薬剤師は給料安い!年収低い4つの理由とおすすめキャリアパス

「薬剤師の給料は安い!」と不満を持っている薬剤師さん向けの記事です。

実は、薬剤師の年収が低く抑えられ、給料が安いのは、薬剤師という職種の収益構造による理由が存在します。

この理由を理解することで、薬剤師として年収を上げていくキャリアパスがわかります

この記事では、薬剤師の給料が安い4つの理由とどのようにすれば年収アップできるのか、おすすめのキャリアパスをご紹介します。ぜひ読んでみてください。

薬剤師は給料安い!実際の給料を比較

薬剤師の給料は一般的に思われているほど高くありません。

これは薬剤師の年収は、勤務形態や働く場所によって大きく差があるためです。

実際に薬剤師の給料は安いのか、まずは薬剤師の給料内訳と各種統計調査と比較し確認していきましょう。

あお
あお

クラウドワークスにて薬剤師の給与明細の内容を提供してもらいました。

20代薬剤師の給料内訳の例

地方勤務の正社員20代薬剤師の給与内訳例は合計で324,600円です

現役薬剤師の給料内訳を見てみると、基本給、各種手当が主な収入です。

基本給は平均的には20万円前後と言われ、年齢や勤続年数によって変わります。

また、手当は職務手当や住宅手当などがあり、管理薬剤師である場合は役職手当がつきます。

役職手当の金額は50,000円前後が相場ですが、企業により大きく異なる場合もあります。

支給項目金額
基本給190,000
職務給47,600
薬剤師手当30,000
職能手当10,000
役職手当
住宅手当40,000
残業手当7,000
合計324,600

