製薬会社の品質管理って本当にきついの?と疑問に感じている薬剤師さん向けの記事です。
実は、製薬会社の品質管理はきつい面ときつくない面があります。また、他職種と比べて待遇も良いケースがほとんどです。
この記事では、製薬会社の品質管理の具体的な仕事内容から、転職のデメリットまで、薬剤師が知っておくべき製薬会社の品質管理の7つの真実を詳しく解説します。
この記事を読むことで、製薬会社の品質管理へ転職するか判断できるようになりますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
- 品質管理がきついと言われる理由
- 品質管理の仕事内容
- 品質管理はきつくない理由
- 品質管理を辞めた人の口コミ
- 薬剤師が品質管理に転職するメリットデメリット
- 品質管理と品質保証の違い
- 品質管理に向いている人向いていない人
1.製薬会社の品質管理がきついと言われる3つの理由
製薬会社の品質管理がきついと言われる理由は以下の3つです。
- 厳しい品質基準の遵守
- ミスができないプレッシャー
- 査察が入る際の慌ただしさ
それぞれ共通してきついのは、精神的なプレッシャーと言われます。
具体的にどのようなプレッシャーがかかるのか、確認していきましょう。
厳しい品質基準の遵守がきつい
製薬会社は、医薬品を開発・製造・出荷する際に、世界初の国際品質基準とされるGMP(良い製造規範)を遵守する必要があります。
医薬品の品質基準は非常に厳格で、品質管理職は常に自社製品のクオリティの責任を負うため、大きなプレッシャーがかかる職種です。
これは、患者に安全な品質の薬を提供するためです。
このGMP遵守を管理する業務は製薬会社の品質管理部が担っています。
ミスができないプレッシャーがきつい
製薬会社の品質管理では、厳格な基準の中で実験が行われ、ミスがあると再実験のために規定の手続きと承認が必要になります。
品質管理職としてはできる限り再試験はしたくないため、ミスができないというプレッシャーにさらされることになります。
査察が入る際の慌ただしさがきつい
製薬会社の品質管理部門は、定期的に査察を受けることがあります。
査察は、品質基準が遵守されているかを確認するためのもので、対策が不十分であれば、企業の信用に関わります。
そのため、査察が入る際は、準備のために慌ただしく動かなければなりません。
査察の指摘があると品質管理部門の管理責任を問われる可能性もあり、査察は品質管理職には大きなプレッシャーです。
2.知っておきたい製薬会社の品質管理の仕事内容
製薬会社の品質管理の仕事内容は以下の通りです。
- 原材料の検証
- 工程管理試験
- 製品の出荷前検査
- 試験機器のメンテナンス
- 試験方法の妥当性検証
- 最新のガイドラインの動向確認
これらは、医薬品の安全性や品質を確保するために欠かせません。
ここでは、あまり知られていない製薬会社の品質管理の具体的業務について解説していきます。
原材料の検証・試験
製薬企業の品質管理部門では、原料のサンプリングと受け入れ試験が大切な仕事です。
製薬業界では厳格な規制があり、製品の品質を保証するために、入荷される原料の品質に問題が無いか確認を行います。
受け入れ試験では、グローバルスタンダードに則った試験項目が設定されており、pHや濃度など基本的な項目から専門的な分析試験まで幅広く実施します。
検体が100以上あることもあり、意外と大変な仕事だったりします。
工程管理試験(工程内試験)
工程管理試験は製品の製造途中で行う検査です。製造工程ごとに試験が行われ、製品の品質が適切な範囲内であることを確認します。
この工程管理試験には、製品の品質を左右する原料の配合比率や製造条件などをチェックし、必要に応じて調整を行います。
完成製品の出荷試験
製品が完成すると、製品のサンプリングと製品が出荷される前の厳密な試験を行い、品質が適切であることを確認する業務があります。
出荷試験では、製品の性状、成分、有効期限など、製品の品質に関わる様々な要素をチェックし、安全性や有効性を確認します。
試験機器のメンテナンス
実は試験機器のメンテナンスも、品質管理部門の重要な業務です。
メンテナンス業務では、機器の動作チェックや交換部品の管理、定期的な清掃や診断などが実施されます。また、外部業者への依頼や、機器の寿命や修理状況を考慮したメンテナンス計画の立案も行われます。
分析法バリデーション(試験方法の妥当性の検証)
分析法デリバレーションは、製品の試験方法が妥当かどうかを検証する業務です。ここでは、製品の試験法が正確かつ再現性があることを確認し、試験結果の信頼性を保証するために実施されます。
バリデーション業務では、製薬業界のガイドラインに従い、試験法に関する独自の研究や開発が行われます。また、分析条件や特異性、精度などの様々な評価項目を確認し、試験法の妥当性を検証します。
企業によっては研究開発部門で行っているケースもあります。
