層広がりを見せ、地域の健康維持増進・医療の拠点として機能していくことが期待されています。
社会での薬剤師の仕事内容と役割
社会での薬剤師の仕事は、病院や薬局だけでなく、製薬企業や医薬品卸売業、行政など幅広い分野で活躍しています。
それぞれの分野で専門知識と技術を活かし、医療、健康の向上に貢献しています。
【製薬企業】新薬開発に貢献
製薬企業での薬剤師は、新薬開発に携わります。
研究者として治療法の開発や医薬品の安全性、品質の確保に努めるほか、MR(Medical representative)として医師や薬局に製品情報を提供し、適正な医薬品の使用を促進する役割も担っています。
新薬開発の役割を担う職種は数多く、開発職のほか、研究職や品質管理、薬事職など、薬剤師が活躍するフィールドが広いのが製薬会社の特徴です。
企業薬剤師の仕事内容については、以下の記事で詳しく解説してますので、ぜひ参考にしてみてください。
企業薬剤師とは?12職種の仕事内容を徹底解説!最高クラスの高年収を狙おう!【医薬品卸売販売業】流通に貢献
医薬品卸売販売業で働く薬剤師は、病院や薬局への医薬品の供給をサポートします。
品質管理や在庫管理を担当し、適切な数量の医薬品が必要な時に必要な場所に届くように調整を行います。
また、MR(Medical representative)として医療機関への情報提供も行っています。
【行政】違法薬物の取り締まりに貢献
行政機関で働く薬剤師は、違法薬物の取り締まりを担当します。
薬物や医薬品の違法取引を監視し、適切な手続きで押収・逮捕に至る権限を持っています。
また、食品衛生や麻薬の取り締まり、健康上のリスクを伴う製品の安全性確認も行っています。
スポーツファーマシストとしてドーピングを防止する活動
スポーツ選手の薬の服用に関して、禁止薬物がないかなどの管理を行い、ドーピング防止に積極的に関与する役割です。
オリンピックや世界大会など、さまざまなスポーツイベントでアンチドーピング機構の一員として活躍しており、選手の使用している薬に対する的確な知識・指導を提供しています。
また、市販薬や処方された医薬品に含まれる禁止成分について、選手や指導者に正確な情報を伝えることで、意図せぬドーピング違反を防止する役割も担っています。
災害時の薬剤師の仕事内容と役割
災害時において、薬剤師はさまざまな活動に従事し、被災者の健康をサポートします。
避難所での薬の配布や在庫管理、衛生管理、患者さんが使っていた薬の特定など、幅広い業務を行っています。
具体的には、医師への処方内容の提案や、適切な薬の使用に関するアドバイスを行います。
避難所において薬剤師が行う活動
避難所における薬剤師の活動は多岐にわたります。医師への処方内容の提案や、市販薬を含む薬の配布を行い、在庫管理も担当します。
また、避難所内の衛生管理にも注意を払い、患者さんが使っていた薬を特定する活動も行なっています。これにより、避難所で過ごす人々の健康状態をサポートしています。
モバイルファーマシーでの薬剤提供
災害時には、通常の薬局が機能しなくなったり、避難所での生活が長期化することで、いつも通りの医療が受けられなくなることがあります。そんなときに役立つのがモバイルファーマシーです。
現在、日本では20台ほどのモバイルファーマシーが運用されており、少しずつ増えています。
これによって、処方せんに基づく調剤や服薬指導が可能となり、薬による治療が中断されず、避難所生活における体調不良のサポートができるようになっています。
薬剤師のこれからのキャリアの描き方
薬剤師の役割が変化していく時代のキャリアの描き方は、以下の2点にフォーカスすると良いでしょう。
- コミュニケーション能力
- マネジメント能力
なぜなら、薬剤師の役割が、個人でも価値提供できる「知識」の業務から、周囲を巻き込み患者へ価値提供を行う「協業」の業務へと転換してきているからです。
具体的には、医師・看護師、介護職やファーマシーテクニシャン、製薬企業担当者など、一人の患者に対し複数の医療関係者と連携を図り、協力して、健康維持・治療にあたることが求められます。
そのため、「協業」としての薬剤師キャリアを積み上げるためには、コミュニケーション能力とマネジメント能力にフォーカスし、これらの能力を磨ける環境を選択していくと良いでしょう。
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まとめ|薬剤師の役割は転換点にある
これまでの薬剤師の役割は、主に調剤業務や服薬指導に限定されていましたが、現在は多様なニーズに対応するために、役割が転換点にあると言えます。
スポーツファーマシストや災害時の活動など、さまざまな分野での活躍が求められており、今後の薬剤師には、より幅広い知識・スキルが求められるでしょう。
これから薬剤師を目指す方は、このような転換期を意識して、様々な分野での活躍を目指してみてください。最後に、薬剤師の役割に興味を持っていただいた方は、ぜひ関連情報を調べてみてください。