派遣薬剤師の給料内訳の例

派遣先は大手ドラッグストアの調剤部門で、時給2,600円で月の就業時間が162時間とのことで以下の金額となっています。

派遣薬剤師の給料は、基本給に加えて交通費や残業代、休日手当などが支給されます。

しかし、賞与は支給されないことが一般的です。

派遣薬剤師でフルタイムで働いた場合、平均年収は約600万円程度と言われており、正社員と比較すると若干高い傾向にあります。

また、派遣薬剤師の場合勤務時間や働き方を選べるメリットがあるため、ライフスタイルに合わせた働き方ができます。

支給項目金額
基本給436,800
薬剤師手当
職能手当
調整手当(見込み残業代)
残業手当1,100
交通費6,420
合計444,320

厚生省の統計調査で一般職と薬剤師の時給を比較

薬剤師と一般職の時給を比較すると、薬剤師の方が高いことが分かります。

例えば、厚生省の令和4年度賃金構造基本統計調査によると、いわゆる事務職である総合事務員の時給は平均1,359円ですが、薬剤師の時給は平均2,902円です。

薬剤師は時給で一般職と比較すると高い給料であると言えます。

国税庁の統計調査で日本人全体と薬剤師の平均年収を比較

厚生省が算出している薬剤師の平均年収は583万円ですが、これは国税庁が発表している日本人の平均年収458万円と比べて高い金額です。

ただし、薬剤師の中でも年収にはかなりの幅があり、病院勤務やドラッグストア勤務など業務形態によって変わります。

また、経験やスキルによっても年収は変動します。

一方で、産業全体の平均年収は458万円で、これには様々な職種が含まれています。

例えばIT業界や金融業界の平均年収は高く、一般的に600万円以上とされていますが、小売業などの平均年収は300万円台と低くなっています。

従って、薬剤師の年収は産業全体の中では比較的高い部類に入るといえます。

厚生省の統計調査で他医療職と薬剤師の平均年収を比較

他の医療職の平均年収を確認すると、薬剤師の年収は同じ6年制大学の医師・歯科医師・獣医師と比較して低い金額です。

職種平均年収
医師1429万円
歯科医師810万円
獣医師687万円
薬剤師583万円

薬剤師の年収が低いのは嘘!という評判もありますが、実はその主張は的外れでもあります。

以下の記事で、薬剤師という国家資格取得までのコスト仕事の価値の観点から薬剤師の年収を解説していますので、参考にしてみてください。

薬剤師の給料が安い4つの理由

薬剤師の給料が安い理由は、実は薬剤業界の収益構造に関する4つの理由があります。

それが以下です。

  1. 薬剤師業務はコスト部門と捉えられている
  2. 薬剤師は昇給しづらい
  3. 調剤報酬の見直しで収益は減方向
  4. 他の医療職方法が収益性が高い

これらの理由により、薬剤師の給料は上がりにくい状況が続いています。

この収益構造を理解することで、薬剤師として給料を上げるキャリア形成ができるようになりますので、参考にしてください。

薬剤師業務はコスト部門と捉えられている

薬剤師業務はビジネスの観点で、プロフィット部門ではなくコスト部門と捉えられています

企業は利益を上げるために、コスト部門の経費削減に努めるため、現場の薬剤師たちは給料が上がりにくい状況にあります。

また、ドラッグストアなどのチェーン展開により、薬剤師の労働環境が過密になることも、給料が上がりにくい理由となっています。

※コスト部門とプロフィット部門の解説

コスト部門とは、企業内で主に経費をかける部門のことで、経理部や人事部などが該当します。これに対して、プロフィット部門は企業が利益を上げるために活動する部門で、営業部や製造部が含まれます。

この2つの部門は、企業の収益性に大きく影響するため、効率的な運営が求められます。

具体的には、コスト部門は経費削減やコスト管理に力を入れ、プロフィット部門は売上や利益増大に貢献する活動を行います

薬剤師は昇給しづらい

薬剤師は昇給しづらい職種であると言われています。

主な理由としては、薬剤師の人数が多く企業内でのポジションが少ないため、昇給が遅れてしまう傾向があることが挙げられます。

また、薬剤師は専門性が高く、他の職種とは異なる知識や技能が求められるため、スキルアップの結果が給与に直接反映されにくいという面もあります。

さらに、独立系の調剤薬局などで働く場合、業績に直結するような仕事内容ではないため、昇給が厳しい状況が続いています。

調剤報酬の見直しで調剤薬局の収益は減方向

調剤報酬の見直しにより、調剤薬局の収益は減少傾向にあると言われています。

調剤報酬は、薬剤師の主な収入源であり、国による医療費抑制政策に伴い、報酬が減額されることが多くなっています。

このため、経営者の負担が増大する状況になっており、薬剤師の給料を上げられないのが実情です。

他の医療職の方が収益性が高い

薬剤師は他の医療職に比べて収益性が低いという指摘があります。

例えば、医師や歯科医師は、診察や治療による報酬が直接的に収益に繋がるため、薬剤師よりも収入が高い傾向があります。

これに対して、薬剤師は調剤報酬に依存するため、収益性が低くなりがちです。

また、患者一人に対する単価も他の医療職の方が高く、薬剤師は処方せんを多くさばいても収益アップにつながりにくい側面もあります。

上記の理由から、薬剤師は給料が安く抑えられている実情があります。

薬剤師の年収が低すぎると感じる人は、下記の記事で年収アップのための具体的方法を解説しているので、参考にしてみてください。

薬剤師の給料に影響する要素【業種・都道府県・企業規模・病院運営者】

薬剤師の給料は、業種、都道府県、企業規模、病院運営者といった要素によって大きく変わります。

理由は、それぞれの要素が求められるスキルや経験、責任などに違いがあるからです。

具体的には、業種では調剤薬局や病院、ドラッグストアなどがあり、都道府県では地域の医療ニーズや人口密度、企業規模では経営上のコストや給与体系、病院運営者では公立・私立の違いや財政状況などが影響します。

これらの要素を理解することで、薬剤師として自分に合った働く場所を見つけることができます。

【業種別】薬剤師の給与

業種別によって薬剤師の給与には違いがあります。

一般的に、調剤薬局やドラッグストアの給与は病院薬剤師よりも高い傾向があります

その理由は、病院では薬剤師よりも医師・看護師の待遇を優先させる傾向があるためです。

また、製薬会社や大学をはじめとする研究機関でも高い給与が支払われることがあります。

ただし、業種ごとに求められる業務内容や働き方が異なるため、給与だけでなくそれらも考慮することが重要です。

【都道府県別】薬剤師の給与

都道府県別にも薬剤師の給与には違いがあります。

一般的に、都市近郊の地方部では給与が高い傾向があります。

これは、医療ニーズが高く、競争が激しいことから良い人材を確保するために高い給与が支払われるためです。

しかし、地域によっては低い給与でも生活費の低さや働きやすさが魅力となることもあります。

そのため、給与だけでなく地域の特徴やライフスタイルも考慮することが大切です。

都道府県別の薬剤師の月収については、2024年版薬剤師の平均月収!地域・年代・業種別で徹底比較でランキング解説しているので、条件の良い都道府県で働けるよう参考にしてみてください。