日本薬局方などの規制の動向確認
原料や製品の品質が最新の基準に適合しているか確認していくことも製薬会社の品質管理には求められます。
なぜなら、製薬の規制は他業界と比較して厳しく、製薬会社は基準に沿った製品を提供する必要があるからです。
薬の原料や製品の品質について、試験方法や基準などが記載されたものが「日本薬局方」です。
この日本薬局方は5年に1回改正され、それ以外にも随時更新されていくため、最新の情報を得ることも品質管理の業務になります。
このほかにも、企業薬剤師の品質管理の仕事はあるので、もっと細かく知りたい方は企業薬剤師の品質管理とは?仕事内容や年収・やりがいと転職方法を徹底解説の記事も参考にしてみてください。
3.製薬会社の品質管理はきつくはない
製薬会社の品質管理は、一般に厳しいとされがちですが、実際にはそこまできつくはありません。
薬剤師が品質管理となる場合は、想像している以上に業務と待遇は良いです。
実務はマネジメント
品質管理の実務は、マネジメントが主な仕事であり、ルーチーン化された作業自体は薬剤師以外の方が行うことが多いです。
例えば、派遣や高卒・専門学校卒の社員が試験作業を担当し、大卒社員がマネジメントを行うことが一般的です。
このように、頭脳労働やマネジメントを求められる仕事であるため、薬剤師で製薬会社の品質管理に転職する場合には、肉体労働が多いわけではありません。
他の職種と比較して待遇は良い
製薬会社の品質管理職は他の職種と比べて待遇は良いです。
製薬業界の専門知識や技能が求められる職種であるため、その分高い報酬が得られることが一因です。
例えば、製薬会社の年収相場は品質管理で600〜800万円ほど。
また、定時上がりできる日も多く、福利厚生も充実している企業が豊富です。
製薬会社の品質管理がきついと言われますが、業務内容や待遇を薬剤師業界と比較すると、決してきつくはない職種と言えます。
4.製薬会社の品質管理を辞めた人の口コミ
待遇もよく、きつくはない製薬会社の品質管理でも、中には辞めていく人もいます。
製薬会社の品質管理を辞めた人の口コミでは、緊張感の高さや効率の問題、やりがいの喪失が主な理由として挙げられています。
薬剤師から品質管理へ転職する前に、辞めた人の口コミを確認してみましょう。
再試験にならないための緊張感が疲れる
品質管理の仕事では、ミスがあってはならないという緊張感が常について回ります。製品の試験に失敗すると再試験が必要になり、会社にコストがかかります。そのため、毎日手順どおりミスらないようプレッシャーがあり、上司や次の部門への報告もあります。企業の風土によっては、ミスが発生した場合は原因究明と称して吊し上げにあう場合もあります。緊張感を持続させるのは結構大変で疲れます。
効率的に規格や試験法を変えられない
効率的に規格や試験法を変えられないのは結構なストレスですね。昔からの方法や厚生労働省の承認が必要な規格だと、改善できないんですよね。決まった古めかしい方法しか認められない…。他業界の友人とかは試験法を変えて主体的に改善・効率化しているのを見ると、製薬業界特有の規格や試験に対するストレスは感じますね。
ルーティーンになるとやりがいを感じなくなる
品質管理業務は、正直ある程度の経験を積むと、ルーティーンワークになりがちです。業務の性質上、新たな成果を出すことが難しく、目標達成や社内評価がイマイチだったりします。やりがいという面では低めかもしれません。やりがいを得るには自分で主体的に新しい知識やスキルを取得していく方が良さそうかなと思います。
5.製薬会社の品質管理に転職するメリット
製薬会社の品質管理に転職するメリットには、高水準の給与やワークライフバランスが整いやすい点があげられます。
また、安定した業界であることや、製薬会社は福利厚生も手厚いため、長期的にキャリアを継続することも可能です。
日々の生活を改善しつつ、より良い待遇の仕事に就きたいと考えている薬剤師には向いている職種でしょう。
仕事と待遇に納得できる
品質管理は製薬業界において重要なポジションであり、製薬会社には必要不可欠な職種です。
また、製薬会社は平均年収も高く、福利厚生も充実しているのが特徴です。
そのため、製薬会社の品質管理も他職と比較して給与や待遇も良く、仕事の内容と待遇に納得がいく場合が多いでしょう。
薬剤師から製薬業界へ転職するなら、品質管理の仕事は非常に魅力的な選択肢です。
安定した業界で長期キャリアを築ける
製薬業界は景気に左右されにくく、安定した業界です。
人々が健康に生活していく上では薬はなくてはならないため、製薬業界は今後も長期的に伸長していくと見られています。
さらに製薬業界は利益も大きく、企業が抱える社員への還元も積極的に行われます。
長期的に安定してキャリアを継続したい薬剤師にとっては魅力的な業界です。
チーム仕事の一体感
品質管理では、一人でコツコツというよりは、様々な部署や職種と連携して業務を遂行することが多いです。