【企業規模別】薬剤師の給与

企業規模によっても薬剤師の給与に違いがあります。

大企業やチェーン展開する調剤薬局では、高い給与が支払われることが一般的ですが、これは経営規模が大きく、給与体系も整っているためです。

一方で、地域密着型の中小企業や個人経営の調剤薬局では、給与はやや低めとなることが多いですが、地域に根ざしたサービスや働く環境の良さが魅力となることもあります。

自分に合った働く場を見つけるために、給与だけでなく企業規模や働く環境も考慮することが重要です。

【運営者別】病院薬剤師の給与

病院薬剤師の給与は、運営者によって大きく変わることがあります。

まず、国立・公立病院の場合、給与は公務員に準じるため安定していますが、他の病院に比べてやや低めとなることが多いです。

一方、大学病院では、研究や教育に従事する場合が多く、経験や役職によって給与が上がる可能性があります

また、民間の病院では、経営状況や地域によって給与が大きく変動することがあります。

具体的には、国立・公立病院では平均年収が530万円程度、大学病院では560万円程度、民間病院では平均500万円程度となっています。

ただし、これらはあくまで平均値であり、個人のスキルや経験によって変動することがあるため、注意が必要です。

また、病院薬剤師の給与は、勤務時間や休日数などの労働条件とも関連しているため、総合的な評価が重要です。

薬剤師が安い給料を改善できる3つのシンプルな方法

薬剤師の給料が安いと感じる場合には、以下の3つの方法で改善することができます。

  1. 今の職種で昇給を目指す
  2. 年収の高い業種・企業への転職を目指す
  3. スキルアップや資格取得によるキャリアアップを図る

これらの方法を実践することで、薬剤師としての給料を上げることが期待できます。

方法①今の職種で昇給を目指す

今の職種で昇給を目指す場合、まずは自分の成果を上司にアピールすることが重要です。

具体的には、業務の改善提案やチームでのコミュニケーション力向上など、自分の働きが会社にとってプラスになることを示すことが求められます。

また、定期的に上司との面談を設け、自分の仕事ぶりや昇給に向けた意欲を伝えることも効果的です。

方法②年収の高い業種・企業への転職を目指す

年収の高い業種や企業への転職を目指す場合には、まずは希望する業種や企業で求められるスキルや経験を獲得することが重要です。

例えば、製薬企業の臨床開発部門や治験コーディネーターなどは、薬剤師の知識を活かしつつ、高い年収を見込める職種です。

また、転職活動では、自分の強みや希望条件を明確にしておくことが求められます。

方法③薬剤師資格を活かして高単価な副業をする

薬剤師資格を活かして高単価な副業を行うことで、年収アップが期待できます。

具体的な副業の方法としては、オンライン薬剤師相談やチーム医療の電話相談、医療従事者向けセミナー講師などが挙げられます。

オンライン薬剤師相談では、患者様からの薬に関する質問に答えたり、処方箋の確認を行ったりすることができます。これにより、自宅で気軽に副業を始めることが可能です。

また、チーム医療の電話相談では、他の医療従事者と連携し、患者様に直接的なアドバイスやサポートを提供します。医療チームの一員として貢献できるため、やりがいと収入が両立できる副業です。

さらに、医療従事者向けセミナー講師では、自分の専門知識を広めることができ、知名度アップや人脈作りにも繋がります。

これらの副業は、高単価であることが期待できるため、薬剤師としての年収アップに繋がります。

薬剤師の経験が給料アップにつながるキャリアパス

薬剤師の経験を活かし、給料アップにつながるキャリアパスとして、製薬会社MRやCRAが挙げられます。これらの職種では、専門知識や経験を活かして働くことができ、さらなるスキルアップや年収アップが見込めます

製薬会社MRは、製薬会社の製品を医療機関に訴求し、販売促進を行う役割です。薬剤師の知識を活かして、医師に対する情報提供や説明が円滑に進められます。成果が評価されることにより、昇進や年収アップが期待できます。

また、CRAは、治験の進行状況やデータの管理を行うポジションで、薬剤師の知識が役立ちます。こちらもスキルアップや昇進により、年収が上がる可能性があります。

薬剤師としての経験を活かすことで、給料アップが見込めるキャリアパスとして、製薬会社MRやCRAがおすすめです

高年収を実現できる製薬会社MR

製薬会社MRは、高年収を実現できる職種です。具体的な理由として、基本給はもちろん、インセンティブ制度や賞与が充実していることが挙げられます。

年収1,000万円を超えることも珍しくなく、製薬業界での高年収職種としては有名です。

インセンティブ制度では、自分の努力や成果に応じて報酬が得られるため、高いモチベーションを持って働くことができます。また、賞与が充実していることで、年収が大幅に上がることも期待できます

さらに、MRは薬剤師としての専門知識や経験を活かして成果を出しやすい職種ですが、これは医師に対するプレゼンテーションや情報提供がスムーズに行えるためです。

これにより、高年収を実現できる製薬会社MRとしてのキャリアが築けることが期待できます。

キャリアと年収を両立できるCRA

キャリアと年収を両立できる職種として、CRAがおすすめです。CRAは、治験の管理や、治験データの収集・確認を行う役割があり、薬剤師の専門知識や経験を活かすことができます。

また、CRAは高い専門性が求められるため、給与水準も高く、年収アップが期待できます。さらに、昇進を目指すことで、より高いポジションへ進むことができ、キャリアアップも可能です。

働きながらスキルアップも目指せる点も、CRAの魅力です。

研修や資格取得支援制度が整っている企業も多く、自己成長とキャリアアップに繋がります。薬剤師の経験を生かし、キャリアと年収を両立できるCRAを目指すことで、より充実したキャリアを築けます。

ワークライフバランスが整うCRC

ワークライフバランスが整う職種として、CRC(臨床試験コーディネーター)があります。CRCは、臨床試験の進行管理や被験者のケアを行う専門職です。その理由は、CRCの労働時間が比較的規則的であり、残業も少ないためです。

また、CRCは日本臨床試験協会による研修プログラムを受講し、資格を取得すれば未経験者も就職可能です。薬剤師の知識が活かせることから、転職しやすい職種とされています。

アカデミックなキャリアを築ける薬事・DI

アカデミックなキャリアを築きたい薬剤師におすすめなのが、薬事やDI(ドラッグインフォメーション)の分野です。薬事は医薬品の承認申請や製造販売後の対応業務を担当し、DIは医薬品情報提供や医療関係者との連携を行います。

これらの業務は、研究職講師職を志向する薬剤師に適しており、専門性が高まることでスキルアップが可能です。

また、薬剤師の専門知識を活かして論文も執筆できるため、アカデミックなキャリアを追求する上で魅力的な職種です。

より多くの人への貢献をやりがいにできる臨床開発

より多くの人への貢献を求める薬剤師におすすめなのが、臨床開発の分野です。臨床開発では新薬の開発や治験に携わることができ、一人ひとりの患者さんだけでなく、多くの人の命や健康に関わる仕事です。

この分野での経験や知識を積むことで、より有益な医薬品の開発に貢献できます。また、臨床開発では国際的なプロジェクトに関わることもあり、グローバルな視野を持つことができます。

まとめ|薬剤師の給料は安い

薬剤師の給料は確かに安いと言われていますが、ワークライフバランスが整うCRC、アカデミックなキャリアを築ける薬事・DI、より多くの人への貢献を求める臨床開発など、さまざまな職種が存在します。

今回紹介した職種を参考に、自分に合ったキャリアを見つけてみてはいかがでしょうか。次のステップとして、転職サイトや転職エージェントに登録し、各職場の年収や労働時間を比較して、最適な転職先を見つけることが大切です。