そのため、チームワークが非常に重要になります。
そのため、薬剤師からの転職でもチームで協力し合いながら安心して仕事を進めることができるでしょう。
また、品質管理においては、チーム全体で問題を解決し、製品の品質向上や効率化を実現することが求められるため、チームプレーが得意な方には向いている職種と言えます。
6.製薬会社の品質管理に転職するデメリット
製薬会社で品質管理の仕事に就くことには、やりがいや成長の機会もありますが、デメリットも存在します。
その主なデメリットは繁忙期の仕事量やルーチンワークです。
繁忙期は休みづらい
品質管理では、繁忙期の原料受け入れ試験や出荷試験において、工場の生産日程に応じて入荷が増えることがあります。
そのため、繁忙期には品管部門のスタッフは休みを取りづらい状況になります。
また、生産日程の左右によっては、多忙な時期が長引くことや、コントロールできない要素が存在するため、ストレスを感じる人もいるでしょう。
製薬会社の品質管理に転職する際には、労働環境や休みの取りやすさなどを検討することが重要です。
ルーチンワークになりやすい
製薬業界における品質管理は、ルーティンワークが中心となる仕事です。
日々の業務では、地道に手順に沿って一つ一つの作業を行い、薬品や原料の品質を確保する役割が重要です。
製品の安全性や品質を支える重要な業務ではありますが、業務の自由度が低く、主体性をあまり発揮できないことから、やりがいを感じづらい人もいるでしょう。
ちょっと希望と合わないなぁという人は、薬剤師でものんびり働ける職場を紹介している、のんびり働きたい薬剤師におすすめの仕事と診療科11選|求人の選び方を解説も参考にしてみてください。
7.製薬会社品質管理と品質保証の違いに注意
品質管理(QC) | 品質保証(QA) | |
---|---|---|
役割 | 製品の品質規格を管理(市場に製品を出すときの品質規格に責任をもつ) | 製品の品質全体を保証(市場の製品に責任をもつ) |
仕事内容 | 製品品質試験の実施、製品品質試験の合否判定 | 逸脱(製造時の不具合)対応、出荷後の回収(リコール)対応、供給業者の選定など |
プロセス | 生産 | 開発・生産・販売後 |
混同されがちな品質管理と品質保証はまったく別の職種です。
製薬会社の求人を探す前に、品質管理と品質保証の違いはしっかり理解しておきましょう。
品質管理は、製品の品質を確認し、生産時の品質規格を管理する業務です。
一方、品質保証は、製品の開発から生産及び販売後のクレーム対応も含めて、製品の品質全体を保証する役割があります。
品質管理は製品の品質向上を目指す活動であり、品質保証はその活動が適切に実施されているかを保証する役割を担っています。
8.製薬会社の品質管理に向いている人
製薬会社の品質管理に向いている人はどんな人でしょうか。
ここでは、品質管理の仕事内容から性格的に向いている人の特徴を紹介します。
手順に沿った業務に抵抗が少ない人
手順書に従って業務を行っていくことに抵抗が少ない人は品質管理に向いていると言えます。
なぜなら、品質管理の仕事は、正確にマニュアルに沿って行っていく必要があるからです。
個人の裁量といった、業務に関する自由度にこだわらない場合には、品質管理の仕事を抵抗なくできるでしょう。
属人的な仕事に飽き飽きしている人
属人的な仕事から離れたいと感じている人も、品質管理には向いています。
その理由は、品質管理の業務は徹底的に標準化されているからです。
個人の判断を求められることや、その責任を問われることも少ないため、属人的な仕事に飽き飽きしている人は品質管理に向いているでしょう。
9.品質管理に向いていない人
品質管理に向いていない性格の人も実はいます。
以下に2つの特徴を挙げますので、参考にしてみてください。
1人で黙々と仕事をしたい人
1人で黙々と仕事をしたいと考えている人は、品質管理に向いていないかもしれません。
なぜなら、品質管理は実はチームで行う業務だからです。
人と関わらず個人で進められる仕事に魅力を感じている場合、品質管理になるとギャップを感じる可能性があります。
仕事に裁量が欲しい人
自分で裁量をもって試験方法を変えたり、分析したいという人は向いていない可能性があります。
その理由は、品質管理の仕事は規制でガチガチで自由度が低いためです。
品質管理は自由度が低いからこそ楽で良いという意見もありますが、裁量をもって主体的に業務を進めていきたい場合には、研究開発職の方が向いているかもしれません。
まとめ|製薬会社の品質管理はきつい仕事ではない
製薬会社の品質管理は、地道で単調に見えるルーティンワークが中心ですが、患者さんの安全と健康に繋がる重要な仕事です。また、品質向上を目指して努力することで、やりがいを感じられる職種です。
製薬会社の品質管理はきつくなく、待遇の良い求人は比較的多くあります。品質管理に興味があれば、ぜひ一度、製薬会社に強い転職エージェントの求人を見てみてください。